「ゆるキャラ」と「ローカルヒーロー」に継ぐ地元活性化コンテンツの切り札として、にわかに注目を集めつつあるローカル・グループアイドル、略して「ロコドル」。そのなかでも、宮城県仙台市を拠点に活動するドロシーリトルハッピー(Dorothy Little Happy)は、全国レベルで通用する完成度の高さで注目を集めている。
ドロシーリトルハッピー |
『オズの魔法使い』の主人公であるドロシーのように、小さい幸せに気づく存在であってほしい、という意味の込められたグループ名を与えられた、仙台在住の5人の少女。彼女たちは昨年3月にavex traxからメジャーデビューしたものの、東日本大震災とタイミングが重なってしまい、発売記念イベントは全て中止。しかし夏に東京で開催された「TOKYO IDOL FESTIVAL 2011」で傑出したパフォーマンスを披露してアイドルファンに「発見」され、東京での単独ライブを成功させるまでに至っている。
彼女たちの最大の魅力は、いわゆるアイドル的な「振り付け」の合間に効果的に披露される、キレ味のいい「ダンスパフォーマンス」にある。早い時期からダンスを習った女子特有のリズム感で、いかにも楽しそうに肉体を躍動させる姿は、見ているだけで気持ちがいい。同じくダンス能力に長けたももいろクローバーが奇抜なギミック勝負を仕掛けているスキに、意外なところから王道が現れた、という感じだ。
メンバーの中でも万人受けするビジュアルと本格的なダンス能力を併せ持つ15歳の富永美杜などは、仮にメジャーなグループにレンタル移籍したとしても、長友佑都ばりの活躍が期待できる逸材だろう。
ドロシーリトルハッピーが所属するステップワンという事務所には、彼女たちの東京単独ライブでも堂々としたダンスを披露した公式バックダンサーズや、B♭というローティーン中心のグループなど、ダンスを得意とするグループが多数所属しており、虎視眈々とメジャーデビューを狙っている。その層の厚さ、充実ぶりは、かつての沖縄アクターズスクールを彷彿させる。
沖縄アクターズスクールが輩出した安室奈美恵、MAX、SPEEDの活躍は、1990年代後半に「子供の習い事としてのダンス」ブームを巻き起こし、女子のダンス人口拡大を地方の隅々まで促した。そうして築かれたダンス力を下地として、AKB48的な制服コスチュームに身を包んだグループアイドルがドロシーリトルハッピーなのだとしたら、彼女たちは1990年代のダンス・ブームと2000年代のグループアイドル・ブームの交差する場所に位置する、正しく進化したアイドルと言えるだろう。
彼女たちの代表曲の一つである「LIFE GOES ON」は、東日本大震災のショックから力強く立ち直る心情を、アイドルらしく明るく前向きに歌い上げた、まさにそのグループ名に込められたコンセプトである「ハッピー」を体現した、アイドルソングの傑作だ。東北から現れたハッピーの使者の活躍に、今後も注目したい。
真実一郎
サラリーマン、ブロガー。『SPA!』(扶桑社刊)、『モバイルブロス』(東京ニュース通信社)などで世相を分析するコラムを連載。アイドルに関しても造詣が深く、リア・ディゾンに「グラビア界の黒船」というキャッチコピーを与えたことでも知られる。著書に『サラリーマン漫画の戦後史』(洋泉社刊)がある。ブログ「インサイター」