ロングテール理論とは、少量しか売れないニッチ商品を多品種集めることで、大きな売上や利益を得ることができるという理論。『全体の2割にあたる売れ行き商品が8割の売上を占め、残り8割の商品の売上は2割に過ぎない』という、2:8の法則(パレートの法則と言われることもある)は有名だが、ロングテール理論は、売れないとされている8割の商品に着目しており、『単品では売上が少ないが、多くの商品の売上を合計すると無視できないものになるという』考え方。2004年に米国で提唱され、2006年、『Web2.0』等の言葉と同時期に爆発的に使用されるようになった。

インターネット特有の性質が大きく影響している

ロングテール理論を考える上では、インターネットの存在とその性質が非常に重要な役割を持つ。通常店舗販売の場合、ニッチ商品を多品種扱うことでまとまった売上や利益を得るためには、売り場スペースの費用や在庫を抱えるための費用が大きくなり、極めてに非効率なビジネスとなってしまう。

一方、インターネット販売では売り場スペースを必要としないほか、在庫も地代が安価な場所で管理することができ、インターネット無しでは非常に難しかった多種にわたる商品販売が可能になる。

またインターネット販売では、売り手と買い手の物理的距離の影響を受けないため、ニッチな商品であってもある程度の販売機会が見込めるという利点がある。

具体例を挙げると、北海道の店舗商品を沖縄の顧客が購入することも可能といった具合である。さらに、インターネットの高い検索性もニッチ商品の販売機会増大に大きく寄与している。こういったインターネットの『拡散性』『検索性』がロングテール効果に大きく貢献している点も見逃せない。

単なる「ニッチ戦略」との違い

似たような概念として、「ニッチ戦略」がある。ニッチ戦略とは、差別化を徹底してヘビーユーザーやマニアを対象に、競争の少ない市場で収益を狙う戦略のことである。ニッチ戦略はマーケティング戦略の中でも昔からある基本的な戦略で、ロングテール理論と比べても比較的シンプルな概念だが、近年では、時折このニッチ戦略とロングテール理論が混同されるケースがある。ロングテール理論は『個々のニッチな商品の収益性の低さを、商品の種類の多さでカバーできる』という考え方が本質である。売上が年間でたった数個やあるいはそれ以下といったような、それこそニッチ戦略でも収益性が見込めないような商品を大量に取り扱うのである。

ロングテール実現には莫大な投資が必要

通常ロングテール効果を狙うためには多品種の商品を揃える必要があり、いくらインターネット販売で在庫リスクを下げることができるとはいっても、相当のリスクを負う必要が出てくる。ロングテールの成功例としてはアマゾンが有名だが、そのアマゾンも2000年代前半には巨大な赤字を抱える時期を経て、巨大なパイを獲得することに成功してようやく現在の形に落ち着いている。そしてそのアマゾンにおいてもメジャーな商品(ヘッド)による売上の方が大きく、ニッチな商品(テール)の売上は少ないと言われる。一般的には、売上の伸びにくい商品の販売は効率の悪いビジネスであり、ロングテール効果を狙った場合でも多分に漏れない。ロングテール効果を狙う場合、テール商品のみで売上を狙いにいくのではなく、あくまでヘッド商品販売のおまけとして考えたほうがよいとも考えられる。

ロングテールSEO

近年、このロングテール理論を踏まえたSEO対策「ロングテールSEO」という言葉もよく使われるようになってきている。

執筆者紹介

柏木宏之

株式会社オーク 代表取締役

1981年生まれ。京都府宇治市出身。2006年京都大学経済学部卒業。同年、新卒で楽天株式会社入社。基盤システム構築・運用を担当。2010年に株式会社オーク設立、代表取締役就任。 現在はWEBという括りで、WEBプログラミングのほか、基盤システム構築・運用、Wデザイン、マーケティング、コンサルティングなどを手がける。