太陽電池を搭載した携帯電話が各社から少しずつ登場している。これまでは耐久性や供給電気能力などの関係から携帯電話への応用はなかなか進まなかったが、今年は製品の数も増える見込みだ。今後特定用途の端末には太陽電池搭載が標準化する可能性もありそうである。

Pumaが太陽電池搭載端末を発売

スポーツ用品メーカーであるPUMAは仏Sagemと提携して自社ブランドの携帯電話「PUMA Phone」を4月に発売する。ブランドケータイはPRADAとLG電子による「PRADA Phone」以降、各社からさまざまな製品が出ており、スポーツ関連でもSamsungとAdidasが「Adidas miCoach phone」も発売されている。Adidas miCoach phoneはランナー向けのソフトウェアが組み込まれているが、Puma Phoneも同様にアウトドア/スポーツユースに適した機能が多数搭載されている。そして最近のトレンドに合わせてフルタッチディスプレイを搭載。QVGAの解像度ながら大きなアイコン表示で操作性も悪くない。

スポーツとアウトドアに特化したPuma Phone

背面には太陽電池を搭載する

このPuma Phoneの最大の特徴は背面に太陽電池を搭載していることだ。電池が切れても端末を太陽に当てるだけで充電でき、運動中も電池切れの心配をする必要が無くなるというわけである。もちろんフル充電は無理だが、例えば緊急時に急いで電話したい場合なら10分程度の充電で数分の通話が可能だという。またこのPuma Phoneを腕に巻きつけておけば、ジョギングしながら太陽光を受けそのまま充電することも可能である。75分の充電で1時間以上の通話が可能など「ながら充電」を行えば家庭のコンセントからの充電も不要だ。アウトドアと太陽電池は実は相性のよい組み合わせなのである。

Puma Phoneは環境にも配慮した製品となっており、リサイクル素材を使ったエコパッケージが使われるほか、携帯電話の通話分数や音楽再生時間なども太陽電池によって何分利用したか、という表示がされるようになっている。太陽電池のテクノロジーの部分だけではなく、エコロジーにも配慮した製品であることをアピールしているわけだ。

アフリカでは必須の機能

韓国のSamsungからも太陽電池搭載携帯電話が発売されている。Samsungは地球に優しい「エコ」を前面に打ち出した「S7550 Blue Earth」に太陽電池を初めて搭載した。Puma Phone同様に環境に配慮した端末として販売中だ。HSDPA対応でフルタッチディスプレイ、各種メディアファイルの再生に対応するなど機能も豊富である。太陽電池搭載2機種目として投入された「E1107 Crest Solar」は、見た目はシンプルなストレート端末。機能も基本的なものに絞られており、価格も1万円以下と手ごろな値段だ。特に目立った機能も無いこのようなエントリーレベルの製品になぜ太陽電池が搭載されているのかと言えば、これは電力供給状況が不安定な新興国向けの製品であるからだ。

例えばアフリカでは「電気売り屋」と呼ばれる、発電機を持ち運んでその場で携帯電話の充電をさせる商売が実際にあるほどで、大都市部からちょっと離れれば家庭にコンセントが無いという環境も当たり前であるとのこと。それでもビジネスや交友のために、携帯電話を持つことは今や必須のものになっているのである。

アフリカ向けの太陽電池を利用した基地局のモデル。電力の無い地域がまだまだ広がっているわけだ

低価格ながら太陽電池を搭載するSamsung E1107

このような地域では低所得者が多いことから多機能な携帯電話やスマートフォンが売れる市場ではない。しかし通話とSMSができる「簡単で壊れない」そして「安い」携帯電話の需要は旺盛なのだ。だが携帯電話は充電しなくては利用できない製品だけに、どんなに価格が安くとも充電環境が不安定では売りにくい。Samsung E1107はこのような市場で、他社のエントリーモデルより若干価格は高いものの「いつでもどこでも日中であれば充電できる」製品として人気製品となるだろう。

Samsung Blue Earth。エコケータイに太陽電池は必須機能になるかもしれない

他にもLGからフルタッチ携帯の「GD510」や、日本で3事業者に太陽電池搭載端末を出しているシャープが中国向けに「SH6230C」を投入するなど、各メーカーから「太陽電池ケータイ」が続々と登場している。太陽電池は全ての製品に求められる機能ではないが、アウトドア用途や新興市場向け製品などに今後搭載する動きが広がっていくだろう。