総務省はこのほど、放送事業者がコンテンツ製作者に業務を発注する際の契約関係の適正化を目指す「放送コンテンツの製作取引の適正化の促進に関する検討会」を発足させた。インターネットによるコンテンツ配信の拡大が期待される中、支払い遅延やイベントチケット購入の強制など、"悪しき慣例"の存在が指摘される両者の関係の実態を検証し、より公正な取引を実現するためのガイドライン策定を目指す。

放送コンテンツ製作者を取り巻く環境については、2004年に施行された改正下請代金支払遅延等防止法(改正下請法)により、放送コンテンツの取引が同法の規制対象として追加され、法令に基づく環境改善が図られてきた。

だが近年、放送コンテンツのデジタル化による二次利用促進の動きが急速に進み、インターネット上での配信も拡大する傾向にある中、コンテンツ製作者の重要性が飛躍的に高まっており、同製作者のインセンティブを向上させる上からも、さらなる環境改善が急務となっている。

こうした中、放送コンテンツの取引市場創設などを議論している総務省は、放送コンテンツ製作者を取り巻く環境の改善を目的に、放送局の幹部や放送番組製作者団体の幹部、学識経験者ら16人による検討会を、1月31日に発足させた。

同日開かれた検討会の第1回会合では、検討会開催の背景や目的についての説明があった後、以下について今後検討をすることが決まった。

  1. 関係者による法令遵守の状況など、放送コンテンツの製作取引に係る現状の検証
  2. 下請法やその他の法令遵守に係るガイドラインの策定など、より適正な製作取引の実現に向けた具体策

その後、座長に立教大学法学部教授の舟田正之氏を選出、上記1の項目について検討を開始した。検討の中で、舟田氏から、放送事業者が放送番組の製作を外部委託する際の契約見本が参考として示された。また、事務局からは、下請法や公正取引委員会の取り組みなどについての説明が行われた。

説明では、放送事業における下請法違反の事例について、2006年度の規定違反件数23件のうち91.3%が「支払遅延」であったことや、発注書面を親事業者が交付しなかった割合である「発注書面不交付率」が放送業などで22.8%あったことが明らかにされた。

また、放送業に関連する主な違反事例も紹介され、2004年度には、番組の製作を下請事業者に委託しているi社が、自社が開催する有料イベントの売り上げを増やすため、下請事業者に対してイベントの入場チケットの購入を要請するなど、下請法で禁じられている「購入・利用強制」を行っていたことが示された。

そのほかの事例としては、2007年度に、放送番組の製作などを下請事業者に委託しているS社が、ゴルフ大会など自社が主催するイベントのチケット販売業務を下請事業者に無償で行わせるなど、同法で禁じる「不当な経済上の利益の提供要請」を行っていた。さらに、「下請代金の支払遅延」についても、2005年度に、番組製作などを下請業者に委託しているb社が、「毎月末日納品締切、翌々月10日支払」とする支払制度を採っていたため、下請法が禁じている、納品されてから60日を超えての下請代金支払いを行っていたことも示された。

総務省 情報通信政策局 コンテンツ振興課 課長補佐の飯村由香理氏は、「さまざまな事例が下請法や独占禁止法にどのように抵触するのかなどを今後検討し、6月までにはより透明、公正な取引を実現するためのガイドラインを策定できるよう議論を深めたい」と話している。