企業の成長過程では多様なシステムが構築され、運用される。特に近年では、システムを迅速に立ち上げ、規模拡大への対応も容易なことから、クラウド上のアプリケーションやシステム基盤を利用する例も多い。

アウトドア用品メーカーのスノーピークも、オンラインストアなどのシステム基盤にAmazon Web Services(以下、AWS)を活用。同社では、情報を活用したアクションを実現していくためBIを導入し、さらにクラウド環境とオンプレミス環境の両方のシステムからデータを集約できるEAIツールを導入することで、社内で使われる様々な情報を活用していくための環境を整えた。

社員のアクションにつながる情報を提供する仕組み作りに取り組む

1959年、金物問屋の社長が趣味の登山で使っていた道具に不満を持ち、オリジナルの登山用品を開発し売り出したのが、スノーピークの発祥だ。同社は1980年代から独自のオートキャンプ用品で業界をリードするようになり、1996年にはブランド名を社名とし、2000年代に入ってからは日本各地に直営店を展開し、オンラインストアも手掛けている。

スノーピーク BPI本部 システムソリューション課 マネージャー 小熊稔幸氏

「ここ5~6年、アウトドアブームを受けて当社も大きく成長してきました」と語るのは、BPI本部 システムソリューション課マネージャーの小熊稔幸氏だ。

同社では近年、企業の成長には社員一人ひとりの成長が不可欠と考え、数々の取り組みを進めている。その一環として情報システム部門では、社員のアクションにつながる情報提供を可能にする仕組みの構築に取り組んでいる。

「受け取った社員が自らアクションを起こすきっかけとなるデータこそ、真の情報だと考えています。しかしこれまで、各アプリケーションが持つデータの収集・集計・加工・配信は、情報システム部門の担当者がMicrosoft Accessなどを用いて手作業で行っており、情報を最大限に活用できる環境ではありませんでした。そこで情報発信の仕組みを強化するため、BIおよびEAIを導入することにしたのです。それらを使って、例えばポイント管理システムで管理している顧客の購入履歴から関連するおすすめのアイテム情報を提供する、といった価値の高い情報を提供していける仕組みを実現しようとしています」(小熊氏)

AWS上に導入可能なEAI「DataSpider Servista」で情報を集約

こうして、まず2014年にBIツール「Dr.Sum EA」(ウイングアーク1st)を導入し、ERPにある売上データの集計・配信からスタートした。続いて2015年に入ってからは、BIツールで扱う情報ソースを拡大すべくEAIの検討が開始され、3月にはアプレッソの「DataSpider Servista」を採用することが決定した。

「選定に際してはサポート面を重視し、日本語で対応してもらえる国産ソフトであることや、定期的なトレーニングが実施されていて必要なときに勉強できる点を評価しました。DataSpider Servistaは、オンラインストアなどで使っているAWS上に導入できることもポイントでした。さらに、必須となるAWSやBIツールへの専用アダプタが揃っているのはもちろん、他のクラウドサービスへのアダプタも豊富に用意されていることから、将来性も期待できます」と、BPI本部 システムソリューション課タスクリーダーの前澤正宜氏は選定理由について説明する。

ちなみに、スノーピークでは2014年4月にオンラインストアのリニューアルでAWSを初めて採用し、その後はポイント管理システムや店舗ブログ、取引先小売店向けBtoBシステムもAWS上に構築している。

「クラウドは、システム導入が手軽にできることから積極的に活用しています。今後ほとんどのサーバはオンプレミスからクラウドへ移行していく方針で、AWSの他に『Microsoft Azure』(マイクロソフト)や『kintone』(サイボウズ)などの利用も考えています」(小熊氏)

DataSpider Servistaで様々なシステムを連携

開発工数の削減で、目に見えるコスト削減効果も

DataSpider Servistaの環境構築は、アプレッソのパートナーであるSCSKの支援を受けて行われ、2015年5月に完了した。AWS上での構築ということもあり、1~2カ月で迅速に立ち上げることができた。各システムとのデータ連携スクリプトなどは情報システム部門の社員3名が担当し、順次開発を進めている。開発においては、大きな問題は特になく、導入初期に発生した使いこなし方などの小さな課題は、SCSKおよびアプレッソによるサポートに問い合わせることで解消できたという。

スノーピーク BPI本部 システムソリューション課タスクリーダー 前澤正宜氏

「システム開発の視点から見ると、DataSpider ServistaのGUI画面での開発には、データベースごとの違いをきちんと吸収してくれるのかという懸念もありました。しかし、実際にトレーニングを受けて開発をしてみると不安は解消され、むしろ各DBの固有仕様を考慮することなく開発できるメリットを実感しています。また、コーディングするよりミスや見落としが少なく、テストもボタン一つでできるなど、迅速に開発が進めることができ、工数の削減につながりました」と前澤氏は評価している。

こうして各システムからBIツールへとつながるデータ収集・集計が実現し、さらに商品マスタの連携や、通知メールおよび分析レポートの配信なども一部で開始されている。

「これからいよいよ、BIツールとDataSpider Servistaを導入した本来の目的、すなわち『アクションにつながる情報の発信』を進めていくことになります。とはいえ、現段階でも、データ連携などの開発工数を削減したことにより、導入に要した費用の採算は取れています」(小熊氏)

その開発費用削減効果は、以下のように算定されている。

  • ポイント管理システムからBIシステムへの会員データ連携 200万円
  • オンラインストアからBIシステムへの売上データ連携 200万円
  • オンラインストアからBtoBへの商品マスタ連携 150万円
  • ERPからBIシステムへの仕入データ連携 120万円
  • ERPからBIシステムへの入出荷データ連携 120万円

 計 790万円

情報システム部門でも「一人ひとりの成長」を実現

今後は、BIツールとDataSpider Servistaが可能にしたタイムリーな情報提供が、スノーピークの「企業の成長に向けた一人ひとりの成長」につながっていくと期待される。さらに、生産性が高まり開発工数が削減されたことで、情報システム部門の業務の質も大きな変化が生じていると小熊氏は言う。

「我々の時間に余裕ができたことから、各部門の業務知識を得るためのヒアリングなどにより多くの時間を使えるようになりました。その結果、定型的なフローがない業務もかなり存在することが分かり、その改善に向けた取り組みが始まっています。我々自身も、エンドユーザーのことを以前より意識するようになっており、『あたりまえ』のレベルが上がった気がします。これも『一人ひとりの成長』です」

DataSpider Servistaも、当初の目的だけでなく様々な用途へ応用を広げていく方針だ。例えば、HTTPトリガーを使用して社内用のWebツールを開発するといったことも検討しているという。

「DataSpider Servistaはデータのインプット部分にも使えると考えています。社内向けにはMicrosoft Accessをベースとした仕組みもまだ存在しているので、今後はWebベースの仕組みへのリプレイスを検討しています。まだ我々は、DataSpider Servistaの能力の10%くらいしか使っていないように思うので、さらなる活用を考えています」(小熊氏)

(マイナビニュース広告企画:提供 アプレッソ)

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