一般道を走っていても渋滞は嫌なものだが、速く移動するために料金を支払っている高速道路で渋滞に巻き込まれるのは、もっと嫌なものである。どんな大渋滞に巻き込まれて到着が遅れたとしても、JRの特急料金と違って払い戻しはないのだ!

それは冗談だが、せめて渋滞の有無ぐらいはできるだけ早く知りたいものである。渋滞だけでなく、事故、故障車、落下物など、高速道路で注意したい危険要因はいろいろある。

いつだったか、関越道の上り線で本線のド真ん中に梯子だか脚立だかが落下していたことがあり、それを発見して緊急回避した時は冷や汗をかいた。もちろん、通報や情報の提供が間に合わないこともあるだろうが、可能な範囲で早く情報を把握したいものである。

交通情報入手の手段はVICSとハイウェイラジオだが……

自宅で出発前に情報を得るのであれば、日本道路交通情報センターなどのWebサイトで確認できる。しかし、道路交通は生き物みたいなものだから、出発後に状況が変わる事態は普通に起こり得る。そのため、できるだけ最新の情報をリアルタイムで入手したいと考えるのは当然のことだ。

しかし、自分が運転している時にPCや携帯電話を操作するのは危険極まりないから、別の方法が必要だ。そこで最もポピュラーな手段は、カーナビが内蔵するVICS受信機、あるいはAMラジオ放送(1,620kHz)によるハイウェイラジオなどの道路交通情報放送になるだろう。

ただしVICSの場合、FM放送による広域情報だけでは物足りないので、ビーコンを搭載したいところだ。高速道路はおおむね3km程度の間隔でビーコンが設置されていたと記憶しているが、第5回で取り上げた「分速1.5kmの法則」に則れば、2分ごとにデータが入ってくる計算になる。一方、提供する情報の方は5分間隔で更新している。

VICSの図形情報をカーナビが表示した例

ところが、VICSやハイウェイラジオが提供する情報には個人的に不満がある。それは一体どういうことかというと……

情報提供の範囲に注意

例えば、中央道の下り線を八王子から西に向かって走っていたとする。何も問題がなければ、VICSの地図情報は諏訪IC辺りまで一気に出てくるし、ハイウェイラジオでは「小牧東インターまでの区間は順調に流れています」と放送している。

ところが、情報の提供範囲がいきなり縮小することが往々にしてあるのだ。例えば、VICSの地図情報で表示する範囲が一気に近くのIC、例えば勝沼辺りまで縮んでしまう。ハイウェイラジオも同じで、「順調に流れています」の対象区間が急に縮むことがある。

個人的経験からすると、こういう事象が発生した時は大抵、その先で何か起きているものだ。それは渋滞だったり、事故だったり、故障車だったり、落下物だったりするのだが、いずれにしても何らかの「まずいこと」が起きていることが多い。その具体的な情報は出てこなくて、その手前の順調に流れている区間の情報だけになってしまうわけだ。個人的見解としては、まずいことが起きているのであれば早めに知りたいと思うのだが、読者の皆さんはいかがだろうか。

ともあれ、こうした経験をさんざん積み重ねてきた現在では、「近くのICまでの情報しか出てこない時は、その先で何かまずいことが起きているに違いない」と考えることにしている。猜疑心の塊みたいで嫌な話だが、実際、そういう経験を何度もしているのだから致し方ない。

もっとも、大きなサービスエリアに立ち寄れば「ハイウェイ情報ターミナル」が設置してあり、これを使うと広域情報を把握できるので、事故や渋滞の情報から完全に遮断されるわけではない。それならなおのこと、VICSやハイウェイラジオで「ちゃんと流れている区間」の情報だけ流すことの意味はないだろうと思うのだが、なんとも面妖な話ではある。

主要SAで見かけることの多い、大画面の交通状況表示盤

そういえば、実際には渋滞していない道路で、VICSが「渋滞」の表示を出していたこともある。とある日曜日の深夜、沼津から国道1号線を箱根方面に向かって走っていたら、その国道1号線が箱根外輪山の山越えにかかる区間で、延々と渋滞表示が出ていたのだ。時間帯からすれば当然のことだが、実際にはガラガラであった。というか、誰もいなかった。

問題は、その渋滞表示を真に受けたカーナビが渋滞回避オートリルートを発動して、細くて曲がりくねった裏道にルートを変更してしまったことである。こうなると笑い話では済まされない。何とかしてもらいたいものである。VICSが狼少年になってしまっては困るのだ。