便利なコンビニエンスストア弁当に用いられていることが多い「グリシン」とは

多くの人が一度はお世話になったことがあるであろう、「コンビニ飯」。米が冷めていてもおいしいのは、特殊な精米や炊飯方法などにも秘密がありますが、添加物に工夫をこらしている点も理由の一つに挙げられます。今回は「コンビニ飯」に欠かせないアミノ酸・グリシンについて説明しましょう。

グリシンは「万能アミノ酸」

グリシンは、グルタミン酸などと同じアミノ酸の一種。ただ、調味料として認識している人は少なく、知名度も低いです。グリシンそのものの味は薄い甘み程度で、これといって特徴のなさそうな地味~な添加物です。

グリシンはアミノ酸の中で最も分子構造が単純で、あらゆるタンパク質に含まれています。特にコラーゲンなどのゼラチン質に多く含まれているアミノ酸です。毒性は皆無に等しく、実際の毒性数値もラット(経口)で7,930 mg/kgということで、ヒトにとっては無害・無毒と言えます(ただし単一アミノ酸の異常な大量摂取を長期間続けることには疑問符が付くため、サプリメントのように常用的な使用は控えた方がいいと考えています)。

近年は「快眠アミノ酸」という形でサプリメントなども売り出されています。元来は食品添加物用に大量に合成されたため、安価で購入することができ、サプリメントとして人気なようです。厳密な理由はよく分かっていないのですが、日中に4g以上のグリシンを摂取していると、睡眠時の途中覚醒が起こりにくい睡眠リズムになるという研究報告があります。そのため、「快眠アミノ酸」と言われているようです。

表示名は「アミノ酸等」「安定剤」「ph調整剤」

pH調整作用や細菌の発育を抑える「静菌作用」もあるため、グリシンを用いることで「保存料不使用のおにぎり」といった表示も可能になるわけです。表示ラベルに「アミノ酸等」と書けば、「防腐剤」と書くよりもネガティブ感が無くてすみますしね。その他にも「安定剤」「pH調整剤」などとして記載されています。いろいろな表示ができるのは、それにふさわしいだけの働きを持っているからなのです。

うまさをアップさせる「調味料」にもなる

ネット上では食品添加物用のグリシンがkg単位で買うことができます。米を炊くのに使えば、古米やブレンド米ですら、新米に匹敵するかのような自然な甘さを有するようになります。古米をおいしくすることができるだけに、さまざまな料理に相性の良い調味料となります。

上手に使えば「上等な甘さ」をさらに高めてくれる働きがあります。肉料理などのソースに加えれば、肉のうまみが砂糖などを使うよりもはるかに「自然な」風味になり、画期的なうまさを演出してくれます。

今回のグリシンは「安定剤」「pH調整剤」などと表示されると、「ちょっと怖いな」と感じるかもしれません。でも実際は、非常に使い勝手のよい添加物なのです。成分の名前だけ見て、「不気味」などと思うことなく、その成分の"本質"をしっかりと見ようとする習慣をつけてみてはいかがでしょうか。

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筆者プロフィール : くられ

『アリエナイ理科ノ教科書』(三才ブックス、シリーズ累計15万部超)の著者。全国の理系を志す中高生から絶大な支持を得ており、講演なども多数展開している。近著に『ニセモノ食品の正体』(宝島社)がある。メールマガジン「アリエナイ科学メルマ」ツイッターなどで、日々に役立つ話を無料配信している。