【コラム】
これまで5回にわたり連載してきた本コラムも、今回が最終回となる。そこで今一度「コンサルタントとはどんな人物なのか」を考察してみたい。コンサルタントには一定のスタイルはなく、医者や弁護士、会計士といった資格もないため捉えがたいが、コンサルタントがコンサルタントたるべき資質は定義できると考えている。
定義するに先立ち、本コラムを読んでいただいた先輩から貴重な資料を頂戴したので紹介したい。それは「コンサルの語源」に関するものであった。読者の皆様はコンサルの語源をご存知であろうか?
"Consult(Consultant)"は、「共に座る」が語源であり、転じて「相談する/協議する」という意味になっている。また、"Doctor"は「教える(to teach)」が語源である、という。
そうなのである。コンサルタントは共に座らないといけないのだ。教えるだけでは、コンサルタントたり得ないのだ。視座を保ちつつ再度捉えなしてみると、コンサルタントは「共に考え」「考えたことを正しく表現し」「伝える」 - その結果、クライアントが自分の策として解決策を実行するに至るのだ。動作に変えて表現すると、次のようなステップを踏むことで仕事をすることになる。
考える → 書く → 伝える → 動かす
「クライアントが実際に動くか否か」は最終的にはクライアントの判断であるが、「動かす」ことができてこそコンサルタントであると定義しておきたい。クライアントの心を揺さぶり、彼らの気持ちが「動いてみよう」「動くことが得策だ」と至るまでがコンサルタントの仕事である。
ここまで書いてきて『人を動かす』という著書があったことを思い出した。デール・カーネギーが書いた『How to Win Friends and Influence People』という自己啓発の元祖ともいえる著書である。ご参考まで。
本コラムの最初に、「コンサルタントは精神的満足の大きな仕事である。だからこそ、脳みそに汗をかき、クライアントのために考え抜け」と書いた。筆者もコンサルタントの端くれとして「この仕事を選んでよかった」と振り返りたいし、コンサルティング業に身を投じる、あるいは投じているであろう読者にも「コンサルタントで良かった」と感じてほしいと思う。
基本的にコンサルティングはプロジェクト型の仕事をするケースが多く、SAPコンサルはSAP製品をクライアントに導入するプロジェクトに従事することが多いであろう。SAPプロジェクトの中に入ってしまうと、予算の範囲内で、期日を守ってプロジェクトを完工することを優先することになる。これは成功プロジェクトにおいて重要な要素であることは間違いない。しかしながら、この観点だけで作業をしていて、精神的な満足を得るのは困難だ。いくつかのプロジェクトを経験する中で心身ともに疲弊してしまい、SAPプロジェクトへの参画はもうたくさんだ、というコンサルタントを輩出していないだろうか。
クライアントはコンサルタントに「○○な課題があるのです」「その課題を解決してほしい」という依頼をしてくる。RFP(= Request For Proposal)という形式であれ、特命で依頼が来るケースもあるだろうが、その課題が表面的なニーズであるのか、本質的なニーズなのか、を考える努力を惜しんではいけない。ただ構築作業に突入するだけでは、システム導入の真の目的を達成するのは難しい。むしろ、現場の状況を把握してマネジメント層の意向を分析してみると、抜本的な改革を要するケースがある。「ロジカルに考え」「考えた提案を書き」「真にクライアントの為になると伝える」と、別の形でプロジェクトが発足するケースがあるのだ。
先輩コンサルタント諸氏はいろいろな場面でいろいろな表現で心得を説いている。筆者にも自分なりの心得があり、ここではすべてを書ききれないが、とくに伝えたいと考える心得を書いて筆を置くことにする。
自ら考えて仕事をするチカラをつけていただきたい。たとえば「何のための作業なのか」「プロジェクト全体ではこの作業の位置づけは」を考えることは、基本の「基」である。また、自分の仕事の範囲を自分勝手に限定しないことである。自分のノビシロを自ら削ってしまうことを自戒してほしい。
プロであるべきコンサルタントはコミットメントをしながら仕事をするものである。
スピードもクオリティのひとつである。ゆっくりやっていいのであれば他人でもできる。提案であれ、成果物であれ、タイミングを逸しては不要のドキュメントになってしまう。
クライアントの立場を理解して常に誠意を持って接することを忘れてはいけない。クライアントこそが同じ目的を持って進む仲間である。共に座る、一緒に苦労する姿勢は美しい。クライアントの期待値を正しく理解すること。独りよがりの価値提供では継続して”Buy In”はしてくれない。
言わずもがなであるが、コンサルタントの評価はアウトプットに凝縮される。どんなに努力してもアプトプットに表現できなければ「よくがんばっているよいひとだけどねぇ……」で終わり。
今回、コンサルタントとして経験し考えてきたこと、将来のコンサルタントに期待したいことを伝える機会を与えていただき、感謝いたします。一人前のコンサルタントとなった読者の皆様と、どこかのプロジェクトでご一緒できる日を楽しみに、本コラムを終わりとしたい。
執筆者紹介
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泓秀昭 (FUCHI Hideaki)
日立コンサルティング ディレクター。日本の大手情報機器製造・SI企業を経験後、SAPジャパンにて、プロジェクトマネージャーとして複数の大規模プロジェクトを手がける。コンサルティング部門の部長に就任後、主に製造業のお客様に対し、SAPジャパン主導によるプロジェクトを複数統括する。その後、日立コンサルティングに入社、現職に至る。
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