"良い提案"とは何か

  • 良い提案、持ってきてよ
  • 頑張ってくれてるけど、もっと提案が欲しいんだよねー

お客さんから、こんなことを言われることがある。読者の皆さんの中にも、似たような経験がある方が案外多いのではないだろうか。

良い提案、もちろんしたい。

しかし、そもそも、「良い提案」とは何だろうか? そして、どうすれば「良い提案」ができるのだろうか?

けっこう難しい問いである。この2つの問いに、簡潔に答えられる人はそれほど多くはないはずだ。だが今回はあえて、この2つの問いに答えていきたいと思う。

そして、次回以降の本コラムでは、

  • 具体的に、どうすれば「良い提案」ができるのか?
  • そのために、どうやって「提案力」を高めていくのか?

についても触れていこうと思う。

この提案、胡散臭くない?

まずは、余談から。胡散(うさん)臭いの"胡散"とは何だろう?

複数説があるようだが、「高麗の茶器」という説がひとつの有力な説のようだ。

  • 本当に値段相当のものなのか
  • 自分にとって価値のあるものなのか

お客さんにとって、その信頼性に大きな「?」があると、この「胡散臭い」という言葉が出てくる。

ダイエット食品、占いといったモノにこの「胡散臭い」という言葉を感じる方もいると思うが、コンサル業界やSI業界においても、お客さんがそう感じることが多いようだ。実際、弊社(アビームコンサルティング)で、「コンサルティング・ファームに求めるものとその実態」を調査したことがあるが、そのギャップの第1位は、「信頼感」というキーワードだった。コンサルタントのことを胡散臭いと思っている人が多い証左であろう。

このような胡散臭い提案では、「良い提案」とは言えない。胡散臭さが出る原因は何かというと、提案側の「独りよがり」が挙げられる。お客さん側の、「心からの悩み」を理解することなく、「うちの○○なら、××も実現できるし、△△も可能だし……」とまくしたてると、お客さんの心には「?」が浮上してくるのだ。

すなわち、良い提案をするには

顧客の立場をとる

これが重要である。

「当たり前だろ」と感じた方も多いと思う。しかし、自分や周りの提案書を見てほしい。そこに、「御社の状況は…」といった表面的な課題レベルではなく、顧客企業の社長、部門長、担当者が「心から悩んでいること」がちゃんと捉えられているだろうか。

価格競争に巻き込まれない

逆に、お客さんからこんなことを言われたケースもあるのではないだろうか。

  • 言ったことはやってくれるけど、言ったことしかやってくれないよね
  • 感謝はしてるけど、この内容じゃ高すぎるよね
  • 会社の仕組みが変わって、契約は購買部門を通すことになったんですよ。これだと他社とのコンペになって価格勝負になるかもしれないですね

「顧客の立場をとる」提案をすることは重要であるが、それだけでは不十分である。

自分から提案をする

これがないと、十分ではないのである。

価格競争に巻き込まれるリスクがあるということもあるが、お客さんのいうことを聞いているだけでは、真の意味で「顧客の立場をとる」ということにはならない。

お客さんの言う、「これをやって欲しい」ということは、プロフェッショナルの視点を加味するとベストの案でないかもしれないのだ。だから、お客さんの「要望」にそのまま応えるのではなく、「心からの悩み」をプロフェッショナルとして咀嚼し、本当に必要なことを「提案」する必要があるのだ。

これがない限り、顧客との長期的な関係は構築できない。

以前、とあるセミナーで、元日本IBMのトップ営業で、株式会社アット東京の社長も務められた石垣禎信氏の話に深い共感を覚えたことがある。いわく「営業の成功を示す2つの言葉」があるとのこと。お客さんから「ありがとう」「すごいね」 - この2つが聞けたら成功だ、とのことである。「ありがとう」だけでは不十分で「すごいね」、これがないといけないのだ。

ここまでの話をまとめる。

【問い】良い提案とは何か?

【答え】「顧客の立場をとり」かつ「自分から提案をする」こと

そして、結果として、顧客との長期的な関係を勝ち取ることである。

"良い対話"から生まれる"良い提案"

では、顧客の心から悩んでいることを捉え(顧客の立場をとる)、顧客から言われるがままではなく、新たな付加価値を加える(自分から提案をする)ためには、どうすればよいだろうか。

答えは

顧客と良い対話をすること

これに尽きるのである。

ただし、お客さんと、ただただ話せばよいわけではない。お客さんが心から悩んでいることを聴きだし、その内容にプロフェッショナルの視点を加味して(ただしお客さんの身になって)、提案内容を考え、仮説としてお客さんにわかりやすく伝える。

そして、お客さんが「ちょっと違うんだよなー」と言えば、再び、聴きだし、考え、伝える。

さらに、聴きだし、考え、伝える。

「聴きだし⇒考え⇒伝える⇒聴きだし⇒考え⇒伝える……」このサイクルを繰り返していく中で、

  • 仮説の精度を上げ
  • お客さんとの信頼度を上げ
  • 顧客のキーマンとも対話をしていく

のである。

このサイクルを回すことが、「良い対話」という意味である。

  • 一方的にお客さんから話されて、終わり
  • こちらから提案するも、「まぁねー」という曖昧な反応で、終わり

このような打ち合わせでは、良い対話とは言えない。

コンサルの極意と言っても、実は、このような基礎的なところにあるのである。私は、この「聴く、考える、伝える」という基礎的なスキルを「素手で戦える力」と呼んでいる。もちろん、さまざまな企業での経験をベースにした方法論などの「武器」もコンサルティングファームにはあるのだが、コンサルの極意はむしろ「素手で戦える力」にあると思っている。

***

次回以降の本コラムでは、この「素手で戦える力」をもう少し具体的に紹介をしていく。その中から、どうやって提案力を高めていけばよいかのヒントを見つけていただければ幸いである。限られた字数ではあるが、ひとつでも、みなさんの気づきがあるようにしていくつもりである。

ちなみに、私が「素手で戦える力」と呼んでいるものは、弊社内では、「ビジネスコアスキル」と呼ばれている。「少し先取りして、詳しく知りたい」という方には、弊社Webサイトにも紹介があるので参照いただければと思う。

今回の最後にもう一度まとめておきたい。

【問い】どうすれば、良い提案が出来るか?

【答え】顧客と良い対話をすること

執筆者紹介

斉藤岳 SAITO Gaku

東京大学大学院農学生命科学研究科修了。コンサルティングファーム勤務を経て2001年にアビーム入社。新規事業立上げ、事業再編、経営管理、業務改革等のコンサルティング経験多数。また、「会議で結論を出す技術」「インタビュースキル」「ソリューション営業スキル」等の研修を行っている。主な著書に『1回の会議・打ち合わせで必ず結論を出す技術』など。