ガンダムファンなら、だれもがあこがれる聖地がある。それが、静岡のバンダイホビーセンター。開発・設計から製造まで、ガンプラ作りのほとんどがこの工場で一貫して行われている。

ガンダムのアニメーションの世界観がすみずみにまで反映されていて、ファンでなくとも一度は訪れたい魅力的な場所だ。それだけでなく、省エネルギーやCO2削減、そして徹底したリサイクルと、工場としても最先端の取り組みを行っているのだ。

しかし、ホビーセンターにはいつでも遊びに行けるわけではない。毎月1~2回の限られた日にしか見学はできないのだ。応募者多数の場合は抽選となり、常に50~60倍という高倍率になっている。夏休みや冬休みは80倍を超えることもあるという。まさに、あこがれのガンダムスポットなのだ。

今回は、バンダイホビーセンターの全貌をお伝えするだけでなく、先日発売されたばかりのMG(マスターグレード) Ver.3.0の設計に携わった若き設計マンへのインタビューも合わせて楽しんでいただきたい。

バンダイホビーセンターの入口には、ジオンマークとアナハイムエレクトロニクスのロゴが! 各所にガンダムの世界観が再現されている

センターの鈴木さんから、ガンプラのすごさを聞かせてもらった

ホビーセンターを案内してくれた鈴木智子さんは静岡出身。入社6年目。「入社しての第一印象は、工場っぽくなくて驚きました」

まずは、センターの鈴木さんから、ガンプラのすごさを聞かせてもらった。「ガンプラがすごいなんて、言われるまでもなくわかってますよ!」と思ったが…、あらためて話をうかがうと、「ガンプラってすごい!」と、素直な感動がよみがえってきた。

初代ガンプラは、ペンチでパーツを切り取ったり、接着剤で貼り付けたり、色も塗らないといけませんでした。でも、今は、そういうのは全部必要なくなっているんです。初心者でも簡単に楽しく作れるように進化を続けてきました。

にも関わらず、ずっと複雑で、リアリティのあるものになっています。パーツ数も6倍以上に増えています。初代ガンプラのパーツは30程度でした。今では同じ144分の1のRG(リアルグレード)で200パーツ程度になっています。同じ大きさにたくさんのパーツが詰まっているので、設計はずっと難しくなってるんですよ。

色の表現もリアリティが高まっています。白だけでも何種類も使い分けています。明るい白、暗い白、グレーっぽい白、茶色っぽい白など。今はどのガンプラも塗装しなくても、リアルな色を楽しんでいただけます。

ガンプラ初心者のマナちゃんも見学に参加してくれた。「今日はがんばります!」(c)創通・サンライズ

当ホビーセンターの特徴である、多色成形機の力なんです

――色のお話が出ましたが、今のガンプラは1枚のランナーに複数の色が並んでいます。あれはどうやって製造しているんですか?

まさに、当ホビーセンターの特徴である、多色成形機の力なんです。1枚の成形品、つまりプラモデルのランナー1枚に、同時に4色の素材を打つことができるんです。

――同時にということは、原料を入れ替えるとか、工程を4回に分けるとかは必要ないということですか?

多色成形機を使って、同時に4色もしくは異なる素材を打つことができる。人の手のように関節が動くパーツも多色成形機で量産できるのだ!

必要ありません。原料となるペレットという樹脂を4色分用意しておけば、後は多色成形機がしてくれます。さらに注目していただきたいのは、異なる色だけでなく、異なる素材も打つことができることです。

PG(パーフェクトグレード)のプラモデルのパーツを例にお話しましょう。これが手のパーツなんですが、ランナーから切り離すと、すでに完成していて、指が関節で曲がるんです。人の手みたいに、ちゃんと第一、二、三関節で曲がるんですよ。異なる素材を打つことで実現しているんです。

――そんなことができるなんて、すごいですね! どうして色や素材が混じり合わないんですか?

同じランナーに複数の色を使っても、決してにじんだりはしない! くっきりとした境い目に注目だ

金型に樹脂を流し込む穴がいくつか開いていまして、4種類の樹脂を金型に流すタイミングや圧力などの調整で、複雑な成形品を作ることができるんです。このランナーを見てください。赤と白の接点のところ、丸くなってますよね? 色が混ざったり、にじまず、きれいに成形できるのが特徴なんです。金型に秘密がありまして、あまり詳しくはお話しできないのですが…、色と色の境目に塀のようなものがあるんです。赤を先に入れたとします。次に白を入れるときに樹脂の圧力で塀が下りてくる、そんなイメージです。……続きを読む

「ガンダムってやっぱりカッコイイですね。ガンプラは初めてなんですけど、作りたくなっちゃった。教えてくれる人、いないかな?」