デザインは、完成までのプロセスが重要です。アイデアは突発的に発生するかもしれませんが、そのアイデアを具現化していくには多くのステップを踏むことになります。また、ディレクター、同僚、そしてクライアントと情報やビジョンを共有することによって初めて形になっていくわけです。つまり、完成までのプロセスをいかに透明化するかが、よいデザインを生み出すための鍵になります。ウェブを活用する機会が多くなり、完成品ではないプロトタイプを共有するツールがいくつか出てきてはいるものの、結局メールでやりとりしている方が多いのではないでしょうか。

メールは手軽ではありますが、同じファイルが複数に散らばってしまうだけでなく、すべての人が同じように意見を共有するのが難しいです。また、他のメールも飛び交ってるわけですから、見逃してしまう可能性もあります。修正したファイルを再び送信しても、比較しにくいだけでなく、誰がその修正の依頼をしたのかを把握するのも難しいです。

様々なファイル共有やプロジェクト管理をするためのウェブアプリケーションは幾つかあります。しかしそれらは、機能が足りなかったり多すぎたりと「デザイン案を共有して意見交換をする」というタスクを簡単に行えるツールがありませんでした。今回紹介する Backboard は、そのタスクを実践するために作られた、シンプルで見た目も良いサービスなのです。

会員にならなくても右側にある「Get feedback」からいきなり始めることが出来るので、とりあえずひとつ作ってみましょう

Backboard は、アップロードした作品やウェブサイトを共有してディスカッションが出来るだけでなく、簡易版のバージョン管理機能があり、今までアップロードしたファイルをすべて保存する仕組みになっています。つまり、前のバージョンからどのように変化したのかもその場で確認することが出来るわけです。ブログのようなシンプルなコメント機能ではありますが、どのタイミングで新しいファイルがアップロードされたのかもコメント一覧と一緒に表示されます。そのため、話し合いのどのタイミングでデータ変更がなされたのかも視覚的に理解出来るのです。

共有できるのはファイルだけでなく、ウェブページや文章も可能です

共有するデータを選択後、タイトル、詳細を書き込み、公開設定を決めればスタートできます

会員にならなくても共有スペースを作ることが出来るので、まずは試しにひとつ作って使い方に慣れると良いでしょう。共有設定もアドレスを知っていたら誰でもアクセスするオープンなバージョンや、パスワード付きにしたり、招待した方のみ観覧できるといった細かい公開設定が出来ます。また、参加者が完成品を承認するかどうかを確認するといったデザインプロセスにはぜひ欲しい機能も実装されています。

ほとんどの場合、無料会員で十分ですが、本格的に仕事にも導入していきたいという場合はセキュリティを考えて有料会員になると良いでしょう。「Select」ボタンをクリックすると会員登録画面が表示され、「名前」、「メールアドレス」、「パスワード」を設定して完了です

無料と有料の会員がありますが、いずれも無制限に共有スペースを作ることが出来るだけでなく、何人でも招待することが可能です。ただし無料会員だとファイルサイズが 5MB 以上のファイルをアップロードすることが出ません。また、有料版にあるいくつかのセキュリティ機能がありません。会員にならなくてもスペースは作れるものの、複数のスペースを管理したい場合は会員になることをお勧めします。

画面中央に共有しているデータ。画面下の右側がディスカッションボードになっており、参加者がコメントを書き残せるようになっています。左側にはアップロードした際に入れた詳細情報と、新しい版をアップロードするときに使う「Add New Version」ボタンがあります

招待するメールアドレスは 「Outlook」 や 「Gmail」 をはじめいくつかのオンラインサービスとの連携がとれるので、覚えるわざわざ覚える必要がありません。Backboard 内でグループ管理も可能で、プロジェクトごとに違うグループを作っておくことも出来ます

招待した方には URL 付きのメールが届きます。また、誰かがコメントを残した場合もメールが届くようになっているので、見落としてしまったり、必要以上にサイトへアクセスする必要もありません

アップロードしたファイルに書き込みをしたり、マークを付けるといった高度な機能がなく、基本的なやりとりはテキストになるので、物足りなく感じるかもしれません。しかし、作品の完成までのプロセスを共有するというひとつのタスクをやり遂げるためにシンプルに作られているだけでなく、使いやすくするための細かい作り込みがなされています。共有する相手がパソコンを使いこなしているとも限らないので、Backboard くらい機能をそぎ落としてあったほうが入り込みやすいかもしれません。メールでのファイルのやりとりにうんざりしている方は、ぜひ Backboard を試してみてはいかがでしょうか。

新しい版のアップロードもワンクリックで行えます。新しい版ごとにコメントをつけることが出来るので、何がどう変わったのかもわかりやすいです。新しい版が加わるとアップロードしたデータの左下にタブが出来るので、前の版に戻ってみることも出来ます

ブログのコメント並に簡単に書き込めるフィードバック。書き込まれたコメントに返信することが可能。スレッド形式で表示されるので情報が追いやすいです。また、どのタイミングでファイルがアップロードされたのかもわかります