サン・マイクロシステムズ 末次朝彦社長

サン・マイクロシステムズは、2006年10月にコンセプトを発表したモジュラー型データセンター「Project Blackbox」を日本で初公開した。20フィートの輸送用コンテナに、Sun SPARC Enterprise T2000サーバーで140台、Sun FireT5210では280台を搭載することが可能なデータセンターで、設置の容易性と高密度化、省スペース化、さらに低消費電力化を図っている。

サン・マイクロシステムズの末次朝彦社長は、「ユーザー企業やインターネットプロバイダーの間では、データセンターの容量をすぐにでも追加したい、必要とする場所にITリソースを柔軟に配置したい、初期投資を最小に抑えたい、効率的にデータセンターへの投資を管理したい、さらに、できるだけ小さいスペースで多くの計算能力を利用したいといった要望がある。一方、データセンターで消費される電力量は、2000年から2005年で倍増しており、ある調査によればIT担当役員の41%が、電力および冷却対策を、今後のデータセンターの主要課題としてあげている。また、将来はIT基盤の電力消費量はハードのコストを上回るとの予測もある。こうした数々の課題に対するひとつの回答として、サンが用意したのがProject Blackbox」と位置づけた。

6.1×2.5×2.6m(奥行き×幅×高さ)の20フィート輸送用コンテナに、中央通路の両脇に4ラック×2列の形態で、19インチラックを8ラック設置することが可能となっており、フル実装時の重量は15トンとなる。

Project Blackboxの外観

Project Blackboxの内部。通路の両脇に4ラックずつ並べられている

コンテナをそのまま利用することで、データセンター用建屋の建設やフロアプランが不要なこと、車両、鉄道、船などの既存の世界的な移送インフラをそのまま利用できることから、旧来のデータセンターの設置に比べて、約10分の1の期間で設置できるという。同社が世界60都市で実施しているDiscover Sunツアーでも、Project Blackboxのコンテナを、船、トラックで搬送しており、今回の日本への初上陸についても、同様に陸送はトラックを利用している。

コンテナ内の電源配給システムや、独自の閉ループの水冷却システムを採用しており、ラックに耐ショックマウント構造を採用することで、9Gまでの負荷に耐えることができるほか、マグネチュード6.7の地震にまでに耐えられるという。適用温度は、マイナス29度から54度まで。ラックあたり許容電力は25kWとしている。

コンテナ内の配電盤

サーバーラックの耐震構造

後方排気機構を持つ19インチ対応のサーバーであれば、サン以外のサーバーも搭載できるとしており、混在環境での利用も可能である。「同様にコンテナを利用したデータセンターが他社にあるが、異なるメーカーのサーバーを混在できるのは当社だけ」(末次社長)とした。

また、冷却効率や低消費電力化にも威力を発揮。一般的なデータセンターでは、冷却効率が150W/平方フィートであるのに対して、1250W/平方フィートを実現しているほか、5年間で2.4GW、24万ドルの冷却コストの削減が可能になるとしている。

同社では、2008年初めにもProject Blackboxを正式な製品として出荷する予定で、システム価格は1億円弱になるとしている。「郊外にデータセンターを設置している場合では、それほどコストメリットはないだろうが、都市部での設置や、省スペース、効率化を図りたい場合には威力を発揮する」としている。

すでに、国内において、約10社の企業との商談を開始しており、「新たにデータセンター事業に参入したいという企業からも商談が発生している。インターネットプロバイダーに限らず、あらゆる業種の企業と商談をしている段階」(末次社長)としている。

末次社長は、「現在、全世界でコンピュータを利用しているのは、約15億人。だが、将来的には、60億人といわれる全世界の人たちが、コンピュータを利用するようになる時代がくるだろう。その際に問題となるのは、消費電力。低消費電力の環境を実現することが求められており、Blackboxのような考え方によって、これを打開できるだろう」とした。