東急ハンズ全店舗の全スタッフに1人1台のiPod Touchを配布
昨年の秋にリリースした「東急ハンズアプリ」をはじめとしたアプリケーションとECサイト、それに店舗を連動したオムニチャネル戦略を積極的に推進していることで知られる東急ハンズ。同社は店舗でのスマートデバイス活用にも力を入れており、今年6月からは2,300台ものiPod Touchの導入を開始。9月には東急ハンズ全店舗での利用が始まっている。
2,300台のiPod Touchは、東急ハンズの店舗スタッフに1人1台配布され、店頭での顧客対応などに使われている。端末には商品コードを読み取るバーコードリーダーのジャケットが装着されており、業務システムから商品情報の検索や在庫状況の確認などが行えるようになっている。加えてGoogle翻訳やEvernote、乗換案内などといった無償のアプリを含め約20種類のアプリケーションがインストールされ、様々な接客シーンで役立っているという。
主なアプリケーションの機能は、翻訳、メッセージ、配送状況確認、スキャン・メモ、単位換算、内線通話など。他にも、店舗スタッフが直接情報を発信するためのTwitterアプリや、外国人観光客の多い京都市内の店舗向けの京都バスアプリなど盛りだくさんだ。
東急ハンズ 執行役員 オムニチャネル推進部長 兼 ハンズラボ 代表取締役社長の長谷川秀樹氏は言う。「どのアプリケーションも、店舗スタッフにアンケートをとり、ニーズの高かったものをいれています。例えばスキャン・メモアプリは、ちょっとメモしておいて後で確認したい時などに便利だと好評です。スタッフは店内を動きまわっているので、紙を手にしたままうろうろするわけにはいきませんからね」
長谷川氏は、オムニチャネル戦略をはじめ東急ハンズのIT戦略全般をリードしており、2013年には“業務のプロがシステムをつくる”というポリシーのもと、東急グループ内外のシステム構築を支援するハンズラボを設立している。
東急ハンズでは独自開発アプリ、App Store アプリなど、20種類以上のアプリを活用 |
「多様なアプリ」と「低コスト」がデバイス選定の決め手に
以前より東急ハンズでは、法人用のタブレット端末を店舗で使用していたが、大きく2つの問題を抱えていた。まず1つ目が、アプリケーションの制限である。例えば、店舗内での問い合わせとして非常に多いのが、あらかじめネットで見つけた商品が店頭にあるかどうかという確認だ。その際に顧客と一緒にネットで確認しようにも、法人向け端末に搭載されているブラウザは、Webサイトを正確に表示できなかったり、表示速度が遅かったりと、とても満足いくものではなかったのである。
「お客様の端末から見ることのできる情報と、店舗スタッフが見られる情報との間に格差が開いていました」(長谷川氏)
また、法人向け端末では利用できるアプリケーションも大幅に限られていた。例えば外国人観光客の来店が増えていることから、スタッフからは、そうした顧客とのコミュニケーションを円滑に行うために翻訳アプリケーションを求める声が大きかった。しかし東急ハンズでは従業員が個人のスマートデバイスを持ち込むことを禁止しているため、無償のコンシューマー向けアプリを使用したくても店頭で使うことができなかったのだ。
長谷川氏は言う。「今やコンシューマー・アプリの方が高機能でコストも低いというケースは珍しくありません。翻訳アプリだけでなく、例えばコスメアプリは、コスメ担当者がお客様と会話するのにとても役立っています。お客様とのコミュニケーション促進のために、スマートフォン用のアプリケーションをどんどん使っていく時代になっているのだと強く感じています」
そしてもう1つの問題が、コストだった。業務向け端末の価格は1台当たり約10万円。ITシステムの自社開発を積極的に進めることで年々ITコストを低減している同社にとっては、無視できないものであった。
こうした背景から、ハンズラボでは新たなスマートデバイス導入の検討を開始。最終的に、「低コストで高パフォーマンス」、「スマートフォン向けのアプリケーションをそのまま利用できる」などの点が決め手となり、iPod Touchを導入することとなったのである。
Appleの法人向け最新サービスをフル活用したモバイル管理を実現
約2,300台にも及ぶiPod Touchを各店舗へと展開するにあたっては、Appleの「Device Enrollment Program」と「Volume Purchase Program」と、アイキューブドシステムズのMDMサービス「CLOMO MDM」を活用している。
同社のITエンジニア、黒岩裕輔氏はこう話す。「Appleの法人向けサービスに素早く対応していること、豊富なiOS管理ノウハウをサポートを通じて提供してくれることを評価してCLOMO MDMを導入しました。例えば、CLOMO MDMであれば、Apple社のDevice Enrollment Programに対応したキッティングを行えます。本サービスを利用することで、従業員の誤操作などでMDM管理から外れてしまう事態を確実に防いでいます。さらに、Apple社のVolume Purchase Programに対応したCLOMO MDMなら、アプリケーションの強制インストールも遠隔で行えます。今では、2つの機能を組み合わせて利用することで、突然、社員の入社・異動などがあってもすぐにiPodを渡せるようになっており、とても助かっています。CLOMO MDMとDEPがなかったら、デバイスの準備作業に5~10倍の時間はかかっていると思います」
また、セキュリティ面についても十分な配慮がなされている。もともと、東急ハンズ店舗内のWi-Fiに接続しないと業務データを閲覧できないようにしているため、店外に端末が持ちだされたとしても業務データを閲覧できない。加えて、店外のWi-Fiに接続された場合には、CLOMO MDMの機能によって、リモートワイプや端末の調査などが実施できるようになっているのだ。さらに、盗難・紛失にあった端末が初期化されて再利用されるリスクも想定し、「端末の初期化」や「PCへの接続」なども制限しているため、拾得者が悪用できないようになっている。
今後、ハンズラボでは、iPadを利用したPOSレジの導入など、店舗でのスマートデバイス活用にさらに注力していく構えだ。
「アプリケーションについても、お客様のニーズに応じられるよう、無料のアプリケーションと当社の技術やノウハウを生かした自社開発アプリケーションを使い分けながら拡充を進めていきます。私はこれからの時代は、お客様が見られる情報と店員が見られる情報は同じになっていくと見ています。例えば、商品が棚に置いてあるかどうかお客様自身がチェックして、店員に指示を出すといったようなことも普通になっていくのかもしれません。そうなると、お客様もまた、店を一緒につくるある意味当事者になりますよね。少し突飛かもしれないですが、これからの我々のビジネスはそれぐらい大きく変わっていく可能性を秘めているのだと、強く認識しています」(長谷川氏)
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