寄る年波には勝てなかった28歳

在宅で働き始めて大変だなと思ったことの1つに、健康管理があります。会社に所属していた頃は、健康診断の手配もすべて会社がやってくれ、決まった日時に健診を受ければよかったものです。また、出勤していれば、同僚と「人間ドックが……」などと話す機会もあり、「そうか、もうそんな時期か」と思い出したりもします。

しかし、在宅だとそのような機会もなくなります。こうしたこともあり、在宅で働く人は会社勤めの人以上に働き過ぎたり、ストレスに気づかなかったり、自分の体に無関心になったりしてしまうのかもしれません。

IT業界に限ったことではないかもしれませんが、私の周りにはうつ病や婦人病、胃腸障害など、ストレスや過労から来る病気の症状を訴えるエンジニアがたくさんいます。私も若い頃は体力もあり無理が利いたので、トラブル対応やスケジュールが厳しいプロジェクトの最中、毎日終電で帰り朝は始業時間に出社するという生活を続けていました。

まったく根拠はないのですが、自分の中で「25歳を過ぎたら体が持たなくなるだろうな」と覚悟していたのですが、25歳どころか27歳を過ぎても特に何の変化もなかったので、「な~んだ、私って意外とイケるのかも、フフン」と過信していました。しかし、そのままの生活を続けていたら、28歳の時にとうとうストレスから自律神経をやられてしまったのです。

在宅と会社勤務のギャップに追い詰められて……

当時、父の病気を機に、以前から希望していた在宅で働ける会社に転職した1年後くらいで、今までとは違う「見えない評価」に悩んでいました。出勤していた頃は、長時間にわたり何かの不具合やトラブルに悩まされ、たとえそれで1日潰れてしまっても、ただ「あ~! 今日はもったいない1日だった。でも、明日こそは」という悔しさが少しあるだけでした。また、周りも同じ状況だったので特に大きなプレッシャーにはなりませんでした。

しかし、在宅では事情が少し変わってきます。私の場合、元々勤務していた会社で在宅になったわけではなく、最初から在宅要員として1ヵ月間の常駐出勤の後はずっと在宅で働いていたので、トラブルを解決するという点で、自分が上司から信頼されているかどうかわからない状況でした。よって、トラブルによって作業が進まない場合は、それをどのように解決しているのかを出勤していた時以上に細かく報告し、信頼関係を構築する必要がありました。

トラブルの原因がわかる場合はまだしも、"何が原因かわからないけど、プログラムがうまく動作しない"といった場合は、1つずつ原因を潰していかなければなりません。例えばこうした状況の下で疲労がピークに達し、テストの条件を間違えてしまい、もう1度同じ手順をやり直すことになったとします。

もしこの時会社に出勤していれば、様子を見かねた同僚や上司が「ちょっと休憩してきていいよ」と言ってくれるかもしれません。しかし在宅の状況では、辛い状況を詳しく話したとしても、解決できるまでは「了解です。じゃあ、できるだけ早く解決してね」という声が聞こえてくるだけなのです。

しかも、当時の上司は口数が少なかったので特に評価の言葉も聞けず、"それまでもらっていたお給料の60%~70%しかもらえない、昇給もない"という状態が続きました。そのため、いろんな側面から「自分はプログラマーとして駄目だ、もっと頑張らないと」という自責の念がどんどん強まり、仕事を評価してもらいたい一心で徹夜をしたりしているうちに昼夜が逆転してしまい、さらには1日のほとんどをPCの前で過ごすような生活をするようになりました。

激務の末に訪れたのは救急車による搬送

以上のように在宅に転向した頃、「コミュニケーションの取り方」や「評価の受け方」など、会社に勤務していた状況とのギャップに悩んでいました。こうしたことから今まで以上にストレスを感じることが多くなり、さらには年齢による体力低下が重なり、自律神経がやられてしまいました。不眠になったり、月に2~3回しかない打ち合わせの時に急にドキドキしてしまったりという症状が現れ出したのです。

当時はそれらの症状にどのように対処してよいのかわからず、その場しのぎで深呼吸したりしていました。そうしたなか、自社で打ち合わせをしている最中、いつも以上にドキドキしてきたので中座したところ、化粧室に行く途中で倒れてしまい、救急車で運ばれてしまいました……。

さて、救急車で病院に運ばれた私はどうなってしまったのか? この話の続きは次回に譲ります。お楽しみに!

執筆者プロフィール

藤城さつき(Satsuki Fujishiro)株式会社タンジェリン代表取締役。
在宅勤務に重点を置き、全国各地の技術者やデザイナー(在籍250名以上)を臨機応変にチーム編成しながら、豊富な質と量の技術力を提供する。今のところ、在宅勤務に対する障害・偏見は多いが、今の日本人にとって絶対に必要なワークスタイルの1つと信じて日々邁進中。
一方、会社員時代に設立した、コンピュータ関連業界で働く女性のためのコミュニティ「eパウダ~」を運営。男性が多いこの業界における女性の人間関係・働き方・生き方についても日々模索中。旦那1頭と兄弟猫2頭の4頭家族。