デジタルカメラメーカーの台湾Altekが1200万画素カメラを搭載した携帯電話「T8680」を発表した。携帯電話のカメラの高画質化が進む中、本家であるデジカメメーカーが携帯電話市場に参入を開始する動きが今後進むのだろうか?

デジカメメーカーが携帯電話を発売

最近の携帯電話に搭載されるデジタルカメラは高画質、高機能化が進んでおり、コンパクトデジカメに匹敵する性能を有した製品も多い。カメラ機能を売りにした製品もSony Ericssonのサイバーショットケータイなど種類が増えつつある。今では日常的なスナップ写真程度であれば携帯電話で済ます人がほとんどだろう。

このように携帯電話のデジカメ化が進む中、逆転の発想の端末がいよいよ登場する。台湾のAltekが発表したT8680はデジカメ専業メーカーがデジカメに携帯電話を内蔵した「ケータイ内蔵デジカメ」で、同社初の携帯電話製品でもある。T8680は中国向けの製品であり、価格は3000人民元前後(約4万1000円)。搭載されている機能を考えると高くない値段だ。

Altekの携帯電話内蔵デジカメ「T8680」。携帯電話というよりコンパクトデジカメそのもののスタイル

Altekは急成長中のデジタルカメラメーカーで、2008年の年間生産台数は1,000万台を突破し世界シェア5位以内に食い込んだ。通常、Altekの名前を市場で見かけることはない。これは同社がOEMメーカーだからである。同社は、大手メーカー向けにも多数のデジカメを供給している、世界シェア1位のOEMメーカーだ。OEMメーカーとしても十分成功している同社がここに来て初の自社ブランド製品を出す理由はどこにあるのだろうか?

中国ではここ数年、携帯電話の生産台数が飛躍的に伸びている。携帯電話の開発には一般的に莫大な時間とコストがかかるものだが、台湾MediaTekが開発したチップセットと基本プラットフォームの組み合わせ「MTKプラットフォーム」を利用すれば、基本機能の開発を行うことなく携帯電話の製造が可能になる。外装とUI設計を行い、市販のパーツを購入して組み立てれば最新機能を搭載した携帯電話が製造できるのだ。このようにMTKプラットフォームの登場以降、携帯電話は特殊なハイテク製品ではなく町工場レベルでも製造できる汎用製品になり、Altekのような異業種からの参入の敷居も低くなった。

最近のデジカメは無線LANを内蔵することで、撮影した写真をインターネットへ直接アップロードできる機能を搭載した製品も増えているものの、どこのメーカーも主力製品にはなっていない。今やデジカメもコスト競争が厳しく、余計な機能は載せられないのが実情だろう。恐らくAltekが携帯電話内蔵デジカメを製造したところで、既存のデジカメメーカーには需要がなかったのだろう。現在中国は、携帯電話もデジカメも需要が旺盛であり、OEM供給できなければ自社ブランドで市場参入しても十分商機はあるものと考えられる。

デジカメの使い勝手が向上。将来はFlickrケータイも出るか?

T8680の主なスペックは1200万画素CCDカメラ、キセノンフラッシュ、光学3倍ズーム、ISO 3200、TV出力などで、コンパクトデジカメとしての機能も高い。携帯電話部分はGSM 3バンドに対応、タッチ操作対応の3インチWQVGA(400×240ピクセル)ディスプレイ、Bluetooth内蔵など。ボディーなどの仕上げもデジカメのようにしっかりしたものになっているようだ。

外観上の大きな特徴は、やはりコンパクトデジカメと同等のデザインを採用していることだろう。シャッターボタンの位置もカメラとしての利用が考慮されているなど、カメラメーカーならではの作りになっている。1200万画素の高画質カメラで撮影した写真をその場で送信することができるのも大きな魅力だ。内蔵ソフトの作りこみは不明だが、タッチパネルを利用して撮影した写真への文字の書き込みやサイズ変更などの編集機能が備わっていれば面白そうである。

今やデジカメで撮影した写真はパソコン内で管理・閲覧するに留まらず、オンラインアルバムサービスにアップロードして世界中で共有する時代になっている。携帯電話の内蔵カメラも撮影後のデータの直接アップロードに対応するなど、Webサービスとの連携が強化されつつある。一方デジタルカメラはまだまだWebとの連携が弱く、特にデータの転送に関してはまだまだPC経由が主流だ。

将来、”写真=オンラインで共有”があたりまえになると、デジカメメーカーは自社製品へWi-Fiや携帯電話機能を搭載する動きが加速化しそうである。またデジカメに携帯電話が搭載されることで「高画質カメラケータイ」に飽き足らない層が、携帯電話搭載デジカメへ乗り換えることも考えられるだろう。そうなると携帯メーカーとデジカメメーカーが内蔵カメラで火花を散らす時代も早いうちにやってくることになりそうである。

またOEMメーカーが小回りを利かせて「ブランドデジカメケータイ」を製造することも期待できる。最近ではSkype携帯やFacebook携帯のような「オンラインサービス専用端末」も発売されている。Webアルバムサービス大手のFlickrが、ワンタッチで写真を同社サービスにアップロードできる「Flickrケータイ」を売り出す、といった面白い動きも今後あるかもしれない。

Facebook利用に特化したINQ。将来はデジカメ強化のFlickr携帯が出てくるかもしれない