学校法人荒畑学園 なおび幼稚園 園内の様子

学校法人荒畑学園 なおび幼稚園(東京都小平市)は、「生活と遊び」を教育方針に1963年に創設された歴史のある幼稚園だ。同園では、現状のカリキュラムに加え昨年4月より選択授業として英語クラスを導入し、児童の更なるコミュニケーション力向上に注力している。そこでは「幼稚園クラス」と、「小学生クラス」の2クラスが用意されており、それぞれ週3日、16:10~17:00と17:10~18:00の時間帯に分かれて実施されている。

またなおび幼稚園では、英語クラスに通う児童の登園と降園を管理するために、小学生クラスを対象に今年4月にiPadを導入。本稿では、このiPadを利用した登降園管理を支えるFileMakerのソリューションに着目し、なおび幼稚園が抱えていた課題やその解決策、それによって得られるメリットなどを紹介する。

学校法人荒畑学園 なおび幼稚園 副園長 荒畑光世氏

保護者の安心と児童の意識向上が得られるソリューション

このiPadソリューションの主な目的は、児童の登園と降園を記録し、それぞれのタイミングで保護者に所在確認のメールを送信することだ。

副園長の荒畑光世氏は「小学校ではICカードなどを使って登下校の記録が保護者にメール送信されるのは当たり前になっています。そのため、当園の英語クラスでも2014年度の開設当初から登園時と降園時にメールを送信していました」と背景を語る。

このソリューションでは、児童自身がiPadでFileMaker Goアプリを操作して登園と降園を記録するようになっている。

(1)登園時には「はじめる」、降園時には「おわる」をタップ

(2)3桁の個人IDをタップ

(3)自分の氏名が表示されたことを確認して「OK」をタップ

(4)さらに最終確認をして「OK」をタップ。自分の氏名をきちんと確認した上で記録するように、あえて「OK」をタップする確認画面を2回表示している

手慣れた様子で素早く画面上のボタンをタップして登園や降園の記録をしていく。1人あたり5秒もかからないほどだ

園長の神保佳世子氏によると、このソリューションは保護者の安心のためだけではなく、児童にも良い影響を及ぼしているそうだ。

学校法人荒畑学園 なおび幼稚園 園長 神保佳世子氏

「はじめから、子供たちが自分で操作する仕組みにしたいと考えていました。自分でiPadを操作して登園と降園を記録することが、気持ちの切り替えやモチベーションの向上につながっています。登園を記録したら、これからクラスが始まるという気持ちになります。降園を記録したら保護者にメールが送られるので、まっすぐ安全に帰ろうとします。保護者に送られるメールには時刻が正確に記載されていますから、いつもより帰宅に時間がかかった日などは親子間での安全の確認やコミュニケーションにも役立っているようです」(神保氏)

ちなみに、画面に表示されている「Sui」は、このソリューションの名称。前理事長の荒畑スイ氏の名前に由来するもので、子どもの教育に熱心だった前理事長が見守っているような安心感と愛着があるという。

スタッフの負担軽減を、短期間・低コストで実現

児童がiPadで記録を登録すると、コンピュータ上のFileMaker Proの画面にはオレンジ色のボタンが表示される。スタッフは画面を見て児童の状況を知り、さらに児童本人を目視で確認した上で、ボタンをクリックして保護者にメールを送信する。

「子供たちの安全が第一ですから、メール送信を自動化するよりも、一人ひとりの顔を確認した上で送信しています」(荒畑氏)

スタッフはFileMaker Proの画面で登園の状況を確認したり、メールを送信したりする

英語クラスの開設1年目である2014年度は、小学生クラスに24名が通っていた。出欠は目視で確認し、手書きで記録していたという。それを後からExcelのシートに入力し、保護者へのメールは手作業で送信していた。

「当時は、道路や建物の入口にスタッフがずっと待機して出席をチェックしていました。保護者へのメールは前もって用意しておき、登園と降園を確認した上で送信していましたが、間違いがあってはいけないのでとても気を遣い、時間もかかりました。これではいけないと思い、システム化を検討したのです」(荒畑氏)

こうした背景を受け、コンピュータや事務機器の納入、保守などで以前からつながりのあった開発会社のRADIX・CGがFileMakerで構築するソリューションを提案。園内にはFileMaker Proを使うコンピュータ1台と、児童が操作するiPadを2台置き、同社のクラウドサーバ上で稼働するFileMaker Serverにネットワーク接続してソリューションを使用するというシステム構成だ。iPad用にネイティブアプリを開発する必要はなく、FileMaker Serverにアクセスするために無料アプリFieMaker Goをインストールしておくだけでよい。

RADIX・CG株式会社 事業企画室 部長 須永達也氏

同社の事業企画室部長の須永達也氏は、「ソリューション導入の決定が2015年3月上旬で4月の新学期には稼働開始と、短期間での導入でした。集計フィールドの追加など、導入後に園からフィードバックをいただいて改良した箇所もあります。こうした高速開発や稼働後の更新が容易な点は、FileMakerプラットフォームならではですね」と語る。

荒畑氏は「出欠の確認や記録、メール送信も、とても作業効率が良くなりました。保護者から数日前の出欠に関する問い合わせがあっても、すぐに答えられます。このシステムがあることで保護者の信頼を得られましたね。保護者の中には、これが当園の英語クラスに通うことを決める要因のひとつとなった方もいます。さらに、同じシステムを使って英語クラスの講師5名の出勤状況も記録しているので、毎月の給与計算など事務処理も格段に速くなりました。こうしたことが低コストで実現できて、費用対効果の面でもたいへん満足しています」と言う。

FileMakerソリューションの導入は、児童、保護者、園のいずれにも、大きなメリットをもたらし、児童の笑顔や保護者の安心、なおび幼稚園の業務効率改善に一役かっている。

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