自動車の販売台数で世界シェアトップのトヨタ自動車(以下、トヨタ)。その車両製造・組み立て工場において、生産指示から完成にいたるまでの情報を一元的に管理し、トヨタ生産方式の中核を担っているのが、「ALC(アセンブリー・ライン・コントロール)」と呼ばれるシステムだ。トヨタはこのALCの基盤を、2010年にOSS(オープンソースソフトウェア)を利用した構成に全面刷新。その高品質の運用を実現するため、翌2011年にサイオステクノロジー(以下、サイオス)の「OSSよろず相談室」を採用した。以降5年間にわたってサイオスが蓄積してきたALCの経験知を評価し、トヨタはOSSよろず相談室に対する信頼を深め、サポートの利用領域をさらに拡大している。

導入目的

OSSの運用における課題の解決と、技術サポート

効果

ALC運用の安定化とリスク削減、TCO削減

システム構成

[OS]CentOS,Red Hat Enterprise Linux
[DBサーバー]PostgreSQL
[Webサーバー]Apache
[アプリケーションサーバー]Tomcat

トヨタの90%以上の自動車の生産を担う車両生産指示システムをOSSで刷新

世界各国の法規制や文化、顧客の嗜好にあわせて設計された膨大なバリエーションを有する自動車を正確かつ効率よく生産するためには、きめ細かな生産指示を行い、1台の自動車が完成するまでの情報を一元的に管理する仕組みが欠かせない。トヨタが世界14か国に展開する約40工場において、このトヨタ生産方式の中核を担っているのが「ALC(アセンブリー・ライン・コントロール)」と呼ばれるシステムだ。

MS生産物流生技部 生産情報計画室長 曽我良司氏

同社 MS生産物流生技部 生産情報計画室長の曽我良司氏は、「ALCは50年近い歴史を重ねてきたシステムで、まさに生産現場のインフラそのものです。現在ではトヨタの90%以上の自動車が、ALCのもとで生産されています」と説明する。

このALCが大きな転換を迎えたのが2010年のこと。それまでの商用OS・データベースなどの製品を基盤として構成されていたシステムを、細部まで作り込んだ自作アプリケーションがLinux系OSのCentOSやデータベースのPostgreSQLなどのOSS上で動く構成へと全面的に刷新したのである。

最大の狙いはITシステムのTCO(総所有コスト)削減だが、それだけではない。「商用製品は豊富な機能を備えていることを特長としていますが、実はそのほとんどがALCには不要なのです。そうした過剰な機能を維持するために、リスクを背負ってまで余計なバージョンアップは行いたくないのが本音。しかし、それをやらなければサポートが打ち切られてしまうなど、商用製品は手に余る部分が大きいのです」と曽我氏は語る。

5年間にわたって蓄積してきた“経験知”が、トヨタとサイオスのパートナーシップを深化させた

MS生産物流生技部 生産情報計画室 主任 所洋平氏

ただ、OSSを活用するとなれば、その運用は基本的に自己責任となる。生産情報計画室内にも自作アプリケーション部分のみならず、OS・データベースの挙動まで調査できるスキルを持つ技術者はいるが、システムトラブル発生時にOS・データベースの深い部分にまで調査を掘り進めるには限界がある。先述のとおりALCは世界各国で利用される極めてミッションクリティカルなシステムなだけに、「何か問題が起こったときに、一元的な窓口から的確な調査支援を行ってくれるパートナーがほしいと考えました」と語るのは、同室 主任の所洋平氏である。

そうした中で目にとまり、2011年6月に正式契約に至ったのが、サイオスの「OSSよろず相談室」なのだ。選定の決め手となったのは、原因調査のアプローチやステップの踏み方など、課題解決に向けたサイオスの取り組み姿勢である。

「トヨタには『“なぜ”を5回繰り返す』ことで、トラブルなどが発生した際の“真相”を究明していく企業文化が根付いています。候補に残ったベンダーに対して、我々が実際に直面していた課題を投げかけ、得られた回答を吟味した結果、私たちと最も近いスピリッツを持っているのがサイオスだと判断しました」と、曽我氏は振り返る。

以後、トヨタはOSSよろず相談室の契約を毎年更新しており、2016年6月には6年目を迎える。

「私たちからの調査依頼に対して、サイオスからは直接的な回答のみにとどまらず、『このパラメータを変更することで、状況がさらに改善する可能性があります。なぜならば……』といった一歩踏み込んだ提案もいただいています。問題がなぜ起こったのかを徹底して突き止め、再発防止をするという私たちのミッションに対し、『自作アプリケーションはトヨタ自身で、OSS部分についてはサイオスの協力を得ながら』という分担の中で、サイオスはとても満足度の高いサポートを提供してくれています」と所氏は語る。

過去5年間にわたって蓄積してきたALCに対する“経験知”が、トヨタとサイオスのパートナーシップを深化させてきたのである。

「自作アプリケーションはトヨタで調査すると言っても、実際には問題箇所が切り分けできないケースは多く発生します。CentOSやPostgreSQLに実装されているどの機能を、どんな意図に基づいて使っているのか、サイオスはアプリケーションの仕組みまで理解したうえで、『原因の一次切り分けができていない段階でもかまわないので、わからないことがあれば遠慮せず何でも聞いてください』と親身に対応してくれています。仮にハードウェアメーカーやSIベンダーが提供しているサブスクリプション型のサポートに依存していたとしたら、現在のような心強い後ろ盾は得られなかったかもしれません」と曽我氏も評価する。

ALCと同じOSSのテクノロジーを使ったシステムの横展開に対応してサポートを拡大

当初はALCを対象に利用が始まったOSSよろず相談室だが、現在そのサポート領域を徐々に拡大しつつある。

MS生産物流生技部 生産情報計画室 車両グループ長 福山武史氏

同室 車両グループ長の福山武史氏は、「サイオスと契約したサポート工数の余力を生かして、最近では『OSSの最新動向』『CentOSの次期バージョンで注意すべき変更点』といったテーマの社内講習会も開催してもらっています」と語る。従来のトラブル対応を中心としたリアクティブなサポートから、将来を先読みするプロアクティブなサポートの比重を高めているのだ。

一方で加速しているのが、ALCと同じOSSのテクノロジーを使ったシステムの横展開への対応だ。「エンジン製造やプレス工程、DR(災害対策)などを対象とした、すでに4 ~ 5システムのOSS化が進んでおり、これらについてもサイオスに一貫してサポートをお願いしたいと考えています」と福山氏は語る。

さらにトヨタでは、IoTのネットワークを通じて生産ラインや製造装置などから得られる多様なデータを活用するため、KPI(重要評価指標)の可視化やBI(ビジネスインテリジェンス)の導入にも強い興味を持っている。「既存のツールは、ほとんどがマーケティングを対象としているため、生産現場の要求にぴったり当てはまるものがなかなか見当たりません。しかし、この分野にも近いうちに必ず最適なOSSが登場してくるはず。私たちが単独では調査しきれないこうしたテクノロジーに関する情報も、サイオスからタイムリーに提供してくれたらとてもありがたいです」と曽我氏は、今後のOSSよろず相談室を中心としたサポートのさらなる強化と拡充に大きな期待を寄せている。

トヨタ自動車株式会社

設立:1937年8月
資本金:3,970億5000万円(2015年3月末現在)
所在地:愛知県豊田市トヨタ町1番地
業種:自動車の生産・販売
従業員数:連結344,109人(2015年3月末現在)
URL:http://www.toyota.co.jp/

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