すでに飽和状態となってしまったApp Storeで、iPhoneアプリのダウンロード数を伸ばすにはどのようにすればいいのでしょうか? 本コラム第1回目の今回は、iPhoneアプリの効果的なプロモーション方法について考察してみます。

App Storeは飽和状態……

日本語対応のiPhoneアプリがまだ少なく、公開するとある程度のダウンロード数が見込めた夢のような時代はあっという間に過ぎ去り、App Storeの新着情報やランキングはすでに飽和状態となっています。

そのような状況で、公開したiPhoneアプリのダウンロード数を伸ばし、App Storeのランキング上位に食い込ませるにはどのようにすればいいのでしょうか?

当研究所でも最近、アプリ開発サイド・供給サイドのみなさんから、そのような課題に関する話をよく耳にするようになりました。

一方、iPhoneユーザーの視点に立った場合、有料無料アプリが混在し、絞り込み検索ができず、お世辞にも探しやすいとは言えない現在のApp Storeのユーザビリティに辟易している方も多いのではないかと思われます。かといって、App Storeのユーザービリティが改善される気配はありません。

iPhoneアプリのプロモーションは、やはり各サプライヤーが自力で行うしか方法がないというのが実情なのです。

ユーザーは何を見てアプリをダウンロードしているのか?

とはいっても、iPhone向けの広告媒体はまだまだ種類が少ないですし、もっと言うと、「できれば広告費をかけずにプロモーションしたい」というのが多くのサプライヤーの考えだと思います。

さてそうなってくると、「iPhoneユーザーは、はたして何を見てiPhoneアプリの情報を得て、選んでいるのか」が非常に重要になってきます。

当研究所にて実施した直近(2010年8月度)のiPhoneユーザー調査によると、男性ユーザー、女性ユーザーともに最も参考にしているのは「WEBのニュースサイトやアプリ紹介サイトのレビュー」で、約68%のiPhoneユーザーが「参考にする」と回答しています。

ここで興味深いのは、「App Storeのランキング」や「App Storeの新着情報」を参考にするという回答を上回っている点です。これはおそらく、前述のようなApp Storeのランキングや新着情報の見づらさ、不便な検索機能、情報の少なさに不満を抱いているユーザーが少なからず存在するということの裏付けではないかと推測しています。

iPhoneアプリをダウンロードする際は、App Storeのランキングよりもニュースサイトや紹介サイトのレビュー記事を参考にしているユーザーが多いという結果に (資料: MMD研究所)

ただし、同じWebのレビューでも「個人ブログの情報」を参考にするというユーザーは約25%とさほど多くはありません。つまり、一概に「Web上の口コミを参考にしている」とは言えない点には注意が必要です。ちなみに個人発信の情報という観点では、「TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアの情報」もほぼ同じ比率(約28%)となりました。

女性は雑誌や書籍の情報を参考にする割合が高い

当研究所では、男女の調査結果を比較してみたのですが、女性は男性よりも「雑誌、書籍のレビュー」を参考にしているということがわかりました(この項目に対する回答割合:男性 約24%/女性 約36%)。

調査時期と前後して、いくつかの女性向け雑誌や書籍で「iPhone特集」があったことも影響しているのかもしれませんが、毎週どこかの男性誌で特集が組まれているにもかかわらず、男性の回答が約24%に留まっていることを考えると、女性向けiPhoneアプリの雑誌、書籍でのプロモーションはアリと言えるかもしれません。

「効果が見込める順」のお勧めプロモーション方法

では、「実現すれば効果が見込める順」に(有料広告を除く)iPhoneアプリのプロモーション手法をざっとまとめてみましょう。

(1) Web系ニュースサイト、アプリ紹介サイトへのリリース投稿
(2) TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアを活用した草の根プロモーション
(3) 出版社へのリリース投稿
(4) ブログネットワークでの草の根プロモーション

また、今回の調査結果を別の角度から見てみると、「友人・知人の口コミ」と「雑誌、書籍のレビュー」のほかは、すべてWeb上の情報がベースになっています。

筆者の個人的な印象では(iPhoneアプリのレビューサイトを除くと)、まだまだSEOを活用し、「iPhone」「アプリ」「ビジネス」などの複合ワードで上位表示を狙う余地があるように思います。

ちなみに、同調査における「iPhoneユーザーの月間ダウンロードアプリ数」や、その項目内の「有料アプリのダウンロード数」は以下の通りとなっています。

ユーザーが1ヵ月にダウンロードするiPhoneアプリの数 (資料: MMD研究所)

ユーザーが1ヵ月にダウンロードする有料アプリの数 (資料: MMD研究所)

開発は比較的容易だとされるiPhoneアプリですが、iPhoneユーザーが1ヵ月にダウンロードする5つ前後のアプリの中に食い込むのは、そう簡単ではなさそうです。

なお、最近になってiPhoneアプリ向けの広告枠のリリースがいくつか見られるようになってきましたので、当研究所では時期を見て、「広告を経由したiPhoneアプリのダウンロード経験」についても調査してみたいと思っています。

<本稿執筆担当: 田川悟郎>

<参考> iPhoneアプリのダウンロード数に関する実態調査 - MMD研究所

著者紹介

MMD研究所

MMD研究所(モバイル・マーケティング・データ研究所)は、モバイルユーザーマーケットのリアルな動向を調査・分析し、社会へ提供することを目的として2006年9月に設立されたマーケティングリサーチ機関(運営は株式会社アップデイト)。本コラムでは、同研究所による調査データをもとに、ヒットにつながる効果的なマーケティング手法について考察していきます。