Nokia、業績回復も今後が勝負 -急がれる「フルタッチ」端末の強化

携帯電話メーカー各社の2009年第4四半期の決算報告が出揃った中、ここのところ業績が思わしくなかった業界最大手のNokiaは明るい結果が出たようだ。だが同社を取り囲む状況は依然厳しく、スマートフォン分野での競争は今年も激しいものになるだろう。

販売台数は大幅に回復

Nokiaの2009年第4四半期決算によると、売り上げは前年同期比5%減少したものの利益は60%(同)の増加と、端末出荷台数増加に加え経費節減やリストラが功を奏した結果となった。同期の同社の端末販売台数は1億2,690万台となり、これは四半期ベースでは過去最高の2007年第4四半期に次ぐ数字だ。2008年後半のリーマンショック以降、今年第1四半期には1億台を割り込むほど販売台数は悪化していたが、その後は機種の絞込みや売れ筋の製品にリソースを集中しV字回復を果たした格好である。

2009年のNokiaの通算端末販売台数は4億3,180万台となり、マーケットシェアは38%と推測される。前年より約1.0%の減少となったものの、30%台半ばまで落ち込むことは避けられ昨年も堂々のシェア1位の座を確保している。また地域別では中東と中国で前年同期比30%強の伸び、アジアでも同15%の伸びとGSM/W-CDMA方式が主流のエリアでは好調をキープしている。北米市場では引き続き苦戦しているものの、次世代スマートフォンやノートPCの投入でブランドイメージを引き上げる戦略も取っているようだ。

ちなみに日本市場では2008年末に端末販売の中止(高級端末のVERTUは除く)、2009年末には研究開発部門の縮小と暗いニュースが続いた。今期業績回復の結果が出たということは、日本からの撤退はマイナスではなかったということになるだろうか。だが日本主体で開発された端末が世界的に大ヒットとなった例もあるだけに、「強いNokia」として完全復活した際は日本市場への端末販売再参入をぜひ検討してもらいたいものである。

フルタッチ端末の強化

Nokiaによるとコンバージドデバイス(スマートフォンとハイエンド多機能端末)分野の販売台数は2009年第4四半期で2,080万台。これは市場全体の5,240万台のうち40%となり、Nokiaは引き続きこの分野でもシェアはトップとのこと。ちなみに同分野でのNokiaの第3四半期のシェアは35%で、今期はこの分野の製品の販売台数も大幅に伸びた結果となっている。

このようにハイエンド端末分野でも安泰と見られる同社だが、その内訳を見てみるとスマートフォンラインナップのうちビジネス系端末のEseriesの販売台数は同期で610万台、マルチメディア系端末のNseriesは460万台となっている。一昨年同期の状況と比較するとEseriesが300万台強で今期は倍増したのに対し、Nseriesは500万台強で販売台数は約10%減少している。ビジネス系のスマートフォンは順調に伸びているにも関わらず、マルチメディア系端末は伸び悩んでいるのが実情であるわけだ。

この伸び悩んでいるNseriesのライバルは、ずばりiPhoneやAndroidスマートフォンである。どちらも大型のフルタッチディスプレイを搭載しインターネットの利用やマルチメディアユースに適した製品だ。もちろんiPhoneやAndroid端末はビジネスにも十分活用できる多機能デバイスであるし、NokiaのNseriesも最近の製品はプッシュメールサービスに対応するなどビジネス対応色を強くしている。とはいえ購入層の大半は完全な仕事用としてではなく、WebサービスやSNS、エンターテイメント系端末としてこれらの製品を選んでいると言えるだろう。

Nseriesの伸び悩みは今後Nokiaのアキレス腱となる可能性が高い。なぜなら多機能端末のトレンドはフルタッチ、インターネット利用へと動いており、スマートフォンだけではなく、多機能携帯電話にもその動きが進んでいるからだ。今や学生向けの割安な端末にもフルタッチ製品が登場しているほどだが、Nokiaにはその分野をカバーする製品が無い。

もちろんすべての消費者がフルタッチ端末を求めているわけではないが、時代の流れは確実にフルタッチへと動いている。スマートフォンの販売台数が数の上で優勢であったとしても、製品のラインナップがトレンドに乗り遅れているようでは販売台数の伸びも期待できない。2010年のNokiaはiPhoneなどに真っ向から勝負できるレベルのスマートフォンを投入する必要がある一方、SamsungやLGが多数製品を投入している安価なフルタッチ端末を揃えることも急務であろう。