2016年1月から運用が開始される「社会保障・税番号制度(マイナンバー制度)」だが、まだまだ、「マイナンバー制度って何?」と、制度についてよく知らない人も多い。そこで、この連載では、マイナンバーの疑問にQ&A形式で解説する。第3回では、総務・人事編をお届けする。なお、この連載の内容は2015年3月末の情報に基づいている。その後、変更になる可能性があることをご了承いただきたい。

41.マイナンバーを記載しなければならない書類は何か?

国税に関する帳票などは国税庁のホームページで、社会保障に関する届出書類の様式などは厚生労働省のホームページで公表されている

42.従業員のマイナンバーは、いつまでに取得しなければならないのか?

行政機関へ各種届出用紙を提出する時までとなる。2016年1月の給与の支払いから対象となるが、実際には2017年の1月に提出する源泉徴収票に間に合えばよい。

43.従業員が結婚や養子縁組で名前が変わった場合、マイナンバーも変わるのか?

マイナンバーは個人に割り振られる番号であるため、結婚や養子縁組といったことでは変化しない。基本的に出生時に付与された番号を一生利用する。

44.長期で海外赴任した従業員は、帰国後にマイナンバーが変わるのか?

日本国籍を有する者が海外に長期滞在しても、マイナンバーは変化しない。基本的に出生時に付与されたものが変化することはない。

45.マイナンバー制度の開始時に海外にいた従業員は、マイナンバーをどうやって受け取ればいいのか?

日本に住民票がある状態での海外赴任ならば、住民票住所に送付される。住民票がない場合には制度開始時には発行されず、住民票が作成されたときに発行される。

46.従業員から源泉徴収のため取得したマイナンバーを、社会保険など他の手続に流用できるのか?

源泉徴収のためのみと明示して取得したマイナンバーを、別の用途に流用することはできない。利用目的の必要な範囲を超えた利用とみなされ、個人情報保護法違反となる。

47.従業員からマイナンバーの提示を受ける際、源泉徴収や社会保険など手続の種別ごとに取得しなければならないのか?

利用目的の明示時には、複数の目的をまとめて明示することが可能であるため、源泉徴収や社会保険といった予想される用途については包括的に明示して取得することが可能。

48.従業員がマイナンバーの提示を拒んだ場合、記載せず手続は可能か?

基本的には法令で定められた義務だが、提示を強制することはできないため、強硬に拒まれた場合には書類提出先の機関に問い合わせ、指示に従うことで可能となる。

49.従業員がマイナンバーの提示を拒んだ場合、罰則はあるのか?

現状では規定されていない。十分な説明と説得を行った上でも拒まれた場合は、書類提出先の機関に従う。

50.従業員がマイナンバーの提示を拒んでいるが、強制的に提示を求められるのか?

強制はできないが、説明と説得の必要がある。制度の十分な理解を促し、法令で定められた義務であることを説明して提示を求める必要があるが、再三の説得の上でも拒まれた場合には、書類提出先の機関に従う。

51.従業員にマイナンバーの提示を求める場合、どういった手続が必要か?

利用目的を本人に通知、または公表して、提示を求める。利用目的は複数をまとめて明示することは可能だが、明示後に追加することはできない。その上で、マイナンバーの提示を求め、本人確認を行う必要がある。

52.従業員にマイナンバーの提示を求める場合、本人確認はどのようにすればよいのか?

マイナンバーと身分証明書と本人の紐づけが必要。顔写真入りの個人番号カードがある場合には、そのカードと本人。通知カードのみの場合は、通知カードと運転免許証のような顔写真入り身分証明書が基本となる。顔写真入り身分証明書がない場合、年金手帳や健康保険証などを複数揃えることで身分証明書代わりとすることもできる。対面または郵送での種類確認ができない場合は、一度対面等で本人確認の上作成している個人情報ファイルの確認を行う場合等に限って、電話で個人にしか知り得ない情報を複数聞き取るなどの手法も認められている。

53.従業員の本人確認は一度行なえばよいのか?

マイナンバーが記載されている書類の提出を受けるたびに必要。扶養控除申告書類など定期的に提出される書類に記載されるため、定期的に本人確認を行う必要がある。また、健康保険関連の給付申請や財形貯蓄の手続きなどを行う際にも、その都度行う必要がある。

54.正社員以外の従業員のマイナンバーも取得する必要があるのか?

ある。正社員、派遣社員といった区分だけでなく、アルバイトなども含めて雇用関係にあるすべての人から企業はマイナンバーの提供を受けなければならない。

55.本人確認は毎回厳密に行う必要があるのか?

ある程度簡略化できる。番号確認のためには通知カードや個人情報カードの提示が基本的には必要だが、遠隔地にいる場合など、カード提示が難しい場合には過去に取得した情報との照合でもよい。また、身元確認については雇用関係にある事などから本人であることが明らかに判断できる場合には改めて書類を提出する必要はない。

56.扶養家族のマイナンバーの提示を求める場合も、本人確認が必須か?

国民年金第3号被保険者の届け出に関してのみ、企業が対象者の本人確認を行う必要がある。その他の扶養家族に関しては、従業員が本人確認を行うことで企業による実施は不要となる。

57.扶養家族の本人確認が必要な場合は、扶養者に任せて良いか?

国民年金第3号被保険者でない扶養家族については、従業員に任せてよい。

58.従業員の結婚や出産とマイナンバー管理は関係があるのか?

マイナンバーは結婚によって姓や住所が変わっても変更されないが、結婚や出産等によって扶養家族が増えた場合には扶養家族のマイナンバーを企業が取得し、管理する必要がある。また扶養者が扶養からはずれた場合や、子が独立して扶養対象ではなくなった場合など、移動があった場合には逐次確認しなければならない。

59.本人確認は、異なる事務内容などマイナンバーの提供を受ける度に必要か?

必要。マイナンバーを記載した扶養控除申請書を毎年提出させる場合には、その都度必要となる。ただし2回目以降は初回に本人確認を行って取得した番号との照合等で簡略化することは可能。

60.従来の被保険者番号はどうなるのか?

厚生年金や健康保険の被保険者番号は変わらず記載が必要になるケースが多い。また、雇用保険の被保険者番号については記載が省略されてマイナンバーで処理することになる場合もある。

61.従来の基礎年金番号はどうなるのか?

従来は基礎年金番号の記載が必要だった書類については、基礎年金番号の記載を省略してマイナンバーの記載に変更されるものもある。

62.国税関係の書類の様式は、いつわかる?

平成27年3月末から年末に書けて、順次様式が確定される。一部の事前情報はすでに提供されている。国税庁のホームページを参照。

63.国税関係の書類にマイナンバーを記載する必要があるのはいつからか?

平成28年1月1日の属する年分以降の申告書から必要となる。

64.雇用保険関係の書類の様式は、いつわかるのか?

すでに様式案については公開済。確定情報は順次公開される。厚生労働省のホームページを参照。

65.健康保険関係の書類の様式はいつわかる?

すでに様式案については公開済。確定情報は順次公開される。

66.雇用保険関係の書類にマイナンバーを記載する必要があるのはいつからか?

平成28年1月1日提出分から。

67.健康保険関係の書類にマイナンバーを記載する必要があるのはいつからか?

平成29年1月1日提出分から。

68.社員証やIDカードの代わりに、個人番号カードを使ってもよいか?

裏面に記載されたマイナンバーを書き取ったりコピーしたりせずに、カードの表面のみを利用するならば社員証等として利用することはできる。

69.社員番号の代わりに個人番号を使って管理してもよいか?

できない。マイナンバーは法律や条令で定められた社会保障、税、災害対策の手続き以外で利用することはできない。

70.従業員から提示を受けたマイナンバー情報は、どのような管理が必要か?

漏洩、滅失、毀損を防止するなど、適切な管理のために必要な措置を講じる必要がある。具体的な措置については、特定個人情報保護委員会のガイドラインを参照。

71.情報漏洩が発生してマイナンバー情報も漏れたようだ。どのような措置が必要か?

マイ・ポータルでいつ、誰が、誰に対して、何のために授受したのかという記録などを確認。漏洩されていると感じたら、番号の再発行のための申請を行う。

72.従業員が収集したマイナンバー情報を目的外利用した。罰則はあるのか?

ある。番号法として罰則が規定されており、内容によって懲役または罰金が規定されている。特に関係事務に従事していた者が業務上知り得た番号を不正に他社に提供した場合には懲役と罰金が併科されることもある。

73.従業員がマイナンバーを変更した場合、事業者はそれを知ることができるのか?

マイナンバーが変更された時には申告するように従業員に周知しておき、申告してもらう。同時に、一定期間ごとに変更がないかを確認しなければならない。毎年の扶養控除等申告書などをマイナンバー取得の機会とし、変更の有無を確認するとよい。

74.従業員が子会社などに出向や転籍する場合、マイナンバーを出向先や転籍先に提示してもよいか?

いけない。出向・転籍元の事業者が情報提供を行なうことは番号法の違反となるため、出向・転籍先の事業者が本人から直接提供を受ける必要がある。事業者同士が委託契約または代理契約を交わして個人番号関係事務の一部を受託している場合に限っては、出向・転籍元の事業者が改めて本人確認を行った上で特定個人情報を提供することは認められている。しかし、すでに保有している情報をそのまま渡すのは目的外利用になるため、改めて本人から番号の告知を受ける必要がある。

75.合併などで事業を継承した場合、従業員のマイナンバー情報も継承してよいか?

合併などで事業が継承されている場合には、継承先にマイナンバーを含む特定個人情報を提供することができる。

76.マイナンバーを扱う業務の委託や再委託はできる?

業務の全部又は一部を委託することは可能。また、委託を受けた者は、委託を行った者の許諾を受けた場合に限り、再委託できる。委託を行った場合は、個人情報の安全管理が図られるように、適切な監督を行う必要がある。