同じように見えて実は違うチョコレート

以前、アイスクリームのふりをしたアイス、ラクトアイスについて紹介しました。今回はより身近な食品であるチョコレートをテーマにして紹介します。私たちがひとくくりに“チョコ”と言っているものには、実はいろいろと事情があるんです。

チョコは9種、チェックしたいのは2種

何げなく食べているチョコレートやチョコレート菓子、ちゃんと見られることの少ないパッケージの表示ラベルには、しっかりとその正体が書かれています。チョコレートは通常、カカオ分や脂肪分などの違いによって9種類に分類されています。詳しく知りたい人は「日本チョコレートココア協会」でチェックしてみましょう。

こうした厳格な規格があるのはありがたいことなのですが、それが消費者に伝わっていないというのが現状です。それぞれの明確な違いを覚えるというのは大変なので、大事な2つだけ覚えておけば、質の良いチョコレートを選ぶことができます。

チョコレートと一般的に思われている中には、「チョコレート」と「準チョコレート」という大別できるものが存在するということです。チョコレートとは、本来カカオ由来の油脂やココア分で作られるものです。それに乳脂肪由来のものを足せばミルクチョコレートとなり、より一層風味や口当たりが良くなるのはご存じの通りです。

準チョコにはハードバターが

では、準チョコレートとは何なのでしょうか? 乱暴なくくりで表現すると、「カカオや乳脂肪とは関係のない、全く別の油脂によってチョコレートが薄められて固められたもの」と言えます。

要するに、“チョコレートっぽい何か”であり、一般にハードバターと呼ばれる、ヤシ油やコーン油を化学的に改質した成分が入っています。そう聞くと、「そんなものでチョコレートを上げ底して売って……」と思う人もいるかもしれませんが、準チョコレートだから「粗悪」とは一概に言えないものもあるので注意が必要です。

一年中食べやすい固さに調節

チョコレートは溶けやすく夏場は持ち歩きも困難ですね。でも、逆に冬場は歯が立たないような堅さになっていたら、純チョコだと言われてもちょっと困ってしまいますね。そういったチョコレートの年間を通してちょうど良い堅さにするために、ハードバターの中にはシャープメルト油といった、チョコレートより更に低温で溶けやすい油などを添加して商品としています。

つまり、出荷時期に応じて添加油脂の量を調節し、堅さを調節しています。こうした見えざる企業努力の結果、夏も冬もチョコレートが一定の堅さで食べることができるわけです。

とはいえ、準チョコレート菓子の中には、粗悪なハードバターで限界まで薄めたものも存在します。値段が安くて量もある商品などは、原価的な意味で採算をとるために、薄めざるを得ないわけです。そういったものはトランス脂肪酸を始め、ニキビができやすい栄養素を多く含んでいることが多いので、食べ過ぎには注意が必要なのです。

筆者プロフィール : くられ

『アリエナイ理科ノ教科書』(三才ブックス、シリーズ累計15万部超)の著者。全国の理系を志す中高生から絶大な支持を得ており、講演なども多数展開している。近著に『ニセモノ食品の正体』(宝島社)がある。メールマガジン「アリエナイ科学メルマ」ツイッターなどで、日々に役立つ話を無料配信している。