IT機器の保守サービスに変革の波が押し寄せている。これまで、サーバ/ネットワーク機器を導入した企業が保守サービスを受けようとすると、「購入元ベンダーと契約する」という選択肢しか残されていなかった。しかし、最近はそうした状況も変わり始め、「第三者保守事業者」による独自の保守サポートが注目を浴びつつあるのである。本稿では、リユース機器を扱い独自の価値を提供するデータライブにフォーカスをあて、複数回にかけてその技術力を解説していきたい。第1回で登場するのは、データライブ代表取締役社長 山田和人氏だ。

EOSL保守のパイオニア データライブの総合力に迫る

適切なメンテナンスで本来の寿命をまっとうさせる

ハードウェア機器の保守には、ある"常識"がある。それは、「メーカー保守は通常5年で、5年を超えると故障率が跳ね上がる。だから、本番環境で稼働する機器などをメーカー保守を超えてまで利用することは避けるべき」というものだ。

だが最近、こうした常識は必ずしも正しくないということがわかってきた。実際に運用してみたところ、5年を超えても、かなりの機器が正常に動作することが統計的にわかってきたのだ。

データライブ 代表取締役社長
山田和人氏

メーカー保守切れ(EOSL/EOL)製品に対する保守サービスを提供しているデータライブの山田和人社長は、「きちんとしたメンテナンスを行えば、5年を超えても故障率はほとんど変わりません。中には15年以上にわたって動き続けるものもあります。お客様の4,000台を超える機器を複数年に渡ってサポートして来たことで、それをデータとして裏付けることができました」と話す。

データライブが行っている「EOSL/EOL保守サービス」は、メーカー保守が終了した製品を、メーカーに代わって保守するというサービスだ。故障しやすい部品をストックしておき、故障が発生したらすみやかに交換する。顧客サイトでのオンサイト保守も行う。基本的にはメーカー保守と同様のサービスを提供するものだ。

※編集部注
EOSL(End Of Service Life)とは、メーカーなどが過去に販売した製品に対するアフターサービスや保守期間を終えることを指す。
この期間を越えると、部品交換やバージョンアップなどのサービスは保証されない。

ビジネス環境が激しく変わる昨今では、システムのリプレースが計画通りに行われないことも多い。5年の間に新規ビジネスが急速に立ち上がり、企業の業容ががらりと変わることもある。一方で、事業の統廃合が進み、企業そのものが統合されるケースもある。そうしたビジネスの変化に合わせるように、計画外のシステムの変更が起こり、ハードウェア保守の"空白期間"ができるのだ。たとえば、「2年後にシステムを全面リプレースする計画があり、それまでは既存のハードウェアを維持したいが、メーカー保守は1年後に切れる」といった状況だ。

データライブは、空白期間に対して「EOSL/EOL保守サービス」を提供し、システム寿命を延伸する。こうしたビジネスを長く続けるなかで、ハードウェア保守の常識が実はかなり違っていることがわかったのだ。

「ポイントはIT機器に対する適切なメンテナンスです。故障しやすいのはHDDやファンの軸など駆動部分です。そうした部位を中心に見て、故障した場合はすみやかに取り替える。そうすると、IT機器は、本来システムが担うべき寿命をまっとうするまで動き続けるのです」(山田氏)

データライブのサービスを紹介するパンフレット

顧客ニーズに応えるために保守サービスを立ち上げ

データライブの創業は2003年12月だ。元々はシステム開発からのスタートだったが、顧客からハードの調達も面倒を見てくれないかと相談を受け、中古PCの調達を始めるようになった。そこで、調達のためにリース会社などに仕入れに出向くと、リースアップしたサーバなどが大量に廃棄されている現場を目にした。

インフラエンジニアとしてキャリアを積んでいた山田氏は、廃棄されるサーバを見て、「これまだまだ動くんじゃないか」と感じたという。

「買い取りを提案して、PCと平行してサーバの取り扱いを始めました。すると、それなりに売れることがわかりました。中古サーバを扱う業者もそれほど多くなかったこともあり、全国から問い合わせが来るようになりました」(山田氏)

とはいえ、当初は、顧客の求めに応じるため細々と仕入れを行う状況で、その時点では、中古サーバ市場がどれほどの広がりがあるのかまでははっきりわからなかったという。転機になったのは、米国から来た問い合わせだ。「Webサイトを見たが、特定の中古サーバを大量に買いたい、在庫はあるか?」という内容だったという。

興味を持った山田氏が詳しく話を聞くと、欧米には、サーバのセカンドマーケット(中古やリユース品市場)があり、セカンドマーケットから機器を調達する企業も多いと知る。そして、「これは日本でもビジネスになる」と直感した山田氏は、すぐにやるべきことを整理したという。

