今年2月にGoogleは、サンフランシスコ開催のGoogle I/Oのチケットをわずか59分で売り尽くした。ただ、Vic Gundotra氏がTwitterを通じてチケットの発売開始を告知しなければ、これほど短時間で完売することはなかっただろう。Google I/Oに対する高い注目もさることながら、これはソーシャルサービスの情報伝播力を物語る数字だと思う。

約4000枚のチケットを1時間とかからずに完売

しかし、これは困った問題でもある。発売告知直後に気づかなかったらソールドアウトなのだ。じゃあ、来年のGoogle I/Oに参加したければ、どのように準備するか? 関連するTwitterをフォローして通知を受け取るようにすれば、なんとかなるかもしれないが、リアルタイムで知りたい情報はごく一部だ。Google I/Oに関しては、チケット発売開始だけで十分である。そのためだけに普段からTwitterの通知に振り回されるのは御免だ。結局「誰かが気づいたらすぐに電話で知らせ合うように約束しておくのが、最も確実で煩わしくなさそう……」などと考えていたら、Facebookのカンファレンスf8の開催が発表された時、ほぼ直後に知ることができた。自分でもすっかり忘れていたのだが、Q&AサービスのQuoraで「Facebookのf8カンファレンス 2011はいつ開催される?」という質問をフォローしていたのだ。Twitterよりも、ニュースサイトの速報よりも早く、Quoraからの通知で知ることができたのには正直びっくりした。

ある日、突然Quoraから送られてきたFacebookがf8開催を発表したという通知

Quoraはプロフィールを明かして参加するQ&Aサービスだ。メンバー同士の評価によって質問・回答が取捨選択され、生産的なディスカッションが生み出されている。基本実名で、非生産的な攻撃や誹謗中傷が起こらない環境であるため、例えばAmazonのサービスに関する質問にAmazonの担当者本人が回答を寄せたりしている。当事者や、その道の専門家からの回答が得られる場であるのがQuoraの魅力だ。特定のディスカッションを追い続けられるようにフォローする仕組みが用意されており、今回はそれが結果的にFacebook f8開催告知のアラートとして機能したというわけだ。もちろん、これはQuoraの本来の使い方ではないし、必ずしもQuoraメンバーから素早い回答が寄せられるとは限らないので、こうした使い方はお勧めはできないものの、f8の通知はQ&Aサービスの可能性を感じさせるものだった。

ロケーションとQ&Aで"リバースTwitter"

LocalMindのCEOのLenny Rachitsky氏は、自身が提供するQ&Aサービスを「リバースTwitter」と表現している。同社は、今年のSXSW(South by Southwest)で小さな話題を起こしたスタートアップだ。QuoraとFoursquareを融合させたような位置情報連係型のQ&Aサービスを提供している。ある場所にチェックインしている人たちに向けて質問を投げられる。例えば、iPhoneの発売日に、近所のアップルストアでチェックインしている人たちに「いま何人ぐらい並んでる?」と聞けるのだ。Twitterでも、iPhone発売に関連するハッシュタグを検索したり、またはフォロワーが多い人なら質問を流せば、行列の長さを確かめられるだろう。しかし、必ずしも自分が行く予定のアップルストアの状況を知る人から情報を得られるとは限らない。LocalMindは、その場にいる人を捕まえて聞きたいことをストレートに聞ける。チェックインと連係しているので、返事はリアルタイム。QuoraやTwitterよりも直接的に知の欲求を満たせる。

SXSW以来、しばらくLocalMindは鳴かず飛ばず状態が続いていたが、8月に英国各地で起きた暴動や米東海岸地方を直撃したハリケーン「アイリーン」でにわかに注目を集め始めた。「その辺りで、動いている公共の交通機関は?」「ビーチは閉鎖? それとも誰かサーフィンしてる?」というような、事件や災害が起きている現地の状況をたずねる質問が増え、実際に現地から回答が返されてきた。「いまどうしてる?」を現地にいる人たちがアップデートするのを待つのではなく、その場所にいる人たちに対して自分たちが知りたい情報のアップデートを促す。だから、"リバースTwitter"だ。

アイリーン通過直前に、米東海岸で現地の様子をたずねる質問が増加

以前は「店内は混んでる?」というように、質問者を含めて自分たちの行動範囲内のやり取りが大半だったというが、英国暴動やハリケーン・アイリーンでは、その地域だけではなく国内の他の地域、そして海外からも質問が寄せられた。ロケーションとQ&Aサービスの組み合わせが、リアルタイムに貴重な情報を掘り出せるものであることにユーザーが気づき始めたのだろう。

LocalMindは使い道を限定せずに、ユーザーがアイディアを反映させられる余裕を持たせていている。初期のTwitterに似ており、自由度の高さが"リバースTwitter"のような使い方の成長を後押ししたと考えられる。ただ、これは諸刃の剣である。今はLocalMindを支えるユーザーが多いためうまく機能しているが、事件や災害時には配慮に欠けた質問がトラブルを起こしかねない。ユーザーの拡大とともに、サービスが荒れる可能性をはらむ。位置情報サービスを提供するLooptの場合、Q&Aサービス「Loopt Qs」に不適切な質問が公開されないようコミュニティチームが質問をチェックしているが、そうした管理は制限と見なされやすい。自由なインタラクティブ性と、コミュニティの秩序の維持をいかに実現するかが、LocalMindの今後の課題になる。

Quoraも数週間前に、Topic Locationsというロケーション機能を追加した。質問のトピックに位置情報を追加でき、モバイルアプリ版のQuoraで場所から質問やディスカッションを引き出せる。実際に、その場所にいることで答えられる質問というのも多いだろう。LocalMindのようにリアルタイムの回答を得られるものではないが、LocalMindとは逆に、上手く機能しているコミュニティを土台にした位置情報へのアプローチがどのような情報へのアクセスを実現するか楽しみだ。

ロケーションだけではない。イベント共有サービスや、トラベル用のSNSなど、Q&Aと組み合わせるものを変えたり、または付け加えれば、別のニーズを満たす情報への直接的なアクセスが可能になる。Q&Aサービスは便利なものなのに、存在が当たり前すぎるのか、これまであまり盛り上がる分野ではなかった。しかし答えを聞きたい人にリーチできる仕組みを取り入れれば、ソーシャルサービスのかゆいところに手が届かない不満を解消する存在になり得る。