Fast Search & Transfer CTO ビョルン・オルスタッド氏

16日、ノルウェーのFast Search & TransferのCTOを務めるビョルン・オルスタッド氏が来日。同社の日本法人であるファースト サーチ&トランスファの戦略と、同日付けで国内リリースされる"お薦め情報"生成エンジン「FAST Recommendation」、および11月の出荷が予定されているオンライン広告プラットフォーム「FAST AdMomentum」の発表を行った。

Fast Search & Transferは、ワールドワイドのサーチテクノロジー市場で大きなシェアを獲得している企業。さまざまなデータソースに対応し、かつ複雑なマッチングも高速に処理できる高度な検索技術を有しており、「米国Dellの販売サイト」や「BEST BUY」をはじめ、3,900社以上の導入実績を誇る。国内では「楽天市場」「価格.com」などが採用している。

同社では「Search is a Matching Engine」というコンセプトを掲げており、ECサイト、オンラインメディア等に対して、検索/プロファイリング技術をベースとした構築支援を行っている。オルスタッド氏は、そうしたECサイト/オンラインメディアの設計に関して「従来は、自社で保有するコンテンツをどのようなかたちで提供していくかという点に重点を置いて考えていくことが多かったが、これではユーザーの多様なニーズに応えていくのは難しい。結果的に、不特定多数のユーザーをひとくくりにして、売れているもの、人気の高いものばかりを提供するサイトになりがちだった」と指摘。その上で「本来は、自分たちのユーザーがどのような嗜好を持っているのかを中心に考え、彼らに対してどのような"体験"を提供すればよいかを追求していくべきだ」とし、Fast Search & Transferではそれを支援するソリューションを提供していることを説明した。

ファースト サーチ&トランスファでは、以下の3項目を基軸に、現在未成熟の国内エンタープライズサーチ市場を開拓していくという。

  1. (顧客の)事業の収益化(Monetization)
  2. 企業内検索(Information Discovery)による業務効率の向上
  3. サーチを基盤とするビジネスインテリジェンス(BI built on Search)による経営支援

1つ目の「事業の収益化」を担うのが今回発表された「Fast AdMomentum」だ。同製品はオンラインメディア、流通企業、通信キャリア向けに開発されたオンライン広告プラットフォームであり、文脈やユーザープロファイル、地域に基づいた広告配信の最適化が可能だという。

同製品は、ファースト サーチ&トランスファが提供する「FAST ESP(Enterprise Search Platform)」の上で稼働する。FAST ESPには、「拡張性が高く動作が高速」「390以上のファイルフォーマットに対応」といった点に加えて、文章中のキーワードを自動的に抽出してインデックスを作成するという特徴がある。この機能を用いることで、広告とコンテンツを効果的にマッチングさせることが可能であり、Google AdSenseなどの外部の文脈連動型広告サービスに頼らなくても、自社内で最適な広告配信が行えるという。

一方、2つ目の「企業内検索による業務効率の向上」については、「FAST Answers」と呼ばれる、FAST ESPをベースとするソリューションが用意されている。FAST Answersでは、インデックス生成時に、抽出したキーワードを解析し、Date、Location、Peopleなどのカテゴリに分類する。検索結果を表示する際には、それぞれのカテゴリに属するキーワードが色づけ表示されるため、ユーザーは自分が求める情報を効率的に探し出すことが可能だ。

また、通常のサーチエンジンはドキュメント単位でしか内容を解析できないのに対し、FAST ESPではセンテンスやパラグラムに区切って分析を進めることができる。したがって、FAST Answersでは、例えば「ニュースの中から『首相』と『小沢一郎』が同一センテンス内で使われている文章を探し出す」といった高度な検索も行える。さらに、「首相というキーワードと同時に使わることが多い人名/キーワードをそれぞれ抽出し、各人名とキーワードの関連の強さをマトリクス形式で表示する」といったことも可能であり、情報の分析にも役立てることができる。

Wikipediaのコンテンツから「トヨタ」を検索した例。人名が赤色に、日付が黄色に、団体名が水色にハイライト表示されている

Web上のニュースサイトから「首相」が含まれるものを検索し、その内容を人名とキーワードで解析した例。縦軸に人名、横軸にキーワードが配置され、マトリクス表示されている。赤い部分は、該当する人名とキーワードが同時に使われることが少なく、黄色、緑色と、色が濃くなるにつれて同時に使われることが多いことを表している

そして、3つ目の「サーチを基盤とするビジネスインテリジェンスによる経営支援」を担うのは「FAST Radar」と呼ばれるアプリケーションである。同アプリケーションでは、経営者が求める情報を各種データソースから引っ張り出して、表形式で表示することができる。縦軸、横軸を自由に設定できるうえ、達成率を表示したり、ある値が閾値を超えたらアラートを投げるといったことも可能だ。データソースには、RDBなどの構造化データだけでなく、非構造化データも含めることができるため、多くのリソースを分析対象に加えることができる。

FAST Radarの利用例。画面右上段の表は、縦軸/横軸に表示する項目をその場で選択して作成したもの。画面左上の、6割程度しか表示されていない樹木の画像は、売り上げの達成状況を表している

Fast Search & Transfer ビジネスデベロップメント担当ヴァイスプレジデント 兼 ワールドワイドメディアソリューションズ部門ジェネラルマネジャー ペリー・ソロモン氏

また、ファースト サーチ&トランスファは、これらの製品に併せて、ECサイトやオンラインメディアにおいて"お薦め情報"を表示させるためのエンジン「FAST Recommendation」も発表した。

同製品は、ユーザーのプロファイルを生成する「Profile Engine」、プロファイルとコンテンツを結び付ける「Datamining Engine」、お薦め情報を生成してユーザーに提供する「Recommendation Engine」の3つのコンポーネントによって構成される。まずはProfile Engineが、年齢や性別、閲覧/購買履歴を基に各ユーザーの嗜好を自動的に判別。その後、関連するコンテンツをDatamining Engineがサイト内から探し出し、その結果をRecommendation Engineがユーザーに返すという仕組みだ。

現状では、ユーザーの閲覧/購買意欲を高める情報というと人気ランキング程度のものしかないサイトが多いが、FAST Recommendationを組み込むと、各ユーザーの嗜好に応じた情報を提供することがきる。したがって、「いわゆる"ロングテール"の部分を有効活用することが可能になり、サイトの収益性を向上させることができる」(Fast Search & Transfer ビジネスデベロップメント担当ヴァイスプレジデント 兼 ワールドワイドメディアソリューションズ部門ジェネラルマネジャー ペリー・ソロモン氏)という。

FAST Recommendationのデモでは、「Mr.Incredibles」のDVDを購入すると「Monsters, Inc.」などのアニメがお薦めに表示され、その後ドラマ「The West Wind」のSeason 1を購入するとアニメよりも上位に同ドラマのSeason2~6が表示される様子が示された。

モバイル端末向けの販売サイトを意識した、FAST Recommendationのデモアプリケーション。「The West Wind」のSeason 1を購入する(画面左)と、The West Wind」のSeason 2~6がお薦めの上位に表示される(画面右)