NTTは、同社のマイクロシステムインテグレーション研究所が、人の体の表面を伝送路とする新しいヒューマンエリア・ネットワーク技術「レッドタクトン(RedTacton)」の基盤技術を開発し、NTTエレクトロニクスがこの技術を用いた製品「Firmo(フィルモ)」のサンプル発売を開始したと発表した。

NTTでは、人が携帯する端末と人の周辺(ラスト1m)にある情報機器を接続する方式として無線LAN、ブルートゥース、赤外線通信などが提案されているが、通信接続の煩わしさや混信があるなどの課題があるため、人の体を伝送路とする通信方式に着目し、研究開発を行ってきたという。

レッドタクトンは、体の表面電界による通信技術で、送信機はデータ信号を変換した微弱な交流電界を体の表面に誘起。受信機はこの電界を検出し、データ信号に変換する。すべて電子部品で構成されており、オフィスセキュリティを主な利用領域とした性能(230kbps高速転送、低消費電力)を備えている。

NTTでは代表的な利用例として、身に付けた送信機から体を介してIDを送り、入退認証を手ぶらで行うことや、取手に触れるだけで開錠する「セキュアキャビネット」、プリンタに印刷コマンドを送ってもプリンタにタッチするまではドキュメントを印刷しない「セキュアプリンタ」などを挙げている。

レッドタクトンの通信イメージ

レッドタクトンの4つの特徴

自然な動作で通信を開始 触れる、握る、座る、歩く、踏むといった人が行う自然な動作で伝送路を形成して通信を開始し、それを機器動作や情報入手などのトリガーとすることができる
ポケットに入れたままで高速通信 「高効率交流電界誘起技術」と「高感度電界センシング技術」の採用により、230kbpsの速度で体の任意の2点間での通信が可能。体の表面だけでなく、衣服、手袋、靴を身に着けたまま壁や床に組み込まれた端末との通信も可能
伝送路の素材を選ばない 導電体・誘電体であれば伝送路の素材を選ばない。人の体のほか、動物、水、金属などを、レッドタクトンの伝送路として使うことが可能
触れている相手だけと通信 無線のように信号を空間に向けて広く放射しないため、触れた時にその相手とだけ通信するなど、他との干渉が無く空間分解能の高い通信を実現

Firmoは、カード型送信機や組込み型ボード受信機などをセットにした評価キットで、6月末より出荷する予定。価格は、1セット80万円。