「遠隔操作ウイルス」とは、他人のPCへ不正に侵入し、外部から遠隔操作するウイルスのこと。同様の意味で「なりすましウイルス」とも呼ばれている。2012年、インターネット掲示板を通じて「遠隔操作ウイルス」に感染したPCから、犯罪予告の書き込みなどが行われる事件が発生。PCの所有ユーザーが次々と誤認逮捕されたことで、大きな社会問題となった。

「遠隔操作ウイルス」が登場したのは90年代末と言われており、脅威の手口としては特段目新しいものではない。いわゆる「BOT」と呼ばれる悪質なプログラムと同等の手口と考えていいだろう。PCが「BOT」に感染すると、第三者によって、犯罪予告の書き込みや迷惑メールの送信、コンピュータウイルスの配布、特定サーバーへの攻撃などが行われてしまう。つまり、自分の所有するPCが「踏み台」となって、さまざまな迷惑行為を拡散してしまうのだ。

2012年に発生した事件では、インターネット掲示板に書き込まれたリンクから無償ソフトをダウンロードしたことで、「iesys.exe」という名の「遠隔操作ウイルス」に感染した疑いが強いという。さらに犯人は、無作為に複数国のサーバーを経由する「The Onion Router(Tor)」と呼ばれる暗号化ソフトを使って遠隔操作を行ったとして、IPアドレスからの身元の特定を難しくしている。

「遠隔操作ウイルス」から身を守るためには、出どころが不明なURLのリンクを不用意にクリックしないことが重要だ。また、安全が確認されないフリーソフトは安易にファイルを開いたりダウンロードしたりしないようにしたい。すぐに行える対策としては、ウイルス対策ソフトを導入して定義ファイルを常に最新の状態に保つほか、セキュリティホールを修復するためにOSのアップデートを定期的に行うことが挙げられる。

「遠隔操作ウイルス」による一連の事件によって、さまざまなセキュリティの課題が浮かび上がった。自分の身を守れるのは自分しかいない。個人ユーザーにとっても、「遠隔操作ウイルス」の仕組みを理解したうえで、徹底したセキュリティ対策を施す必要があるだろう。