【コラム】

Java API、使ってますか?

22 Java EE環境でタスクのスケジューリングを可能にするJSR 236

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JSR 236: Timer for Application Servers

前回はJava EE環境でスレッドプログラミングを可能にするAPIとしてJSR 237: Work Manager for Application Serversを紹介した。今回はJSR 237と同じく、Java EE環境において非同期並列処理を実現するためのもうひとつのAPI「JSR 236: Timer for Application Servers」を紹介する。

JSR 237がjava.lang.Threadの代替となるAPIであるのに対して、JSR 236が提供するのはjava.util.Timerのようなタスクのスケジューリング機能だ。つまりこのAPIを使うことで、あるタスクが定期的に繰り返し実行されるような処理を実装することができる。

java.util.Timerクラスにおいて、スケジュールされたタスクは現在のスレッドとは独立したバックグラウンドスレッドで動作する。前回説明したように、Java EE環境の下では通常の方法でスレッドを扱うことが推奨されないため、java.util.Timerも使うことができない。そこで、JSR 236を使えばJava EE環境でも安全にタスクのスケジューリングができるようになるというわけだ。

JSR 236もJSR 237と同様にIBMとBEA Systemsの共同プロジェクトであるCommonJプロジェクトの成果が元になっている。すなわち、同プロジェクトによって仕様が策定された「Timer and Work Manager for Application Servers」のうちの"Timer"の部分の標準化を進めているのがJSR 236である。

CommonJのTimer APIを試す

CommonJの「Timer and Work Manager for Application Servers」仕様やインタフェース実装はBEAによるプロジェクトサイトまたはIBMによるプロジェクトサイトで公開されている。また、これらのAPIは「IBM WebSphere Application Server V6.0以降」および「BEA WebLogic Server 9.0以降」に実装されているほか、オープンな実装としてはGlobus Toolkitなどがある。

CommonJのTimer APIのクラス/インタフェースはcommonj.timersパッケージ以下に用意されている。中心となるのはタスクをスケジュールするためのTimerManagerインタフェースと、スケジュールされたタスクを実行するためのTimerListenerインタフェースだ。

TimerManagerオブジェクトは、WorkManagerのときと同様にアプリケーションさー場からJNDI経由で取得する。したがって、準備段階としてアプリケーションサーバのネーミングサービスにTimerManagerオブジェクトを登録しなくてはならない。 TimerManagerオブジェクトの登録の仕方は各アプリケーションサーバによって異なるので、それぞれのマニュアルを参考にしてほしい。

JNDIでTimerManagerへのリソース参照を有効にするために、Java EEコンポーネントのDeployment Descriptorファイル(Servletの場合web.xml、EJBの場合ejb-jar.xml)に設定を追加する。今回はServletを使うのでweb.xmlにリスト1のように記述する。

リスト1 web.xml - リソース参照の設定を追加

    <resource-ref>
        <res-ref-name>tm/MyTimerManager</res-ref-name>
        <res-type>commonj.timers.TimerManager</res-type>
        <res-auth>Container</res-auth>
        <res-sharing-scope>Unshareable</res-sharing-scope>
    </resource-ref>

スケジューリングを行うサーブレットTimerServletはリスト2のようにした。まずinit()メソッドにおいて、InitialContextを利用してJNDI経由でWTimerManagerオブジェクトを取得する。

リクエストが送られるとschedule()メソッドを用いてタスクがスケジューリングされる。schedule()メソッドには、TimerListenerオブジェクトと開始後の遅延時間、TimerListenerのtimerExpired()メソッドを呼び出す時間間隔を指定する。java.util.Dateオブジェクトを渡すことで指定時刻に実行されるタスクをスケジュールすることもできる。また、scheduleAtFixedRate()メソッドは決められた周期(時間間隔ではなく)でタスクを実行するためのメソッドである。

リスト2 TimerServlet.java - Timer APIによるスケジューリングを利用したサーブレットの例

package sample;

import commonj.timers.Timer;
import commonj.timers.TimerListener;
import commonj.timers.TimerManager;
import java.io.*;
import java.net.*;
import javax.naming.InitialContext;
import javax.naming.NamingException;

import javax.servlet.*;
import javax.servlet.http.*;

public class TimerServlet extends HttpServlet {
    TimerManager myTimerManager = null;

