ソフトバンクは、カシオ計算機より端末の供給を受けることで合意した。年内にもカシオ計算機製の携帯電話が発売される見込みだ。カシオはこれまでau向けにCDMA端末を供給しており、W-CDMA方式に対応した端末の投入はこれが初となる。同社のCDMA端末は、すでに海外の一部市場で発売されているが、今後はW-CDMA端末も海外市場で発売される可能性があるかもしれない。

海外でも発売されているカシオの携帯

日本メーカーの海外進出は苦戦が続いているが、アメリカや韓国のCDMA市場向けには数社が定期的に端末をリリースしている。カシオもそのうちの1社で、G'zOneシリーズの海外版などを投入している。G'zOneのデザインは特徴的で、海外でも他社が手がけていない、防水・タフネス志向の端末だ。そのため、”カシオならでは”というメーカーの特色を海外でも十分に発揮できている製品だろう。

また韓国ではLG Telecomが、今年4月から開始したEV-DO Rev.A対応端末として、日本のW53CAをベースにした「canU801Ex」をリリースしている。こちらは高解像度の液晶ディスプレイやEXILIMブランドの高解像度カメラを売りにした、”高機能”端末として発売している。

韓国の最新モデルcanU801Exは高機能端末として販売されている

このようにカシオの携帯電話は、海外でも少ない市場ながら着々と製品数を増やしている。しかし、市場に投入できるのはCDMA方式に対応した端末のみである。CDMA方式であるがゆえに、通信事業者に納入して販売してもらう「日本式・キャリア主導ビジネス」を採用する国以外へ販路を広げられないのが実情だろう。

日本、韓国、アメリカの携帯電話販売方式は、海外では実は主流ではない。事実上の世界標準であるGSM方式を採用する国の大半は、メーカーと事業者の関係が「対等」「相互に協力」であり、日本のように事業者が一括購入して販売する例は少ない。これはGSMの上位規格であるW-CDMA方式を採用した事業者の多くも同様だ。

W-CDMA対応の「G-SHOCKケータイ」が発売される可能性

カシオがソフトバンク向けにW-CDMA方式の端末を投入するということは、通信方式だけを見れば、世界中で普及が進むW-CDMA方式への対応事業者へ端末を販売することも可能になるだろう。

そして前述したように、W-CDMA(およびGSM)方式の国では、端末は事業者に販売してもらう必要はない。WAP(Wireless Application Protocol)などのコンテンツ規格は、基本的に共通仕様であるため、メーカー自ら端末を販売することも可能なわけだ。

すなわちNokiaの携帯を買いたければNokiaストアへ行けばよく、事業者の販売店で購入する必要性は無いということだ。なお、事業者経由で買えば、契約をすることで、割引価格で購入することができる。

もちろん日本メーカーが、いきなり自社ブランドで端末を海外に発売することは難しいだろう。現在海外でAQUOSケータイを販売しているシャープにしても、海外市場に参入した当初はVodafoneグループ経由で端末を販売した。定期的に製品を投入した結果、海外の消費者にも機能やデザインが認められるようになったわけである。いきなり単独で海外市場に参入したとしても、大手メーカーがひしめく市場で認知度を上げることは困難だっただろう。

しかしカシオは前述したように、G'zOneという特徴的な端末をすでに海外CDMA市場で発売しており、これのW-CDMA/GSM対応版が出てくれば各国で話題になりそうである。スペックの数字を並べて、機能を謳ったところで、特徴がなければ新規参入メーカーに目を向けてくれる消費者は少ない。しかしG'zOneなら、見た目だけで多くの注目を浴びることは間違いないだろう。

またカシオは、耐衝撃腕時計「G-SHOCK」を世界中で販売しており、若者を中心に人気となっている。G'zOneはG-SHOCKの「タフネス」という精神を引き継いだ「G-SHOCKケータイ」とも言えるが、G-SHOCKのブランド名をそのままつけた携帯電話を海外で発売することも面白いのではないだろうか。今やG-SHOCKは腕時計だけではなく、1つのファッションブランドになっている。防水機能や、アウトドア対応の無骨でクールなデザインを取り入れなくとも、Baby-Gのようなおしゃれなデザインの携帯電話をG-SHOCK、あるいはBaby-Gブランドでそのまま発売することも可能だろう。

海外のG-SHOCK販売店の店内に、G-SHOCKケータイやBaby-Gケータイが単体で売られており、G-SHOCKが好きな消費者が腕時計に合わせて携帯電話も購入する。そんな販売方法も可能ではいだろうか。そうなれば機能の低いエントリー向けモデルから、タフネス仕様に特化したハイエンドモデルまで、複数の製品ラインナップを揃えて販売することも可能ではないだろうか。

たとえばSony Ericssonの「WALKMANケータイ」があるが、これはオーディオ機能を充実させた音楽携帯だけがラインナップされているのではない。もちろん上位モデルは操作性や音質など、音楽再生にこだわった製品が揃っているが、下位モデルには最小限の音楽再生機能の製品もある。消費者には「WALKMAN」のブランドが受けているのである。

G-SHOCKケータイや Baby-Gケータイが将来出るにしても、防水機能にこだわる必要は無い。ブランドのコンセプトを生かした端末であれば、時には機能は重要視されないのだ。カシオは現時点で特徴的な製品があり、そして世界中で人気のあるブランドを持っている。この両者を生かした端末を投入すれば海外市場でも成功する可能性は高いのではないだろうか。