東京都文京区本郷にあるデータライブ本社

「国内にはマーケットがない状態で、これからの大きな伸びが期待できました。その際のポイントは2点です。1つは保守用部品へのニーズです。メーカー保守が切れた場合に備えて、予備の部品をあらかじめ買っておこうという企業がありました。もう1つは、用途が検証環境や開発環境に限られていたことです。本番では使われていないため、今後は欧米のように本番でも利用されるようになれば大きな市場になると思いました」(山田氏)

同社はまず、部品を迅速に調達できるように、欧米の代表的なメーカーが加盟する団体に参加、グローバル調達網を整備した。ただ、爆発的な伸びを生み出すには企業が抱えている課題に応えていく必要がある。そこで、2つのポイントをさらに精査した。その結果、予備の部品があっても機器を新品に入れ替える企業があるのは、保守サービスがないからだとわかったという。また、本番環境で使われないのも同様に保守サービスがないことが理由だと判明した。こうした気づきが、現在の「EOSL/EOL保守サービス」の立ち上げにつながっていったのだ。

誰もやりたがらないことにあえて取り組む

山田氏は「ニーズありきのサービス立ち上げでしたから、具体的なビジョンを最初から持っていたかと言われると、かなりあやしいです」と、苦笑しながら当時を振り返る。国内で前例がほとんどなかっただけに、苦労も相当なものだったようだ。

まず、技術がなかった。当然のことながらメーカー保守は、メーカーの機器に通じた専門家が行うものだ。中古サーバを多数取り扱ってきた実績があるため、ハードウェアに詳しい人材は社内にたくさんいるが、製品の検査と保守では求められる技術が違う。障害を切り分けたり、交換修理をする技術を一から身につけていく必要があったのだ。

また、地域のフィールドパートナーをどう開拓するかも課題だった。保守は、部品を納品して終わりではない。故障の原因を特定したり、部品を交換したりするエンジニアが必ず必要になる。また、メーカーとの関係から、取り扱い商品が限られるケースも多いため、メーカーの垣根を越えて機器の保守ができる人材を確保しなければならない。この課題に対しては、自分たちで学習した技術を供与しながら、地道に拡大させていったという。

3つめの課題は、ロジスティクスだ。本番環境での利用も想定すると、部品到着のわずかな遅れがビジネスにクリティカルな影響を与えかねない。20~30分での緊急出荷にも対応して、いちはやく部品を届ける仕組み作りが必要だった。

山田氏は「調達網を築いて技術を磨き、万が一に備えて迅速に対応できる仕組みを作ることや、いかにローコストオペレーションを実現できるかがビジネスのカギです。そう考えると、あまり"おいしいビジネス"ではないんです。誰もやりたがらないことにあえて突き進んでしまいました」と話す。

「世界中のIT資源を最適化しよう」

ただ、調達した機器が役割をまっとうするのを見たときには、やりがいを感じるものがあるという。山田氏は、過去の体験を例に、次のように語った。

「先週までデンマークにあった機器が、そこで廃棄されずに日本に渡り、弊社のセンターで品質チェックを受けて、栃木のデータセンターに収められました。そのとき技術スタッフに『デンマークから来た部品、まったく問題ないですね』と言われましたが、部品の1つ1つが世界の国を越えて、価値を生み出しているという実感が得られました。保守サービス冥利に尽きますね」(山田氏)

同社が現在掲げるコーポレートメッセージは「世界中のIT資源を最適化しよう」だ。山田氏によると、ITには新技術を生み出して世の中を変えるという側面があり、イノベーションはその最たるものだ。だが一方で、そうして作り出したものを長く使う、ときには作り過ぎてムダが生じないようにする取り組みも必要になる。

「持続可能性を追求するには、新しいものを一生懸命作るだけではなく、作ったものを維持して、最適化することが大切です。そうした最適化の仕組みは、気合と根性、あるいは、もったいないの精神だけでは実現できないと思います。その仕組みを事業としてきちんと作り上げる。IT資産の最適化にはそんな思いを込めています」(山田氏)

国内のみでなく世界中の様々な場所から集められる機器(写真左)。それらは入念な検証を経て、「IT資産の最適化」というテーマのもと、新たなシステムに組み込まれていく(写真右)

保守サービスを軸に「IT資産の最適化」に取り組むデータライブ。保守サービスを正式に開始したのは2010年であり、まだ4年の実績に過ぎない。山田社長もこれからが本番だと気を引き締める。

では、そもそも同社の保守サービスとはどんなもので、どういった体制のもとで提供されているのか。次回は、そのあたりに踏み込んでいきたい。

EOSL保守のパイオニア データライブの総合力に迫る

(マイナビニュース 広告企画)

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