    @Override
    public void init() throws ServletException {
      try {
         InitialContext ic = new InitialContext();
         // TimerManagerオブジェクトをJNDI経由で取得
         this.myTimerManager
            =(TimerManager)ic.lookup("java:comp/env/tm/MyTimerManager");
      } catch(NamingException e) {
        e.printStackTrace();
      }
    }

    protected void processRequest(HttpServletRequest request, HttpServletResponse response)
                    throws ServletException, IOException {
        response.setContentType("text/html;charset=UTF-8");

        // タイマーのスケジュール
        myTimerManager.schedule(new MyTimerListener(), 0, 10000);
        System.out.println("TimerServlet: タイマーがスケジュールされました.");
    } 

    protected void doGet(HttpServletRequest request, HttpServletResponse response)
            throws ServletException, IOException {
        processRequest(request, response);
    } 

    protected void doPost(HttpServletRequest request, HttpServletResponse response)
            throws ServletException, IOException {
        processRequest(request, response);
    }
}

TimerListenerインタフェースにはtimerExpired()というメソッドがひとつだけ定義されており、TimerManagerのスケジューラがタイマーを起動するとこのメソッドが呼ばれるようになっている。したがって、ここに定期的に実行したいタスクを実装すればよい。今回はリスト3のように標準出力にテキストを表示するだけの処理とした。

Timerオブジェクトはスケジュールされたタイマーの状態を保持している。TimerListenerのtimerExpired()メソッド内でcancel()メソッドを呼び出せば、タイマーを停止することができる。今回はタスクが10回実行されたら終了するようにした。

リスト3 MyTimerListener.java - スケジュールされた時間ごとにTimerManagerによって呼び出されるリスナ

    class MyTimerListener implements TimerListener {
        private int count = 0;

        /**
         * TimerManagerのスケジュールに従って呼び出される
         */
        public void timerExpired(Timer timer) {
            if (count < 10) {
                System.out.println("[" + timer + 
                        "] MyTimerListener: タイマーが呼ばれました.");
                count++;
            }
            else {
                // タイマーのキャンセル
                System.out.println("MyTimerListener: タイマーを終了します.");
                timer.cancel();
            }
        }
    }

最後に、web.xmlにはServletを有効にするための設定を追加し、最終的にはリスト4のようになる。

リスト4 web.xml - サーブレットの設定を追加

<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<web-app version="2.5" 
         xmlns="http://java.sun.com/xml/ns/javaee" 
         xmlns:xsi="http://www.w3.org/2001/XMLSchema-instance" 
         xsi:schemaLocation="http://java.sun.com/xml/ns/javaee 
                             http://java.sun.com/xml/ns/javaee/web-app_2_5.xsd">

    <resource-ref>
        <res-ref-name>tm/MyTimerManager</res-ref-name>
        <res-type>commonj.timers.TimerManager</res-type>
        <res-auth>Container</res-auth>
        <res-sharing-scope>Unshareable</res-sharing-scope>
    </resource-ref>

    <servlet>
        <servlet-name>TimerServlet</servlet-name>
        <servlet-class>sample.TimerServlet</servlet-class>
    </servlet>
    <servlet-mapping>
        <servlet-name>TimerServlet</servlet-name>
        <url-pattern>/TimerServlet</url-pattern>
    </servlet-mapping>
    <session-config>
        <session-timeout>
            30
        </session-timeout>
    </session-config>
</web-app>

完成したらコンパイルしてWARファイルにまとめ、アプリケーションサーバにデプロイする。ブラウザからTimerServletサーブレットにアクセスすると、アプリケーションサーバの標準出力にはプロンプト1のように表示されるはずだ。今回は簡略化のためWebページ側のデザインは省略した。

プロンプト1 TimerServletの実行結果

TimerServlet: タイマーがスケジュールされました.
[1185099677223.115846(-10000)] MyTimerListener: タイマーが呼ばれました.
[1185099687233.115847(-10000)] MyTimerListener: タイマーが呼ばれました.
[1185099697257.115860(-10000)] MyTimerListener: タイマーが呼ばれました.
[1185099707261.115875(-10000)] MyTimerListener: タイマーが呼ばれました.
[1185099717266.115887(-10000)] MyTimerListener: タイマーが呼ばれました.
[1185099727270.115900(-10000)] MyTimerListener: タイマーが呼ばれました.
[1185099737275.115930(-10000)] MyTimerListener: タイマーが呼ばれました.
[1185099747279.115946(-10000)] MyTimerListener: タイマーが呼ばれました.
[1185099757283.115959(-10000)] MyTimerListener: タイマーが呼ばれました.
[1185099767288.115973(-10000)] MyTimerListener: タイマーが呼ばれました.
MyTimerListener: タイマーを終了します.

