オンライン化やデジタル化に必須となるインフラ サービスを提供することで、顧客のデジタル トランスフォーメーション(DX)の実現に貢献し続けている NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)。同社はリアルイベントとして毎年開催してきた自社事業やサービスソリューションを紹介するフォーラムを、2020 年はコロナ禍の影響でオンラインに切り替えました。その決断に際して参考にしたのが、マイクロソフトが導入したバーチャルイベントのプラットフォームです。マイクロソフトの取り組みを参考に実現した同社のオンラインイベントについて、プロジェクトをリードした経営企画部 広報室の 2 人に話を聞きました。

マイクロソフトのイベントを参考にオンライン化へ踏み出す

NTTコミュニケーションズ 経営企画部 広報室 主査 高山 匡史 氏

NTTコミュニケーションズ
経営企画部 広報室 主査 高山 匡史 氏

NTT Com は毎年 10 月、リアルな場のイベントとして「NTT Communications Forum」を開催してきました。例年、各企業の CxO クラスや情報システム部門を中心に招待し、2 日間で 5,000 人程度の来場者を集めていたといいます。ところが 2020 年は新型コロナウイルスの影響により、例年通りリアルイベントとするか、それとも感染症拡大防止の観点からオンラインイベントとするか、判断に悩まされていました。

「フォーラムの企画は毎年 3 月頃から検討を始めるのですが、10 月の段階ではコロナが落ち着いているかもしれないとの想定で、当初は通常開催も考えていました。ただ、4 月に緊急事態宣言が出され、社内でオフラインとオンラインのハイブリッド案も含めて検討を続けた結果、6 月下旬、オンライン開催を決定しました」と、経営企画部 広報室 主査の高山 匡史 氏は振り返ります。

高山 氏 は、同社にとって年間最大のイベントである同フォーラムの企画運営を担うプロジェクトマネージャーの立場にあります。決定の時点で 10 月半ばのイベント本番まですでに 4 カ月を切っており、具体的にどのようなプラットフォームを利用してオンラインイベントを開催するか、早期に決定する必要に迫られていました。イメージしていたのは、参加者にアバターとして 3D 空間の会場に来場してもらうバーチャル形式のイベントです。

「実は最初はイベントをすべてスクラッチで開発することを目指していましたが、なにしろ時期が迫っているためフルスクラッチは現実的に難しいとの判断に至り、既存のバーチャルイベントプラットフォームを探すことにしたのです」と高山 氏。注目したのが、マイクロソフトが 2020 年 6 月 17 日から 7 月 17 日にかけてエンジニアを対象にオンライン開催していた、開発者をはじめとする IT に携わるすべてのエンジニア向けの「de:code 2020」でした。

FIXER のバーチャルイベントサービス「ccVES」を横展開

株式会社 FIXER 執行役員 岡安 英俊 氏

株式会社 FIXER
執行役員 岡安 英俊 氏

de:code も例年はリアルなイベントとして開催していたものですが、2020 年はオンラインに移行。de:code 2020 はバーチャルイベントとして開催し、1 カ月の期間中に 2 万 3,500 人の参加者を集めました。このイベントで採用されていたのが、株式会社FIXER が Microsoft Azure 上で開発した SaaS 型バーチャルイベントサービス「cloud.config Virtual Event Service」(以下、ccVES)です。

ccVES は、専用アプリケーションを必要とする従来の 3D 空間バーチャルイベントサービスと異なり、Web ブラウザ上で動作するという大きな特徴を持っています。また、Microsoft Teams を使って開催側と来場者が商談できる点や、ユーザー側で動画などのコンテンツを柔軟に追加できる点もポイントといえます。

「国内外のさまざまなプラットフォームを検討する中で、ccVES に着目しました。ccVES は当社が計画していた 3D 講演・展示を行えるサービスであることと、Microsoft Teams を通じて来場者とコミュニケーションできること、さらには 1 カ月にわたる de:code を安定的に開催できたという実績を評価しました。マイクロソフトはもともと当社にとって重要な協業パートナーですから、7 月下旬に de:code 2020 のノウハウと ccVES の横展開をマイクロソフトにお願いしました」(高山 氏)。

ccVES を開発した FIXER は、Microsoft Azure の黎明期からマイクロソフトのパートナーとしてパブリッククラウドサービスの普及に努め、マイクロソフトからその優秀な実績を評価され続けてきた企業です。de:code 2020 の開催にあたり、マイクロソフトから Microsoft Azure 上でバーチャル空間のイベントを開催したいとの要望を受け、ccVES を開発・提供しました。

「ccVES は、契機としては de:code 2020 の要望を受けて開発したものですが、実は初めからバーチャルイベントのプラットフォームとして一般化・汎用化し、横展開するという戦略上の意図を持っていました」と、FIXER の執行役員、岡安 英俊 氏は語ります。

