おばけたちがやってくる夏を乗り越え、こむぎこ寺にゆったりとした時間が流れています。こねたものたちも今週はゆるっと過ごしているようですが、そんな時間にも深まる境地があるのです。

こねりが喋っている「且緩々」(しゃかんかん)という言葉。「まあ落ち着きなさい」「焦らずゆっくりやりなさい」といった意味の禅語で、少しでも早く悟りたいと焦るあまり、師匠に立て続けに質問を浴びせる若い僧にかけられた言葉とされています。「悟ること」への執着が、修行の妨げになるということでもあるのでしょう。

何か新しいことを始めた時、技術を習得しようとする時や勉強をする時など、早く成果を上げたいと焦ってやるべきことを詰め込み過ぎたり、いきなり高度な内容に挑戦しようとしたりすると、かえって挫折や失敗を招きやすくなるものです。

何かを習得するにあたって上手くいかないことが多いと感じる時は、求める成果が大きすぎて、途中にある小さな成果を達成していることを見落としていないか、焦るあまり自分に現在の能力以上のことを求めすぎていないか、「且緩々」という言葉を思い出しながら、見直してみるといいかもしれません。

また、考えやアイデアを深めるには、あえて暇な時間も必要だったりします。「学校」を意味するSchoolの語源は「スコレー」という「自分自身を充実させる暇(余裕)」を意味するギリシャ語で、この時間があったからこそギリシャで哲学が深まったと言われているのです。

■今回登場したのは、禅のぼさつが宿った「こねり」

■著者紹介

Jecy
イラストレーター。LINE Creators Marketにてオリジナルキャラクター「こむぎこをこねたもの」のLINEスタンプを発売し、人気を博す。その後、「こむぎこをこねたもの その2」、「こむぎこをこねたもの その3」、「こむぎこをこねたもの その4」をリリース。そのほか、メルヘン・ファンタジーから科学・哲学まで様々な題材を描き、個人サイトにて発表中。

「週刊こむぎ」は毎週水曜更新予定です。