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インデックス

連載目次
第60回 どうなる? 今後のJavaプラットフォーム(Java SE編)
第59回 どうなる? 今後のJavaプラットフォーム(Java EE編)
第58回 Java SE 7の要注目機能"クロージャ"はどうなるのか その6
第57回 Java SE 7の要注目機能"クロージャ"はどうなるのか その5
第56回 Java SE 7の要注目機能"クロージャ"はどうなるのか その4
第55回 Java SE 7の要注目機能"クロージャ"はどうなるのか その3
第54回 Java SE 7の要注目機能"クロージャ"はどうなるのか その2
第53回 Java SE 7の要注目機能"クロージャ"はどうなるのか
第52回 Early Draftが公開されたJSF 2.0
第51回 EJBから独立したJava Persistence 2.0
第50回 モバイルJavaの新しい潮流となるか - MSA 2.0のドラフト公開
第49回 やっぱり基本はServlet - Servlet 3.0のEarly Draftを読む
第48回 JOGLで3Dプログラミング その4
第47回 JOGLで3Dプログラミング その3
第46回 JOGLで3Dプログラミング その2
第45回 JOGLで3Dプログラミング
第44回 JARファイルを効率的にネットワーク転送するためのPack200形式
第43回 Early Draftで把握するEJB 3.1の新機能
第42回 次世代の携帯端末向けJava仕様"MIDP 3.0"はどうなるか その2
第41回 次世代の携帯端末向けJava仕様"MIDP 3.0"はどうなるか その1
第40回 リソースアダプタによる接続の仕組み
第39回 JCAを利用したシステム間接続
第38回 Java EEと外部システムの接続性を支えるJCAがバージョンアップ
第37回 Javaのモジュラリティ強化を担う"スーパーパッケージ"とは
第36回 JSR 308対応のコンパイラを試す
第35回 公開されたJSR 308のEarly Draftを検証する
第34回 スクリプト言語とJavaを結びつけるJSR 223
第33回 Java EE環境に統一されたコンポーネントモデルを提供するJSR 299 その2
第32回 Java EE環境に統一されたコンポーネントモデルを提供するJSR 299 その1
第31回 Javaの文法がそのまま使えるスクリプト言語"BeanShell"
第30回 Javaアプリケーションにオブジェクトのキャッシュ機構を提供するJCache API
第29回 Javaアプリケーションからのリソース管理を可能にするJSR 284
第28回 XMLデータソースへの問い合わせはJSR 225で
第27回 Portlet Specification 2.0をもっと手軽に利用する
第26回 次期Javaポートレット仕様となるJSR 286
第25回 JSFとポートレットをつなげるJSR 301
第24回 Webサービス向けのポートレット仕様「WSRP」
第23回 高い相互運用性を実現するポートレットAPI - JSR 168
第22回 Java EE環境でタスクのスケジューリングを可能にするJSR 236
第21回 Java EE環境でのスレッドプログラミングを可能にするJSR 237
第20回 音声認識/合成のためのAPI - Java Speech APIとJSR 113
第19回 JSR 291でJavaプラットフォームにダイナミックコンポーネントモデルを導入
第18回 JAX-RSで簡単RESTful - JSR 311
第17回 待望のServlet 3.0がJSRに登場 - JSR 315
第16回 アノテーションを使ってバグ退治 - JSR 305
第15回 アノテーションをさらに広い範囲で利用可能にするJSR 308
第14回 Webアプリケーション開発の要となるか - JSF 2.0がJSRに登場
第13回 Webサービス経由でのJMX Agentへの接続を可能にするJSR 262
第12回 Javaアプリケーションのモジュール化をサポートするJava Module System
第11回 "NIO.2"がやってきた - JSR 203: More New I/O APIs for the Java Platform
第10回 JSR 295: Beans Bindingの参照実装を試す
第9回 けっこう便利! 単位を扱うAPI -- JSR 275: Units Specification
第8回 アノテーションでバリデーション - JSR 303: Bean Validator
第7回 Swing開発の救世主となるか - Swing Application Framework
第6回 JavaBeansのプロパティを同期させるバインディングAPI
第5回 誰よりも早く"Java SE 7"を睨む
第4回 日時情報の取り扱いを改善する JSR 310: Date and Time API
第3回 古いAPIも進化している!? - JSR 919: JavaMail 1.4
第2回 JSR 1 リアルタイムJava仕様
第1回 JCPによって進められるJava関連技術の標準化

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