燃費向上とはエネルギー管理の問題である

ひところほどの高値ではないにしても、ガソリン代は少なくて済むに越したことはない。それに、ムダなガソリンを燃やさなければ、排気ガスの減少にもつながる。もちろん、クルマ自体の省燃費性能が向上してくれれば嬉しいが、実のところ、乗り方や使い方でガソリンの使用量は変わってくる。

一般的に、省燃費テクニックというと「余分な荷物を降ろして軽量化する」「タイヤの空気圧に気を配る」「急加速を避ける」といった話がメジャーだが、本稿でわざわざそれらについてわざわざ語ることはないだろう。そこで、筆者が提唱したいキーワードは「エネルギー管理」だ。

基本的な考え方をまとめると、「省燃費とは、ガソリンを燃やして作った運動エネルギーをいかにして無駄なく使い切るか」という話になる。といっても、あくまで「流れを乱さないように」という但し書き付きの話なので、そこを念頭に置いたうえで、以下の話を読んでいただきたい。

市街地でありがちなことだが、「急発進・急加速したと思ったら、先行車につかえたり赤信号に引っかかったりして急制動」といった運転は、燃料消費やエネルギー管理の観点からすると最悪だ。せっかくガソリンを燃やして作った貴重な運動エネルギーを、ブレーキで熱に変えて放出してしまうのだから。そうならないように状況を先読みして、前方でブレーキを余儀なくされそうなら加速を避けて定速運転、できれば惰力で走るようにするほうが経済的だ。

高速道路でもこれは同じこと。「アクセルを吹かして加速したと思ったら先行車にひっかかって急ブレーキ」という運転では、燃費は悪くなる一方である。先行車との間隔をほどほどに維持しつつ、流れに乗れる程度の一定速度を保つと、それだけガソリンの消費を抑えられる。

この「定速運転」も省燃費のコツの1つで、それゆえに空いている高速道路のほうが数字が伸びる。混雑してくると、どうしても他車の影響を受けて加減速が発生してしまう。

高速道路では地形を生かした運転で燃費減

また、どんな道路でも地形の影響はあるが、高速道路のほうが自分の裁量を発揮しやすいので有利だ。

個人的経験からすると、アップダウンがない平坦な高速道路、例えば常磐自動車道(水戸以南)や関越自動車道(高崎以南)では燃費が伸びる。しかし、山岳地帯が多い日本ではこうした道路はどちらかというと珍しいので、別の方法で燃費を稼ぐ必要がある。そこで、地形やアップダウンの状況を考慮に入れるというわけだ。

当たり前の話だが、登り坂になればスピードが落ちるし、下り坂になればスピードが上がる。したがって、登り坂で飛ばすと、坂を登るためのエネルギーに加えてスピードを上げるためのエネルギーが必要になり、ますますガソリンを消費する。実際、急な登りを走っていると、平均燃費計の数字がどんどん悪化する。

一方、坂道を登った後で下り坂にさしかかると、大してアクセルを踏まなくてもスピードを維持できる。これを、筆者は戦闘機の機動飛行になぞらえて「高度を速度に変換する」と呼んでいる。逆に、速度を高度に変換することもできるという理屈だ。

そこで、登り坂では流れに乗れる程度の速度に抑えて、加速や追い越しはできるだけ避ける。一方、下り坂では放っておいてもスピードが出る。時々急な下り坂があって、加速しすぎて事故につながりかねない場合があるが、それはエンジンブレーキを使って調整する。下り坂の先に上り坂が控えているのなら、下り坂で(事故にならない程度に)勢いをつけておく。

こうすることで、速度の維持とガソリン消費の低減を両立させようというわけだ。走っている道路の地形が頭に入っていれば、「この登り坂の先には下りがあるから、登りではペースを抑えてその先の下りで稼ごう」といったペース配分ができる。

中央自動車道の下り線を例にとると、八王子IC~小仏トンネル、上野原IC~談合坂SA、大月JCT~笹子トンネル辺りで登りが続き、その先で下りに転じる。だから、登り坂では我慢の運転で高度を稼ぎ、その先の下り坂では高度を速度に変換することで、ガソリン消費の抑制とスピードの維持を両立させる。

こんな調子で運転していると、案外と燃費が伸びるものである。もっとも、下り坂で飛ばしすぎると事故の元となるなので、限度はある。そういう意味では、ダラダラと緩い下り坂が続く場面が多い中央道の上り線は有利で、実際かなり燃費を稼げる。

一方、一般道路では信号などの影響を受けやすいので、なかなか自分のペースを守って運転できない。そのため、さすがの筆者も都内の一般道ではリッター7~8kmぐらいのペースにダウンしてしまう。