都市間の遠距離移動であれ都市圏内の移動であれ、予定した通りのスケジュールで移動できないのは嬉しくない。場合によっては、少しのスケジュールの遅れで仕事を逃がすことにもなりかねない。

ただ、鉄道でもバスでも飛行機でも、あるいは高速道路でも、わざわざ意図的にダイヤを乱したり渋滞を起こしたりしているわけではない。ダイヤの乱れも渋滞も、仕方なく発生するものである。もっとも、その「仕方なく発生する」原因によって、回復の目処あるいは回復までの時間には違いが出てくる。

だから、「せめて原因だけでもわかれば、その後の対処を立案するのに役立つのではないか」と考えた。直ちに代替手段に切り替えなければならないこともあれば、アタフタしないで待っているほうが結果的に目的地に速く到着できる可能性もあるからだ。

そもそも、平常ダイヤ通りに運転・運行ができなくなる理由にはどのようなものがあるのだろうか。異なる交通機関に共通する原因もあれば、交通機関の種類に固有の原因もある。まずは、その辺の話から。

鉄道や飛行機のダイヤが乱れる原因はさまざま

まず、ダイヤを乱す要因のうち、不可抗力に属するものとしては「天候」がある。鉄道なら豪雨・豪雪・強風、飛行機なら視界不良といったあたりが主役だろうか。こうした天候に起因するダイヤの乱れは、天候が回復しなければどうにもならない。つまり、回復の時期を予想することが難しい。そして、究極の不可抗力は地震である。

筆者自身も、強風による規制で東北新幹線が止まってしまい、盛岡駅で数時間ほど足止めを食った経験がある。変わったところでは、鹿児島行きの飛行機が霧島山・新燃岳の噴火を避けて北側に迂回する経路をとったため、鹿児島空港への到着が少し遅れた、なんて経験もある。

東北地方太平洋沖地震の発災時は都内で電車に乗っていたが、「これだけ激しく揺れれば、すぐに運転再開することはないだろう」と踏んで、早々に電車を放棄して自宅まで歩いて帰った。これは大正解だったのだが、自宅最寄り駅の1駅手前まで来ていたという幸運があったことも見逃せない。

さらに、ダイヤの乱れによって車輌や機材の運用が予定通りに行かなくなると、「天候は回復したが、機材繰りがつかないので運休」なんてことも起きる。つまり、天候が回復したからといって油断はできず、影響が尾を引くわけだ。これは鉄道でも飛行機でも同じである。鉄道の場合、単線区間では対向列車が遅れたための交換待ちも遅延の原因になる。つまり、自分が乗っている列車に問題がなくても、対向列車の遅れに巻き込まれる可能性がある。

なお、天候は天気予報を参考にして「やばそうだな」というぐらいの当たりをつけることはできる。そもそも、最近のJRグループは、天候が極端に悪い時は長距離列車を「予防運休(?)」してしまうことも少なくない。

それと比べると、突発的に発生する地震や土砂崩れなどのほうが始末が悪い。しかも、これらは回復の目処が立ちにくい点でも共通している。豪雪も、除雪にかかる時間などの問題があるので、回復のタイミングは読みにくい。

また、まるで予想がつかないのが車輌や機材の故障、あるいは列車の運行や飛行機の運航を支える地上側機材の故障である。鉄道だと「信号トラブル」「分岐器トラブル」が双璧で、飛行機だと管制システムのトラブルが稀に発生する。こうした機材面のトラブルは、天候と違って直ちに復旧に取りかかれる可能性が高いが、いつ復旧するかは予測しづらい。

また、鉄道に固有の「予想がつかないトラブル」として、「人身事故」と「踏切事故」がある。類型として、「線路内に人が立ち入った」「ホームで乗客が車輌と接触した(いわゆる触車)」といったものがある。死傷者が出なければ運転再開は比較的早いが、死傷者が出た場合は現場の後片付けや検証などでそれなりに時間がかかるので、回復にも時間がかかる。

道路交通で遅延が生じる原因いろいろ

では、バスや乗用車といった道路交通はどうか。最もポピュラーなのは「渋滞」だが、これも原因による。「交通集中による渋滞」だけでなく、「事故渋滞」「工事渋滞」「見物渋滞」「料金所渋滞」「チェーン規制渋滞」とバリエーションが多いからだ。

これらのうち事前に予測がつくのは、「交通集中による渋滞」「チェーン規制渋滞」だろうか。予測に際しては、季節・曜日・天候といった情報が参考になる。そう言えば、「1,000円高速」をやっていた時期は、週末になるとあちらこちらで大渋滞が発生して、高速バスも巻き込まれて大遅延したと記憶している。この手の渋滞は事前に予想がつく種類のものだが、一方で、回復の見込みは立てにくい。

工事渋滞も、大規模集中工事のように事前に告知されていればよいが、緊急工事だと、行ってみないとわからない。変わったところでは、「過去に発生した事故の見分のために規制ないしは通行止め」なんてものもある。

本連載の第6回で取り上げたが、筆者自身も、工事渋滞が原因と思われる夜行バスの大遅延に巻き込まれたことがある。この時は、東京-名古屋間という近距離路線でダイヤに余裕があったおかげで大した遅延にはならなかったが、長距離路線では事情が違うだろう。

事故渋滞の場合、事故現場が片付けば渋滞の原因は取り除かれるが、事故の規模によって回復までの時間には違いが出てくる。それでも他の渋滞と比較すると、「待っていれば解消するのではないか」と考えやすい部類ではある。

事故の発生により、自分がいる側の車線だけでなく、対向車線まで野次馬のために流れが悪くなることがある。これがいわゆる見物渋滞で、花火などのイベントが行われた時にも発生する。つまり、反対車線の情報にも注意する必要があるというわけだ。イベントは事前に予想がつくが、事故は予想不可能。

もちろん、鉄道と同様に天候に起因するトラブルもある。豪雨・豪雪・霧などによる速度規制や通行止めがそれだ。これは天気予報によって事前に予想できるが、それでも避けられないこともある。下道に降ろされた場合の代替ルートを検討しておこう。

話が散らかってしまったけれど……

以上、さまざまなトラブルの原因を挙げてきたが、対処法を要約すると、こういう話になる。

  • 事前に予想できる事象に対しては回避策を検討・準備しておく
  • 事前には予想できないが、比較的早く回復しやすい事象なら、待機して様子を見る選択肢もある
  • 事前には予想できず、回復の時期を読みにくい事象であれば、直ちに代替手段を講じる

まずは原因の把握に注力したい。原因によっては、比較的早い時期に解消の目処が立つこともある。それであれば、慌てて代替ルートに鞍替えするよりも、大人しく待っているほうが良いこともあるからだ。

さらに公共交通機関の場合、代替ルートの有無や空席を確保できるかどうかという問題も絡んでくる。ヘタをすると、当初に予定していたルートを早々に放棄したら、さらに代替ルートを確保できず、仕方なく一泊を余儀なくされて……と思ったら泊まる場所もない、なんてことになりかねない。