食品添加物に関する本で添加物が最も多いとたたかれることが多い、レトルトミートボール。食品表示を見てみると、ポリリン酸ナトリウムやソルビン酸などの薬品名が並んでおり、「こんなに得体の知れない薬品が入っていて大丈夫なのだろうか……」と考える人も多いでしょう。
しかし、それらの薬剤が何のために配合されているのか。それを知らずに、何だか不気味と一括してしまっていいのでしょうか? 耳慣れない言葉の薬品は恐いとかそんなおおざっぱな判断が正しいのでしょうか? その大事なところを今回は紹介します。
様々な肉をまとめてミンチ
確かに1パック100円前後のミートボールは、もはや肉団子というよりフェイク食品と言ってもよいような配合になっていることがあります。まず、ベースとなる肉は、精肉の課程で骨に残った肉を高圧の水でそぎ落とした大量の水を含んだ肉で、ペットフードなどにも使われていることもあるようです。また、豚や牛以外、馬や羊などの肉や、耳や鼻といった可食部でない部分もまとめてミンチにして「肉」として使います。
それでも原価を下げるために、大豆タンパクと練り込んで代替肉(チキンナゲットの原理と似ている)として形を作り、足りない風味はタンパク加水分解物やチキンエキス、ポークエキスといったコンソメ成分で味を作ります。また、絡めてあるあんかけ部分も、多種多様なゲル化剤や着色料、酸味料で作っているなど、家で調理して作るあんかけとは異なり、姿や味を似せたフェイクとなっていることが多いです。
では、これらの食品は身体に良くないのでしょうか? 筆者の結論から言うと、別に肉のグレードが悪かろうが、耳や鼻が入っていようが、他の家畜の肉が入っていようが、食品として販売できるグレードであると言えます。なおかつ、添加物の使用量が守られているのですから、薬品類が身体に悪影響を及ぼすというのはないと考えていいでしょう。
子供への常食化を避けたい訳
しかし、こういった冷凍食品やレトルト食品は育ち盛りの子供に対して、非常に「おいしい」と感じさせてしまう部分があります。子供の味覚は大人に比べて未発達であり、複雑な味わいより、際だった味を好む傾向があります。
そういう意味で、こうした簡易な食事を常日頃から買い与えるのには問題があるように思われます。本物のミートボールよりやわらかくておいしいという刷り込み、強いては、ニセモノがお袋の味になってしまう……ということが危惧されます。大人になって、本物とニセモノの区別も付かない人間になっては、ちょっと寂しいではありませんか。
筆者プロフィール : くられ
『アリエナイ理科ノ教科書』(三才ブックス、シリーズ累計15万部超)の著者。全国の理系を志す中高生から絶大な支持を得ており、講演なども多数展開している。近著に『ニセモノ食品の正体』(宝島社)がある。メールマガジン「アリエナイ科学メルマ」やツイッターなどで、日々に役立つ話を無料配信している。