日本通信は3月23日、北米の通信事業者SprintとMVNO契約を締結したことを発表した。接続形態は自社交換網を持つレイヤー2で、これは同社が日本でNTTドコモと結んでいるものと同じ形態だ。今回の契約締結により、日本の居住者も今後北米で手軽にデータ通信を利用することが可能になろうとしている。

海外ローミングでのデータ通信は割高

現在日本通信が発売している「b-mobile3G」「b-mobile Doccica」は、どちらもNTTドコモの回線を利用して3Gデータ通信サービスを提供している。通常の携帯電話回線の契約とは違いプリペイドスタイルの販売方式のため購入も簡単だ。学生が固定契約不要で手軽に利用できるなど、同社のサービスは日本国内でのデータ通信利用者の拡大に大きく寄与している。

一方海外でデータ通信サービスを利用するにはまだまだ敷居が高い。日本の携帯電話をそのまま持ち出し国際ローミングを利用すれば現地でもネットアクセスが可能だが、ローミング料金は従量制のうえに高額だ。日本のiPhoneを海外で利用して、あとから数万円といった多額のローミング費用を請求されたケースも多いと聞く。日本でもようやく普段使っている携帯電話が海外で利用できるようになってきたが、ローミング料金はかなり高いのだ。

海外ではここ1~2年でプリペイドタイプの高速データ通信サービス「モバイルブロードバンド」が急速に普及しており、それを購入すれば滞在先でもデータ通信環境を手に入れることができる。国際ローミングではなく現地料金そのもののため金額も安価である。だが販売方法は国や通信事業者によって様々なので、あらかじめ料金や販売場所を調べておく必要がある。最近は空港で買えるところも増えてきているが、深夜や早朝に到着した場合は店が閉まっていて購入できないケースもあるだろう。

海外の割安なデータ通信環境を日本で簡単に入手する方法はないのだろうか? たとえばドイツテレコムの日本法人はドイツのT-Mibile、イギリスのT-Mobile UKの回線契約を日本で提供しているが、ドイツ向けのデータ通信定額プラン「Web'n' walk Connect Lプラン」も用意している。料金は2年契約で6,000円/月で定額利用できるので、ドイツに長期滞在する人にはうってつけのサービスだろう。また最近は海外向けのデータ通信キット(モデム+料金)をレンタルする会社も増えている。

日本でドイツとイギリスの回線契約を提供しているドイツテレコム日本法人のホームページ

海外のデータ通信環境も日本で入手できる時代に

一方、日本通信は今後各国の通信事業者とレイヤー2接続を進める予定で、これにより日本と同じ課金体系を海外にも展開する予定とのことだ。世界中どこにいても日本と同じ料金でデータ通信利用が出来るようになれば、自分がどこの国で使っているかを気にする必要もなくなる。海外出張の多いビジネスパーソンはもちろんのこと、たまに海外旅行に出かける人にもメリットは大きいだろう。

さて北米のモバイルブロード環境だが、日本通信と契約を結んだSprintが全米でサービスを提供している。Sprintはまた同社回線を利用してMVNO事業を行っていたVirgin Mobileを昨年買収。現在はVirginブランドでより安価なデータ通信サービスを提供している。費用はモデムの購入が99ドル、利用料金はコンビニなどで残高追加カード(バウチャー)を買って追加するだけと手軽だ。その料金も100MB/10ドルから1GB/60ドルまでと、利用料に応じて自由に追加できる。現時点で、北米でモバイルブロードバンドサービスを利用するならば、このVirginのものが手軽で便利なのだが、現地での購入の手間を考えるなら出発前に日本で入手できることに越したことはない。

Virginは「No Contract(プリペイド)」でモバイルブロードバンドサービスを提供中

日本通信の北米でのサービスが今後開始されれば、日本にいながらにして海外のデータ通信環境を手軽に入手できるわけだ。今後中国やヨーロッパなど、他国でのサービス拡大に大きく期待したい。