施行開始が10月5日に迫ったマイナンバー制度。この段階で一度、住民票に記載されている住民に個人番号の通知などが行われ、そして2016年1月1日には、いよいよマイナンバーの利用が開始となる。つまり、企業としては遅くとも9月中までにはマイナンバー制度対応の体制を整えておいたほうがよいだろう。今回は全2ページに渡り、1ページ目はマイナンバー制度の基礎知識、2ページ目では企業側のマイナンバー対策について、ヒューマンテクノロジーズ チャネル開発部の高尾氏に話を伺い、マイナンバー制度による企業がするべき対策についてお伝えする。

今回話を伺った、株式会社ヒューマンテクノロジーズ チャネル開発部 高尾氏。その内容は2ページ目にて詳しくお伝えする

どこまで関係ある?企業とマイナンバー

ここで念のため、マイナンバー制度についておさらいしておこう。まず、そもそも「マイナンバー」とは、「国民一人ひとりが持つ12桁の個人番号」のことだ。そしてこのマイナンバーの利用範囲は、今のところ社会保障と税、災害対策の分野に限定されている。これらの手続き以外での利用は禁止されており、またこれらの手続きに必要な場合を除いて、企業が従業員や顧客などにマイナンバーの提供を求めたり、マイナンバーを含む個人情報を収集し、保管したりすることも禁止している。このように、マイナンバーは使える範囲が限られているという点を、ぜひ知っておいて欲しい。

そしてマイナンバー制度の最大の狙いは、利便性の向上にある。これまで社会保障と税、災害対策の分野に関わる行政機関では、国民一人ひとりの識別はそれぞれ独自に行われていた。そのためどうしても縦割り行政の弊害として、手続きに時間や手間を要しがちだった。それをマイナンバー制度によって特定の個人を識別する仕組みを一本化することで、各行政機関での手続きがスムーズとなり、その結果、国民の利便性が向上することを目指しているのである。

このマイナンバーを扱うことのできる組織は、大きく「個人番号利用事務実施者」と「個人番号関係事務実施者」の2つに分かれているのだが、このうち前者は主に行政機関であり、後者が主に民間企業となる。なので、企業は個人番号利用事務実施者として、個人番号利用事務に関して行われる他人のマイナンバーを利用して行う事務を、番号法はじめ法令・条例の規定に従って実施しなければならない。

どういった事務がこの個人番号利用事務に該当するかが気になるところだ。主なところでは、源泉徴収、住民税徴収、社会保険料の支払い、法定調書の準備などが挙げられる。つまり、企業の規模や業種に関係なく、原則としてすべての企業が、社会保障や税等の手続きで、従業員などのマイナンバーを取り扱うことになるのだ。

企業がマイナンバーを取り扱う際には、個人情報の保護措置を講じる必要があるという点も忘れてはならない。個人情報保護法では中小企業のような小規模の事業者は対象外とされていたが、番号法ではマイナンバーは特定個人情報とされ、その取り扱いには利用制限や安全管理措置、提供制限などの保護措置が求められているのである。そしてもし、保護措置が不十分でマイナンバーの漏えいや悪用などが発生してしまった場合には、番号法で定められた罰則をはじめとして、企業は大きなダメージを被ることになるだろう。