今回は、私が第二新卒さんのサイト上でやっていた相談コラムに対する質問への回答内容をお伝えします。

「はじめまして。私は大学卒業後販売職を2年やって今、IT業界への転職活動をしています。IT企業を何社か受けているのですが、なかなか内定がもらえません。未経験の文系出身者なんですが(現在24歳です)、プログラマーとして働くにはどのような素養が必要なものですか? どのような人材が好まれるのでしょうか?」

以前のエントリーでIT、特にシステム開発を手がけるSI企業が求める人物像を述べたことがありました。

単刀直入に言ってしまうと、IT企業が求めているのはシステムエンジニアやコンサルタントとして顧客とコミュニケーションをすることが人材なのです。たしかにプログラミングを武器としている企業もありますが、そういった企業は即戦力を求める傾向が高く、IT経験の不足している人材を養う余裕はまずないでしょう。転職者であればなおさらです。

これも以前のエントリーで書いたことですが、外の世界からIT業界に興味を持った方は一度読んでみてください。

・ITを用いて何か革新的なことに取り組みたいなら、小規模でエッジな存在のベンダーを目指してください。大手ベンダーに買収されない限り、きっとあなたの知的欲求を満たす仕事があるでしょう。

・何となく大きな仕事を手掛けたいと思うなら、大手SIerで管理職クラスまで頑張ってください。二桁億以上の大規模案件をマネジメントする機会が回ってきます。ただし、創造性よりも管理技術が問われる領域です。

・顧客の業務を考える仕事がしたいなら、コンサルファームで3年頑張って下さい。これくらいの年次になれば一人で顧客業務を考える仕事が回ってきます。クライアントの企画関連部署に転職するときには気をつけてください。社内の政治圧力でむしろ不自由になったということはあり得ることです。

・個人のプログラミングパワーを武器に業界を渡り歩きたいなら、まずは大手SIerやコンサルファームで方法論を学んだ後、自分が望む方面のエッジな企業に転職することを心掛けてください。新しいことを始めるなら、まずは既存の方法論を知ることも必要ですし、何よりこういった全体論をしっかり学ばせるような体力を大半の小規模企業は持ち合わせていません。

今回の相談者の方には4つ目のプログラミングパワーを武器に業界を渡り歩く方法を実践するのが王道だと考えます。では大手SIerやコンサルファームに入るにはどうすれば良いでしょう。

最初に述べたとおり、SIerやコンサルファームはコミュニケーション能力の高い人材を常に求めています。コミュニケーション能力とは、相手の発言の意図を理解し、自分の発言の意図を正しく伝えることです。”伝える”という行為には、相手を納得させるという交渉術も含まれます。一朝一夕で身に付くスキルではありませんが、訓練を繰り返すことで一定のレベルに達することは難しくありません。

今はこういったことを学べる書籍や勉強会がたくさんありますし、転職コンサルタントに相談してもいいでしょう。まずは客観的に自分のコミュニケーション能力を見つめてみることです。プログラミングの話は内定をもらってから取り組んでも全然遅くないですよ。まさに急がば回れということです。

著者紹介

吉澤準特 (ヨシザワジュントク)

外資系コンサルティング会社に勤務。守秘義務を破らない範囲でIT業界の裏話をつぶやきます。ファシリテーション、ビジネスフレームワーク、人材教育など執筆多数。日本能率協会、秀和システムそれぞれから書籍刊行。執筆依頼/インタビューお引き受けします。こっそりITIL Manager (v2)資格保有。

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この記事は吉澤準特氏のブログ「IT業界の裏話」の過去記事を抜粋し適宜加筆・修正を行って転載しています。