サン・マイクロシステムズは25日、「Sun SPARC Enterprise サーバにおける革新と戦略」と題してプレスセミナーを開催した。SPARC Enterpriseは17日(米国時間)に米ニューヨーク市内のホテルで開催された富士通と米Sun Microsystemsの共同記者会見で発表されたもの。SPARC Enterpriseは、SunのUltraSPARC T1と富士通のSPARC64 VIの2種類のプロセッサを搭載し、OSとしてSolarisをサポートするローエンドからハイエンドまで幅広いラインナップを揃える。今回のプレスセミナーはこの発表を受け、その発表内容のサマライズや各製品の機能詳細、そして今後リリースされる「Niagara 2(開発コード名)」プロセッサといった将来の技術戦略について説明するためのものとなる。

九里禎久氏
サン・マイクロシステムズ プロダクト・ストラテジック・マーケティング本部 本部長

既報の通り、SPARC EnterpriseはローエンドのT1000/T2000、ミッドレンジのM4000/M5000、ハイエンドのM8000/M9000の6製品から構成される。T1000/T2000は従来のSunFire T1000/T2000のブランド名を変更したもので、UltraSPARC T1を搭載したラックマウントサーバという基本構成は従来のままとなる。一方のM4000~M9000のシリーズは、富士通との技術協力との成果で誕生した新製品。メインフレーム技術で定評のある富士通により、信頼性や冗長性が大幅に強化されている点が特徴となる。サン・マイクロシステムズ プロダクト・ストラテジック・マーケティング本部 本部長の九里禎久氏は「富士通との関係は日の浅いものではなく、20年来の強固なもの。過去の資産を活かしつつ、最高のパフォーマンスとメインフレームの信頼性をオープンシステムに届けることができる」と、新製品の展開に自信を見せる。

製造販売戦略については、機種や展開地域に応じてサンと富士通が製品製造を分担し、日米はサンまたは富士通が自社ブランドでそれぞれ展開、欧州地域に向けては富士通シーメンスが自社ブランドで展開していく。SPARC Enterpriseのブランディングについては、x86プロセッサを搭載したSunFire(開発コード名"Galaxy")を除くUltraSPARCプロセッサを搭載したSunFireは、すべてSPARC Enterpriseに統合される(UltraSPARC T1シリーズも含む)。富士通や富士通シーメンスを含むサン以外のサーバ製品も、SPARC Enterpriseと同一系統のブランドに集約されることになるという。

富士通のSPARC64 VIの2種類のプロセッサを搭載し、OSとしてSolarisをサポートするローエンドからハイエンドまで幅広いラインナップを揃える。今回のプレスセミナーはこの発表を受け、その発表内容のサマライズや各製品の機能詳細、そして今後リリースされる「Niagara 2(開発コード名)」プロセッサといった将来の技術戦略について説明するためのものとなる。

野瀬昭良氏
サン・マイクロシステムズ プロダクト・ストラテジック・マーケティング本部 アライアンス・プロジェクト担当

続けて同社プロダクト・ストラテジック・マーケティング本部アライアンス・プロジェクト担当の野瀬昭良氏が技術トレンドや新製品の詳細について説明を行った。同氏がキーワードとして挙げるのが「ハードウェアの信頼性と可用性」「高いスケーラビリティ」「現在の運用形態を再現する仮想化技術」「アプリケーション互換性」の4つで、特に強調するのがSPARC Enterpriseの特徴でもある前2者だ。「同クラスのUNIXサーバでこれだけの信頼性を実現したのはSPARC Enterpriseだけ」(野瀬氏)と述べるように、従来のような電源ユニットやロジックボードの動的交換による冗長性だけでなく、メモリミラーリングやキャッシュの動的縮退、さらには動作中のバックプレーン交換など、これまでメインフレーム以外で冗長化が行われていなかったようなコンポーネントも含めて信頼性が向上している。またスケーラビリティ向上について野瀬氏は「仮想化を実現しようとしたとき、プロセッサの増強だけではI/Oがボトルネックになる。SPARC Enterpriseではプロセッサ向上と比例してI/Oスロット数が上昇するため、トレードオフのないスケーラビリティを達成できる」と、リニアな拡張の可能性について言及する。

またプレスセミナーでは、同社が2007-2008年にかけてリリースを計画している「Rock」や「Niagara 2」などの新プロセッサについても触れている。Rockは同社の主力製品となるUltraSPARCシリーズの後継となるもので、個々のワークロードが重いデータ処理に向いたプロセッサとなる。一方でNiagara 2はUltraSPARC T1の後継となるプロセッサで、CMT(Chip Multi-Threading)によるスレッドによる分散処理を突き詰めて処理効率向上を図ったものとなる。前出の野瀬氏は「段階的にはなるが、ユーザーのSMP(Symmetric Multi Processing)からCMTへのスムーズな移行を実現するのがサンのプロセッサ戦略となる。RockとNiagara 2はワークロードの種類によって個々に異なる役割を持っている。間もなく登場するNiagara 2では、ネットワーク処理向上に向け"Neptune"と呼ばれるマルチスレッド10GbE技術を搭載しており、ネットワークの負荷増大に耐えられる工夫が施されている。もしこうした技術を搭載しなかった場合、プロセッサがネットワークの負荷に耐えられず処理上のボトルネックになる可能性がある」と説明する。