アジャイルの開発手法で多彩な機能のカスタマイズを実施

NTTコミュニケーションズ 経営企画部 広報室 岡本 華奈 氏

NTTコミュニケーションズ
経営企画部 広報室 岡本 華奈 氏

こうした経緯で de:code 2020 のノウハウと ccVES を採用することが決定し、8 月に入ると具体的準備がスタートします。

「あくまで当社のイベントですから、de:code 2020 を中身だけ変えました、ではもちろん成立しません。FIXER と協働で開発リソースを割り当て、空間デザインの変更や、当社の独自機能を ccVES に追加するカスタマイズを進めていきました。」と高山 氏。すでに本番まで残された期間は 2 カ月程度しかありませんでした。

その独自機能が、AI サービス「COTOHA Chat & FAQ」による自動応答の AI チャットボットや社員との有人リアルタイムチャットです。加えて、各講演を音声で自動認識・テキスト化し、自動翻訳で字幕を付ける機能も追加しました。また、イベントへのログイン時の認証機能もカスタマイズしました。ccVES はマイクロソフトのアカウントで認証する形になっていたため、来場者のメールアドレスをもとに認証する仕様に変更したのです。

「時間が限られる中、変更部分の開発を FIXER と当社メンバーが力を合わせて成し遂げました。」と高山 氏は話します。対して FIXER 側では、短い開発期間で NTT Com からの多様なカスタマイズ要望を満たすため、工夫した部分があると岡安 氏は指摘します。

「開発した部分はまだ粗い状態であっても 3D 空間内で機能を動かしてもらい、その場でフィードバックをもらって、アジャイルに修正していく開発手法を取りました。短期間のスケジュールで苦労はしながらも、工夫を重ねて無事に乗り越えられたと考えています」(岡安 氏)。

一方、イベントのコンテンツ面で苦労した点については、高山 氏とともに今回のフォーラムを牽引した経営企画部 広報室の岡本 華奈 氏がこう語ります。

「97 の展示、68 の講演すべてについて各担当者と調整しながらコンテンツを準備し、短期間で ccVES に実装する作業は大変でした。例年のイベントと異なり、全展示で動画を制作しなければならず、広報室が中心となって 8 月からの 1 カ月半で作っていきました。また、フォーラムをバーチャルイベントとして行うのは全社員にとって初の経験でしたから、全社員に来場者をアテンドする方法、展示に関して説明する方法など、イベント運営のフローを周知するところも苦労しました」(岡本 氏)。

関係者の苦労の結果、9 月 24 日に社内でベータ版を公開。さらに開幕の 2 週間前、10 月 2 日には 5,000 人の社員を本番環境の 3D 空間内に呼び込み、負荷テストも兼ねたプレ開催にこぎ着けました。

来場者の大幅増に加えデータ活用やショールームのメリットも享受

2020 年 10 月 14~16 日の 3 日間、例年の名称に“Digital”を付け加えた「NTT Communications Digital Forum 2020」が開催されました。経営層や情シス部門などの招待客が 9 割以上を占めていた 2019 年までのリアル開催と異なり、同社の DX 事業者としての認知向上を図るため、DX に携わる事業部門も対象としたところが大きな違いです。

「LOB 層とのリレーション構築を主眼に置いてイベントの企画設計を行いました。当社の DX ソリューションを軸に、データプラットフォームと ICT インフラの取り組みを紹介しています。ターゲットを広げたこともあり、3 日間で 1 万人以上に来場いただきました。 1 万人規模の B2B 向けオンラインイベントとして最大限のパフォーマンスを発揮できたと思います」と、高山 氏はイベント全体を総括します。

また成果として、岡本 氏は、まず参加者が例年に比べ倍増したところを評価しました。

「LOB 層には前年比 2 倍ほど来ていただきました。期間中、24 時間アクセスできたこともあり、講演視聴者は前年比 4 倍に増えています。さまざまな点でオンライン開催した効果を実感できました」(岡本 氏)。

参加者の声として、来場者からは「オンラインだからこそ静かに聴けた」「多数のセッションを閲覧できた」などポジティブな声が基本的に多かった一方、顧客のアテンドや展示ブースでの説明を担当した社員からは、アバター同士での会話ができなかった点など改善を希望する意見も出ていたといいます。

また高山 氏は「参加者が増えたことに加え、すべてオンラインで実施したことで来場者の詳細な行動データを取ることができ、今後の営業やマーケティング活動にデータを活かせる点も収穫でした」と振り返ります。さらには、今回のイベントは期間後も「NTT Communications Digital Showcase」として 2021 年 3 月 31 日まで公開されました。「単発のイベントとして終えるのではなく、通年で利用可能な常設バーチャルショールームにつながる可能性が見えた点も、従来のリアルイベントとは異なるメリットでした」と評価しました。

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