印刷物を発注するにはデータの準備だけでは不十分。紙や製本形態を決定し、さらには印刷のインクにどんな色を使うかまでを決めなければならない。印刷通販では印刷仕様を仕上がりを想像しながら、発注者自身が決めなければならないので、知らないことがあっては思い通りの結果が得られないからだ。そこで、ビギナーにはわかりにくい印刷以降の工程について、印刷通販サイト「アルプスPPS」に聞いてみた。第一回は、「紙の種類」と「網点」について紹介しよう。

印刷に使う代表的な紙といえば?

ようやく印刷物を発注する段階になって、最初に決めなければならない項目が「印刷に使用する紙」だ。「コート紙は表面が少しテカテカしている」といった程度の知識があっても、今の印刷通販にはさまざまな用紙の種類があり選ぶのが大変。紙の選び方によって印刷の発色も変わってくるから、どんな仕上がりにしたいのかを考えて、紙選びをする必要がある。

印刷通販で選べる紙の中でも代表的なものが、前述した「コート紙」、そして「マット紙」「上質紙」の3種類だ。もちろん、用紙の銘柄によって紙の白さが違ったり、質感に多少の違いがあったりと個性がある。この大別された3種類で何が違うかというと、答えは「発色性」である。すなわち、印刷の色の出具合だ。

最も発色性が高いのは「コート紙」である。コート紙は光沢感があり、インキの発色性も良い。続いて「マット紙」は光沢感を抑えたツヤ消し加工で、写真に落ち着きが出る。そして「上質紙」はインキが染みこみやすく色の再現性は低いが、用紙代は最も安い。

用紙に何を選ぶかによって仕上がり具合は変わるし、印刷料金そのものも大きく変わる。ここで、前述した代表的な3種類の用紙の主な用途を紹介しておこう。

用紙の種類 主な用途
コート紙 カラー印刷向き。チラシやポスター、カタログ、パンフレットなど写真が多いものにピッタリ。写真をキレイに見せたい場合に向いている。
マット紙 落ち着いた雰囲気や柔らかさ、温かみを表現したいときにピッタリ。ウェディング関連やホテル、飲食関係の印刷物や会社案内などでの使用例が多い。
上質紙 単色印刷向き。コピー用紙やメモ帳、ノート、原稿用紙、伝票、申込用紙などでの使用例が多い。色再現性は低いが、紙の腰や断裂強度に優れ、不透明度(絵柄の裏抜け)も高い。

「網点が太る」ってどういう現象のこと?

印刷の色は網点の大きさによって濃淡を再現する。これは印刷の基本的な知識だが、たとえばAdobe Illustrator上でグレーを「K=50%」と指定したとしても、オフセット印刷ではそのままの網点%で再現されない場合がある。「そもそも印刷というのは水とインキのバランス、印刷時の圧、印刷環境の変化など、複雑な印刷条件の要素が絡み合って正確にデータ通りの網パーセントを表現するのが難しい」とアルプスPPS。網パーセントが正確に再現されない現象の代表例が「ドットゲイン」で、網点が太ることをいう。

アルプスPPSのコメントにもあるように、印刷工程は変動要素が多いことはもちろん、インキ壺からインキが流れ出してローラーからブランケット、紙に転写する仕組みなど、オフセット印刷機がどんなに自動化・デジタル化が進んでも、中身はアナログそのものだ。インキが版胴からブランケット胴に移り、そして用紙に転写される際に、インキの柔らかさや物理的な圧力によって網点が潰れてしまったり、着きが悪くなってしまうなどの現象が起きる。

アルプスPPSは「こうしたトラブルが起きることを予見して、さまざまなセンサーとデータ管理に基づいてドットゲイン値を修正、調整して、いかにデータ通りの数値で印刷物を仕上げるかが印刷のプロとしての真骨頂」と語る。同社ではデータ管理だけに留まらず、熟練の印刷オペレーターの感性も組み入れた印刷を行っているとのこと。安定した印刷を求めるなら、たとえ印刷通販とはいえ、こうした気遣いのある印刷会社を選びたいものだ。

ドットゲインの数値について

中間の50%の網点に対して何%の太り/細りがあるかで表示する。「15%のドットゲイン」といわれた場合は「50%の網点が65%に太っている」となる。測定方法は濃度計が主流で、網点濃度を網点面積率に換算して算出。その際、素抜けしたりガサツキのある形状不良の網点では「濃度が低い=ドットゲイン量が少ない」という誤判定を起こすため、正確なドットゲイン値が反映されない。また、紙質の違い(コート紙、マット紙、上質紙)では、印刷インキの着きや吸収量が異なるため、網点の再現性に差が出て、ドットゲイン値が変わってくる。

ドットゲインは、中間の50%の網点に対して何%の太り/細りがあるかで表示する。「15%のドットゲイン」は「50%の網点が65%に太っている」ということになる

[PR]提供: