ガソリンが高い! 本当に高い。スタンドで給油するたびにため息が出る。いっそのことクルマに乗るのを止めようかと思うが、やっぱり必要だし、まったく乗らないというわけにはいかない。燃費を心がけて運転するが、それにも限度がある。そこで考えた。"ハイオク仕様のクルマにレギュラーを入れたらどうだろう?" 1L(リッター)で10円も違うのだから、これは効果があるはずだ。

この記事では指定外のガソリン使用をテーマに書いていますが、いずれもメーカーの保証外になります。なにかトラブルが発生しても、筆者および編集部は責任が負えません。あくまで自己責任で試してください。

仕様地で異なるオクタン価

日本で販売されている輸入車は、ほとんどハイオクガソリンが指定されている。これは主に国によってガソリンのオクタン価が異なるためだ。日本のガソリンはレギュラーがオクタン価「89」以上、ハイオクが「96」以上とJIS規格で定められているが、実際にはレギュラーで「91」程度、ハイオクで「98~100」程度のようだ。対して欧州では、オクタン価「91」「95」「98」のガソリンが販売されており、中でも「95」がメインに使われているという。

指定されたオクタン価より高い(数値が大きい)ものを入れても基本的に問題は起きないが、オクタン価の低いものを入れるとトラブルの原因になる。つまり欧州車が日本に入ってくると、必然的にハイオクガソリンが指定されるわけだ。ちなみに米国では「87」「89」「91」のオクタン価が使われており、日本や欧州に比べて低め。実際、日本でレギュラー指定となっているアメリカ車もけっこうあるようだ。

2008年6月24日、神奈川県内のスタンドで撮影。全国平均はもう1~2円安いようだ。それにしてもこれは異常なほど高い、と思う

最近増えてきたセルフスタンド。といっても、通常のスタンドがセルフになるというパターンが多い。セルフだからといって、とりわけ安いわけではない

セルフスタンドの給油機。自分で給油するので、気がねなく混合できる。しかしガソリンを混ぜても大丈夫かどうかは保証の限りではない

レギュラー・ハイオク半分づつで欧州仕様?

さて、私が乗っているクルマはフォルクスワーゲンの「ヴァナゴン」。おもしろくもなんともない四角いスタイルに、やたら広い室内のワンボックス車だ。もう購入から10年以上が経過した。どうしてヴァナゴンを選んだかというと、家族が6人に増えたために、全員が長距離でも疲れないようにちゃんと座れることが必要だった。当時、そういったクルマは少なかった。もうひとつ、仕事がらバイクを運ぶことが多かったのも大きな理由。ヴァナゴンはセカンドシートとサードシートが簡単に取り外すことができ、するとバイク2台くらいは積めてしまうのだ。3つめとして、ヴァナゴンの前に「ゴルフ」に乗っていて、ワーゲンが好きだったという理由もある。

このヴァナゴンも指定ガソリンはハイオク。しかし聞いたところによると、彼の地ではトラックと変わらない実用車として使われており、レギュラーガソリンでも問題ないという(あくまで噂)。100%レギュラーは不安だとしても、欧州と同じ「95」程度にすれば、問題ないのではないか? 20L+20Lというように、レギュラーとハイオクを半分づつ入れれば「95」程度になのではないか? と思い立った。普通のスタンドで「半分づつね~」とオーダーするのはちょっと恥ずかしいが、セルフスタンドなら無問題。さっそく"ガソリン・ハーフ&ハーフ作戦"を試してみた。

すると、なんだか調子が良くなってしまった。エンジンが心持ち軽くなったように感じる。驚くことに燃費もよくなった。それまで高速道路で他のクルマに迷惑をかけながらの燃費運転で、なんとか10km/Lに届いたのが最高記録だったのに、ハーフ&ハーフ以降は、ちょっと気をつければ首都高でも10km/Lを超えるようになった。知り合いの整備士に聞いたところ、調子が良くなる可能性もあるという。「エンジンが設計された本来のガソリン(オクタン価)になれば、それだけ効率よく燃焼するのかもしれないね。でも、8割がた気分的なものじゃないの?」とのことだった。

この"ガソリン・ハーフ&ハーフ作戦"、実は昨日今日始めたのではなく、もう1年以上続けている。まったくトラブルは発生していない。

おもしろくもなんともないスタイルの「ヴァナゴン」。このモデルはほんの数年間販売されただけで、現在は輸入されていない(個人輸入を除く)

室内の広さがヴァナゴンの魅力。写真はシートを外してバイクを積み込んだところ。オフロードバイクなら、うまくすると3台は積める

ヴァナゴンは燃料計を装備している。4年ほど前、初めて10km/Lに届いたのがうれしくて、つい写真を撮った。いまはけっこう頻繁に記録するので撮影していない

メーカーに質問。レギュラー入れても大丈夫?

