PyScripterとは
最近はEclipseやNetBeansといった統合開発環境でもスクリプト言語がサポートされるようになっている。これらの統合開発環境は高機能ではあるものの、快適に利用するためにはそれなりのマシンスペックが必要だ。
せっかく軽快なスクリプト言語で開発するのに重い統合開発環境を使わなくてはならないのは本末転倒と感じる開発者もいるかもしれない。事実、スクリプト言語向けの高機能な統合開発環境が存在するにもかかわらず、テキストエディタでコーディングを行う開発者も多いのが現状だ。
今回は軽快に動作するPython向けのWindows用統合開発環境、PyScripterを紹介する。
なお、本稿執筆時点でのPyScripterの最新版は2009年5月にリリースされた1.9.9.7となっており、本稿の内容はこのバージョンに基づいている。
ソースコードの編集支援機能
PyScripterはMicrosoftのVisual Studioに似た外観と機能を備えており、Python以外にHTML、XML、CSSなどがサポートされている。ただし、Python以外の言語については構文の強調表示が可能なのみで、入力補完などの機能は提供されていない。
Pythonのソースコードの編集をサポートする機能として、変数やメソッド名の入力補完機能がサポートされている。また、メソッドの引数を入力する場合にはパラメータのヒントがポップアップ表示されるほか、ソースコード上でメソッド呼び出し部分などにカーソルをあわせるとそのメソッドの詳細情報がポップアップ表示される。
また、CTRL + J、もしくはエディタ上で右クリック→「テンプレートを挿入」で定型的なテンプレートをソースコードに挿入する機能がある。挿入するテンプレートは「ツール」メニューの「オプション」→「テンプレート」でカスタマイズすることが可能だ。
ソースコードの編集中はリアルタイムに構文のチェックが行われ、文法的におかしい部分には赤い下線が引かれる。ケアレスミスを防ぐことができるだろう。
この他、CTRL + クリックで変数やメソッドなどの定義部分にジャンプすることができるほか、ソースコードに記述したTODOコメントを一覧表示するTODOウィンドウ、正規表現をテストするためのウィンドウも用意されている。とりわけPythonのようなスクリプト言語ではテキスト処理に正規表現を活用することが多いため、正規表現のテストを簡単に行うことができるのは便利だろう。
充実したデバッグテスト機能
一般的な統合開発環境と同様、エディタでブレークポイントを設置してのデバッグが可能だ。デバッグ中はデバッグ用のウィンドウで呼び出し、階層や変数などを参照することができる。他の統合開発環境のデバッガを使ったことがあればとくに操作に迷う部分はないだろう。
なお、エディタでソースコードを範囲選択し、選択した部分のみを実行する機能もある。スクリプトの一部を動作確認したい場合に便利な機能だ。
また、PyScripterはユニットテストもサポートしている。テストしたいモジュールをエディタで開いた状態で「ツール」メニューから「単体テストウィザード」を選択するとテストケースのひな型を生成するためのウィザードが表示される。
作成したテストケースは単体テストウィンドウで実行し、結果を確認することが可能だ。
レイアウトや外観もカスタマイズ可能
PyScripterにはさまざまなウィンドウが容易されているが、これらのウィンドウは非表示にしたり、ドラッグして任意の場所に配置することができる。また、独立したウィンドウとして表示することも可能だ。
各ウィンドウは以下のように普段はサイドバーなどに折りたたんでおき、必要な場合だけ表示するという使い方もできる。エディタ領域を広く利用することができ便利だ。
なお、開発に直接役立つ機能ではないが、PyScripterのウィンドウ全体のデザインをテーマによって変更することが可能だ。使いやすいテーマを選ぶといいだろう。
まとめ
PyScripterは軽快に動作が特徴のWindows向けのPython開発環境だが、機能面でも重量級の統合開発環境に勝るとも劣らない機能を有しており、Pythonスクリプトを効率的に記述することができる。デフォルトで日本語化されており、ユーザインタフェースもわかりやすいため、すぐに使いこなすことができるはずだ。また、検索機能やナビゲーション機能も充実しており、ソースコードリーディングにも適した開発環境といえるだろう。
Pythonのようなスクリプト言語には軽快な統合開発環境こそ相応しい。Windows上でPythonスクリプトを書いている開発者はぜひPyScripterを試してみてほしい。