2012年スマートフォン時代にプリインストールアプリは必要? 不要?

スマートフォンのプリインストールアプリに対してどのように思っていますか? おそらく、プリインストールアプリは不要という回答が多いのではないでしょうか。「利用しないアプリも多いし、削除できないし…」といった意見が聞こえてきそうです。

今回MMD研究所では、スマートフォンのプリインストールアプリについて、フィーチャーフォンユーザーとスマートフォンユーザーを対象に調査を実施しました。この調査結果から、スマートフォンにおけるプリインストールアプリが果たす役割について考察します。

12月14日に発表されたディーツーコミュニケーションズの調査(モバイル利用動向調査 2011年10月調査)によると、スマートフォンユーザー比率が20%を超えたという結果が得られています。

これはキャズムを超え、ますます商品が普及していく段階になっています。今後は、単純な機種のバージョンアップではなく、デバイスそのものが変わるスマートフォンについて、情報リテラシーのあまり高くないユーザーの動向が注目されます。

これまでのスマートフォン関連の調査結果は、いわゆるイノベーターやアーリーアダプターと呼ばれる新しいデバイスや機能に積極的な層のものであり、アプリのダウンロードについても活発な層だと考えています。

実際にMMD研究所が12月14日にリリースした「SNS及び、アプリ課金に関する実態調査」において、スマートフォンへの変更後のゲーム頻度を聞いたところ、iPhoneユーザーの58.6%、iPhone以外のスマートフォンユーザーの36.9%が「ゲームをする頻度が増えた」と回答していることからも、この傾向がわかります。

しかし、今後スマートフォンへ移行するユーザーは、スマートフォンに対する知識が浅いユーザーも少なからずいることを考えると、アプリのダウンロードに対して慎重になる可能性が高く、スマートフォン購入時に装備されているプリインストールアプリが重要な役割を果たすと考えています。

なぜ、プリインストールアプリが不要といわれるのか?!

プリインストールアプリは不要か? そんな疑問を抱き、スマートフォンユーザーを対象に、プリインストールアプリの利便性について聞いたところ、「あまり便利だと思わない(7.0%)」「まったく便利だと思わない(5.0%)」と不便だと思っているユーザーは、わずか12%という結果になりました。

つまり、残りの約9割のユーザーは、プリインストールアプリに対して「便利」という肯定的な意見を持っていることがわかりました。しかしながら、プリインストールアプリに対しては、「削除できないこと(54.8%)」「動作が重くなること(36.0%)」といった不満点も挙げられています。

要するに、ユーザー感情としては、プリインストールアプリそのものに対しての不満を感じているわけではなく、プリインストールアプリが削除できないことに弊害を感じて「自由度が低いのであればプリインストールアプリは無い方がよい」という不要論を唱えていることがわかります。

初期状態で何もできないよりは、最初から入っているアプリで楽しめる方が嬉しいですし、それが自分に合っているものなら継続的に使いたいでしょう。実際に今回の調査でもプリインストールアプリを便利だと回答をしたユーザーは、「最初からアプリが入っていることで、すぐに利用できた」ことをその理由に挙げています。

ただし、継続してスマートフォンを利用していく中で、情報リテラシーが向上し、自分仕様のスマートフォンにしたくなったときに、利用しないアプリがいつまでも存在することがユーザーにとって不便と感じさせるでしょう。

フィーチャーフォンユーザーもプリインストールアプリに肯定的

次に、フィーチャーフォンユーザーに対して、スマートフォンに機種変更した際のプリインストールアプリの利便性について尋ねたところ、「すごく便利だと思う(42.3%)」「まぁまぁ便利だと思う(14.8%)」と6割近いユーザーが肯定的な回答をしています。

現時点でスマートフォンに変更していないフィーチャーフォンユーザーが、今後スマートフォンへ移行すると考えるならば、プリインストールアプリの必要性は高いと思っています。

今回の調査結果から、スマートフォンのプリインストールアプリについてまとめると以下になります。

  • プリインストールアプリのアプリそのものは便利と感じている
  • 問題なのは、削除できないこと(もしくは削除しにくいこと)
  • 今後マジョリティ層のスマートフォンへの移行を考えるとプリインストールアプリは重要

2012年フィーチャーフォンからスマートフォンに移行する際に、デバイスの劇的な変化に利用者が対応するには、プリインストールアプリはひとつの重要な要素と考えています。そして、利用者の利便性を追求するのであれば、プリインストールアプリの数は豊富にそろえる一方で、ユーザーが自由に利用・削除できる機能を備えることが望まれます。

引き続き当研究所では、スマートフォンアプリの利用について、定期的に調査を実施いたします。なお、今回の調査では上記データのほか、「よく利用するプリインストールアプリジャンル、アプリ名」「よく利用するスマートフォンアプリジャンル、アプリ名」などの項目を聞いています。

今回引用した調査データは当研究所のWebサイト(iPhoneユーザーの58.6%、スマートフォンユーザー(iPhone以外)の36.9%がスマートフォンに変えてからゲームをする頻度が増えたと回答 / スマートフォンユーザーの約9割が「プリインストールアプリが便利」と回答)で一部公開しています。

調査テーマに関するご要望については、Facebookの当研究所ファンページで受け付けていますので、お気軽に声をかけてください。

<本稿執筆担当 : 松田 健太郎>

著者紹介

MMD研究所

MMD研究所(モバイル・マーケティング・データ研究所)は、モバイルユーザーマーケットのリアルな動向を調査・分析し、社会へ提供することを目的として2006年9月に設立されたマーケティングリサーチ機関(運営は株式会社アップデイト)。本コラムでは、同研究所による調査データをもとに、ヒットにつながる効果的なマーケティング手法について考察していきます。