会社員の場合、源泉徴収の形で給料から天引きされるため、あまり意識しないままに払っていることが多い税金。しかし、せっかく給料が増えても、「手取りが増えないのは何でだろう?」と手をこまねいているだけなのは、あまりにももったいない。税金の種類や仕組みを理解して、払うべきものは払って、後から慌てないように、また取り戻せるものは取り戻して、"お得生活"ができるように、ゼロから勉強しよう。


2014年以降の税制がどう変わるかを示す「与党税制改正大綱」が発表となった。私たち個人にとっては、ますます税金負担が増す結果となっている。

自動車税制が大きく見直される

2014年4月から消費税率が5%から8%にアップすることが決まっているが、12月13日に2014年度与党税制改正大綱が発表され、個人へのさらなる負担増が見えてきた。

税制大綱によると、消費税率が8%に上がる2014年度から家計の負担はじわじわと増していく。

まず消費税率がアップする4月から自動車関連税制が見直される。自動車関連税は、購入時に消費税とは別にかかる「自動車取得税(地方税)」、車検時などにかかる「自動車重量税(国税)」、保有していれば毎年かかる「自動車税・軽自動車税(地方税)」の3種類がある。

普通車、軽自動車を買うときに支払う「自動車取得税(地方税)」は2014年4月から、普通車が5%から3%に、軽自動車が3%から2%に下がるが、この時点では消費増税のほうが、負担額が大きくなる。この「自動車取得税」は2015年10月からは廃止されることも決まっている。半面、軽自動車については2015年4月以降に購入した新車に限り、「軽自動車税」が1.5倍に増える。具体的には、2015年4月から年7,200円(自家用)が1万800円となる。

また消費税率が10%にアップする時点で、自動車税・軽自動車税について環境機能性などを加味して上乗せする新たな税に変更される。具体的内容は未定だが、全体としては増税色が強く、自動車を取得するなら消費増税の前に買うほうが有利になりそうだ。

高所得者は増税で手取り減の影響

高所得者には、さらなる増税も決まった。もともと再来年2015年からサラリーマンの最高税率は40%から45%に引き上げになることが決まっている。今回さらに決まったのは、サラリーマンが経費として給料から差し引ける「給与所得控除」の削減。2016年から年収1,200万円超、17年以降は1,000万円超の給与所得控除を縮小し、実質増税が実施されることになる。サラリーマンが必要経費として「給与所得控除」を差し引くことについては、この連載の前回でも紹介した。現在の控除上限額は年収1,500万円超で245万円となっているが、2016年から年収1,200万円超で上限230万円と15万円引き下げとなる。17年からは年収1,000万円超で220万円に引き下げとなる。

これにより、課税所得が上がることになり実質の増税となる。年収1,500万円の家庭(夫婦、子ども2人)で16年に約7万円、17万円以降はさらに約4万円の税負担が増す。2015年から課税所得4,000万円超は税率45%が適用される改正が既に決定済み。高所得者の増税感は強まるばかりだ。

他にもこんな減税、増税が導入される

また、既に相続税の税率の引き上げが2015年1月から実施されることが決まっている。今回、決定は見送りとなったが、医療費控除の対象縮小、公的年金の課税強化が2014年以降の検討課題として見送られた。

減税部分でみると、消費税率が引き上げられる2014年4月から、住宅ローンを組んだ人への減税が拡充されることが既に決まっている。さらに耐震性や省エネ性能の高い長期優良住宅は、10万円上乗せの50万円となる。あわせて、支払っている所得税が控除額に達しない場合は、住民税からも一部を控除できる制度の上限額も拡大する。現行の4割増の13万6,500円となる。

また、住宅取得者の負担を軽減するため、消費税率8%導入時は収入額目安510万円以下の人を対象に最大30万円、10%導入時は収入額の目安775万円以下の人を対象に最大50万円の「すまい給付金」が給付される。

生活必需品にかかる消費税を軽くする軽減税率については、今回「消費税率10%時に導入」ということが決まったが、実施時期の明言はないままだった。

また2014年1月からNISA(少額投資非課税制度)が導入される。この制度は、1人年100万円、その非課税期間は5年間、10年間の時限措置、利用できる金融機関は1機関などのルールがある。利用金融機関は一度申込むと4年間変更ができないことになっていたが、2015年から毎年非課税口座を違う金融機関に開けるようになることになった。

増税色の濃い2014年となったが、お金の使い方も運用も賢い選択肢をより選抜する時代がやってきたようだ。

<著者プロフィール>

酒井 富士子

経済ジャーナリスト。(株)回遊舎代表取締役。上智大学卒。日経ホーム出版社入社。 『日経ウーマン』『日経マネー』副編集長歴任後、リクルート入社。『あるじゃん』『赤すぐ』(赤ちゃんのためにすぐ使う本)副編集長を経て、2003年から経済ジャーナリストとして金融を中心に活動。近著に『0円からはじめるつもり貯金』『20代からはじめるお金をふやす100の常識』『職業訓練校 3倍まる得スキルアップ術』『ハローワーク 3倍まる得活用術』『J-REIT金メダル投資術』(秀和システム)など。