11月4日のソフトバンクモバイル、11月8日のNTTドコモと今月は2社から2010年冬-2011年春モデルが発表された。両社共に重点製品としてリリースしたのはスマートフォン。しかもその中で目立っているのは海外メーカーの製品だ。

これまで日本の通信事業者の新製品発表会で主役だった日本メーカーでは唯一シャープががんばりを見せているだけで、他のラインナップは全てが海外勢という状況になっている。しかもパソコンではメジャーなDELLやこれまでモデムやエントリーモデルを発売していた中国のHuawei、ZTEなどもスマートフォンを投入。パソコンの世界でNECのPC-9801天下だった時代からDOS/Vマシンが大量に日本に上陸を開始した時代を思い起こされるほどの"異変"が起きている。

このなかでワンセグやおサイフケータイなど、日本には無くてはならないサービスを搭載しているのはシャープのモデルだけだ。だがiPhoneがそれらの機能を搭載していなかったにも関わらず日本国内で急激にシェアを増やしていることからわかるように、魅力ある端末やサービスが利用できれば他の機能は無くてもよい、と考える日本のユーザーも実は多い。またiPhoneと日本の携帯、と2つを持ちそれぞれのサービスを使い分けている利用者も多いようだ。

海外では携帯電話事業者やその国独自開発のモバイルサービスが進化しなかった分、スマートフォンへの移行はスムースに進んでいる。携帯電話同士でのメールのやり取りは海外ではSMSが主流であり、絵文字を使わないことから事業者や機種を乗り越えて世界中でやり取りが可能だ。パソコンからSMSを送るサービスも多くの国で提供されている。またコミュニケーションツールはFacebookやTwitter、情報共有はDropboxやEveronote、ビデオや写真はYouTubeやFlickrと、今では携帯電話で利用するサービスと言えばインターネットサービスそのものであり、通信事業者がサービスを独自に開発する必要すらなくなりつつある。

海外では安価なスマートフォンも増えてきた。通信事業者もイチオシはこれらの製品だ

日本でもスマートフォンへの移行を通信事業者が進めており、SPモードのようにこれまで日本の携帯電話でしか利用できなかったサービスが海外製スマートフォンでも利用できる時代になりつつある。日本の通信事業者と端末メーカーが共同で専用サービスを利用するための端末を開発していた時代から、端末を問わずにスマートフォンOS上で利用できる事業者専用サービスが今後も増えていくだろう。

これまで通信事業者と二人三脚で開発を行っていた日本のメーカーにとって、スマートフォンへの移行は技術的には容易かもしれない。だが快適なユーザーエクスペリエンスの提供、すなわちユーザーインターフェースの作りこみなどソフトウエア開発などは経験が必要になる。しかも日本メーカーはどうしてもおサイフやワンセグなど日本固有の技術を搭載することを求められてしまい、新製品開発へのリードタイムが海外メーカーよりも必要となってしまう。これまでの"高機能携帯電話"の開発よりも、競争はよりシビアなものになっていくだろう。

だが日本メーカーにとってスマートフォン時代の到来は、これまでは日本国内向けに専用端末を独自開発しなくてはならなかったしがらみから一気に開放されるチャンスでもある。高解像度ディスプレイや高画質カメラなど、日本の携帯電話で培った機能をスマートフォンに搭載できれば海外でも通用するハイエンド端末として人気商品にすることも夢でないだろう。すでに海外大手メーカーがスマートフォンでも一定の地位を築いている今だからこそ、世界に通用する"新興勢力"である日本メーカーのスマートフォンの登場に期待したい。