「老麺法」という生地の製法があります。作った生地の一部を保存しておき、また別の生地をこねる時に混ぜて使うというもので、残しておいた古い生地(老麺)に蓄積された酵母が新しい生地の発酵を促進するのだそうです。
何かが為された時に余力のようなエネルギーが残り、それが次の行いに影響する。仏教の哲学では、そんな老麺のような発想で人の行為を捉えています。
「業(ごう/カルマ)」と呼ばれるもので、人の行動・発言・思考と、それに伴って発生し、後の出来事に影響する潜在的な力のことを指します。
行為は成された瞬間に完結するものではなく、後々にも何らかの結果をもたらすものである、というわけです。
例えば、何かやらなければならないことをサボるという行為をすることで、その行為の痕跡が自分の中に残り、後々に「またサボってもいいや」という思いを誘発しやすくなります。 朝ギリギリまで眠ってから家を出るとか、締切ギリギリの作業で間に合わせるという経験をすると、自分の中に残って「次はもっと遅く起きても大丈夫」「まだギリギリでも大丈夫」という方向に自分の意識が向かいやすくなり、ついには遅刻してしまう…なんてこともあるのではないでしょうか。
また、思考がネガティブなループに陥っていると、それが無意識のうちに発言や行動にも表れてきたりするものです。
もちろん、このように自分を良くない方向に持っていく「業」もあれば、良い方向に持っていく「業」もあります。「業」は自分の心や周囲との関わりの中に蓄積されるデータのようなもので、潜在的な記憶や癖、傾向、慣れのようなものを作っていきます。
目的のために良い結果をもたらす癖や習慣とは何か、行為とそれがもたらす影響によって長期的に自分をデザインするようなイメージで考えてみましょう。小さな達成の経験を蓄積することで、より難しいことに挑戦するときの不安は少しずつ解消していくはずです。
■こむぎこをこねたもの、とは?
■著者紹介
Jecy
イラストレーター。LINE Creators Marketにてオリジナルキャラクター「こむぎこをこねたもの」のLINEスタンプを発売し、人気を博す。その後、「こむぎこをこねたもの その2」、「こむぎこをこねたもの その3」、「こむぎこをこねたもの その4」をリリース。そのほか、メルヘン・ファンタジーから科学・哲学まで様々な題材を描き、個人サイトにて発表中。
「週刊こむぎ」は毎週水曜更新予定です。