自分のクルマの話ばかりしていても仕方がない。広く勧めたいところだが、やはりトラブルが不安だ。そこで各輸入車メーカーにレギュラーガソリンを入れてもいいものか、問い合わせてみた。質問は3つ。

  1. 日本で販売しているモデルはハイオクガソリン指定ですか?
  2. それにレギュラーを入れてもいいでしょうか?
  3. 半分づつ入れるという方法を考えましたが、どうでしょうか?

フォルクスワーゲン

  1. 現在販売しているモデルは、すべてハイオクガソリン指定です。
  2. クルマの寿命を考えたら止めていただいたほうがいいですね。指定された燃料を入れてください。
  3. それでも何か起ったときに、保証の対象外になってしまいます。

アウディ

  1. はい。すべてハイオクです。
  2. レギュラーガソリンを使用することはできますが、出力や燃費の低下などの現象が発生します。従って、レギュラーガソリンはハイオクガソリンが入手できない時などの緊急時にのみ使用し、やむをえずレギュラーガソリンを使用する場合は、フルスロットルにしたり、エンジンを高回転にすることは絶対に避けるようお願いしております。また、レギュラーガソリンでは指定されたオクタン価に達していないため、常にノッキングが起きている状態になります。もちろんノックセンサーを装着していますが、エンジン本体に悪影響を及ぼす可能性もあります。アウディのエンジン性能を十分に引き出すためにはハイオクを使用する必要があります。
  3. ドイツを例にとりますと、一般的にガソリンは3種類(オクタン価はそれぞれ91、95、98)が販売されています。アウディの場合、本国仕様でオクタン価98を指定している車種がございます。環境保護およびエンジンの損傷を防ぐためにも、適切な種類のガソリン(日本国内においては無鉛ハイオクガソリン)の使用をお願いしております。

メルセデス・ベンツ

  1. E320 CDI(セダン、ステーションワゴン)を除き、すべてハイオク指定です。E320 CDIは軽油(ディーゼル)です。
  2. エンジンを損傷するなどの不具合が発生する恐れがあります。
  3. 弊社では推奨しておりません。取扱説明書でも無鉛ハイオクガソリンを指定しております。

ポルシェ

  1. すべてハイオク指定です。
  2. 止めていただいたほうがいいですね。保証できなくなります。
  3. 同上

ジャガー

  1. ハイオクガソリンです。
  2. オクタン価だけでなく、成分も関係してきます。ハイオクを入れていただくようお願いします。
  3. テストもしておりませんので……。

ルノー

  1. ハイオクです。
  2. お勧めできません。ハイオクを入れてくださいね。
  3. いいところに目をつけましたね。でも止めてください。

ボルボ

  1. ハイオクガソリン指定です。
  2. お勧めしておりません。ハイオクをお願いします。
  3. 同上

フィアット・アルファロメオ

  1. ハイオクです。
  2. ダメですね。保証できなくなります。
  3. 考えたことがありません。

クライスラー

  1. ハイオク指定です。
  2. お勧めできません。
  3. なんとも答えようがないです……。

以上、アウディとメルセデス・ベンツはメールで、その他は口頭(電話)でコメントをいただいた。妙な質問にも真摯に答えていただいた各メーカーには頭が下がるばかり。ありがとうございました。また、上記以外のメーカーにも連絡を入れたが、担当者不在などで連絡が取れなかった。

さて、予想はしていたが、全滅である。当たり前といえば当たり前だが、保証しなければならないメーカーとしては、「どうぞご自由に」と言えるものではないだろう。アウディの返答の2.でレギュラーが使えなくもないとコメントをいただいたが、これも非常時限定。多かれ少なかれ、他メーカーのクルマもこれに近い状態ではないだろうか。また、詳しく解説いただいたアウディには改めてお礼を申し上げたい。

とまあ、これを書いていて、「なんだか尻すぼみの記事だな~」と思っていたのだが、最後にいただいたコメント(下記)には驚いた。ちょっと勇気づけられた気がした。

フォード

あまり知られてないのですが、現在、当社が日本で販売しているモデルは、すべてレギュラー指定です。マスタングも、エクスプローラーも、すべてレギュラーガソリンをそのまま入れてください。まったく問題はありません。

フォードの「マスタング V8 GT クーペ プレミアム」。304psのV8エンジンを搭載するが、レギュラー仕様

こちらも300ps近い「エクスプローラー V8 エディバウアー」。レギュラーガソリンでOK

西尾 淳(WINDY Co.)