日本オラクルは、SOAの導入を検討する企業向けに、事前の診断を行うアセスメントサービス「Roadmap to SOA」を11月下旬から提供開始する。SOAに対し関心は高いが、何から始めればよいかわからない、投資対効果が測定できない、といった「ハードル」により、実際の導入に踏み切れない企業が多いことから、同社では、これらの課題に応え、SOA導入の方法論の教育など、企業のSOA化計画のプロセスを支援するサービスを事業として展開する。「Roadmap to SOA」は、世界で1,000件以上のSOA導入実績を基盤としており、全世界で、すでに170社の企業が採用しているという。

「Roadmap to SOA」は、まず「Discoveryフェーズ」で、SOAの活用を望んでいる企業に対する聞き取りを行い、SOAについての理解度、技術水準など7項目について、それらの企業の現状を数値化する。次に、IT部門、ビジネス部門、経営層を交え、ディスカッションすることで、何が不足しているかなどを診断、情報を整理するとともに、SOA導入に向け、どのようなプロジェクトから始めるのが得策か、実装が早くできるのはどの要素かなど、優先すべき事項などを浮かび上がらせる。

問題点や着手すべき点が明確になったところで「ソリューション開発フェーズ」に入り、SOAを適用するための具体的な指針を示し、基本的なアーキテクチャーを決め、計画を策定する。さらに、SOAによりもたらされる益、投資対効果を測定する。たとえば、

  • 統合されたアプリケーションで、Webサービスとして再利用することができるものがどれだけあるか
  • 再利用でなく、最初から開発しなければならなかった場合と比べ、どれほどのコストが削減できるか

など、シミュレーションにより数値で投資対効果を可視化する。この段階では最終的には、SOA実装の方法論が提示され、各企業にこれを十分に理解させ、状況に応じカスタマイズする。

日本オラクル常務執行役員 システム製品統括本部長 三澤智光氏

同社 常務執行役員 システム製品統括本部長 三澤智光氏は「SOAの構築には、相応の投資が必要なので、(SOAにより実現する)利益がはっきり見えていなければならない。そのような利益を見つけるのがこのサービスだ。何が、その企業にとっての利益なのか、シミュレーションベースで算出する」と話し「すでに世界で実装の実績があり、効果を実証されているのがオラクルの強み」としている。また、このサービスは、単に同社が、SOAの成功に向け、すべてを請け負うということではなく「このプロセスを通して、顧客企業自体が、ロードマップをつくる」のを支援する取り組みであることも大きな特徴であるといえる。

SOAは、アプリケーション開発のための時間短縮から、多様な範囲にわたる業務コストの削減、企業全体のシステム運用にかかわる効率化に至るまで、すでに活用している企業から、さまざまな成果が語られるようになってきており、未着手の企業のあいだでも注目度が高くなっている。しかし、SOAの浸透を妨げるような数多くの障壁が依然として存在しているのも事実だ。同社によれば、阻害要因として最も多く挙げられたのは「予算不足(44%)」、次いで「業績への貢献が不明(42%)」「組織間の壁(36%)」などとなっている(出典: InforWorld survey、2006年7月)。今回のサービスはこれらを除去することを目指すものと位置づけられている。

日本オラクル システム製品統括本部 Fusion Middleware技術本部長 成田裕次氏

同社によれば、SOAの導入/適用の形態には2つの類型がある。ひとつは、いわば"部分最適"の考え方であり、SOAの技術、手法を駆使し、現在、直面している喫緊の課題を解決しようとする試み「SOA Based Integration」だ。もうひとつは、SOAの発想を十全に活用して、企業の全体を見据えた"システムの改革による効率化"を目標とし「全社規模で、ビジネス上の俊敏性や、処理のリアルタイム性を求める」(同社 システム製品統括本部 Fusion Middleware技術本部長 成田裕次氏)、「Enterprise SOA」だ。

成田氏は「"SOA Based Integration"は本来、"Enterprise SOA"に進む第一歩と見ている」と話す。「Roadmap to SOA」は、SOAについての知識、技術などが十分ではない企業に対し、コンサルティングの段階から、実装、運用までの方途を用意するものであると同時に、いずれは「Enterprise SOA」の運用に導くための道筋と設計図を示す役割をも担っている。

今年度の具体的施策としては、Fusion Middlewareの技術者やコンサルティング要員などからなる12人程度の混成チームを立ち上げ、年内は3社にサービスを提供する。「この態勢で対応できるのは、当面、3社ほど」(三澤氏)だが、今後は「年間で20-30件くらいのサービスを展開できるキャパシティをもちたい」(同)との考えで、およそ50人の陣容に育てていく意向だ。