【コラム】
先週は欧州の違法ダウンロード問題で大きな動きがあった。10月22日、フランスで"3ストライク法"こと、「Creation et Internet」の修正版が正式に成立した。また同日、欧州議会はインターネットの一方的な遮断を制限する修正条項を緩和する方向で一致した。フランスでは来年にも、違法な音楽ファイル共有によりインターネットを遮断されるユーザーが登場する可能性がある。
市民のほとんどが反対、政治家側もすっきりした感じがしないのだが、"Hadopi 2"こと修正版のCreation et Internetが成立、2010年より施行される。以前このコラムで紹介したように、Hadopiは今年5月、上院・下院を通過した。だが、同法の下で新たに設置される監視機関「Hadopi(Haute autorite pour la diffusion des oeuvres et la protection des droits sur Internet)」がインターネット遮断命令を下すことは違憲として、憲法院がこれを却下、その後、切断命令は裁判所が下すと修正することで違憲部分をクリアしたものが審議されていた。
Hadopiの下、音楽や映画など著作権のあるファイルを共有するユーザーは、1度目は電子メールで警告、2度目は書面による警告を受ける。3度目は裁判所が最長1年間の切断、あるいは罰金を命じることができる。切断命令が下りると、ISPによりインターネット回線が遮断され、ISPの乗り換えもできない。
2つ目の欧州議会の決定は、大きな影響を持つものだ。
欧州委員会(EC)は現在、テレコム法案の見直しを進めており、この修正条項(138条)は1つの争点となっていた。138条は当初、インターネットを市民の基本的権利と位置づけ、強制的な遮断を禁じる内容だった。欧州連合(EU)の規制は加盟国レベルで実装される。Hadopiのような法案は英国など複数の国で検討されており、138条はこれにブレーキをかけるものと思われていた。
だが10月22日、欧州議会は138条を緩和することを決定、新しい内容の下では裁判所の命令なしにインターネット回線を遮断することも可能となる。
改訂版のテレコム法案は2010年にも成立する見通しだ。
Hadopi成立にあたって、ネットで反対運動を展開してきたLa Quadrature du Netは「悲しい日だ」と述べているが、インターネットを遮断というHadopiのような対策がNapster以来続いているP2Pを利用した違法音楽ファイル共有という問題を根本的に解決できるのかについては、懐疑論が多いように思う。
Hadopiは、大手小売店のFnacなど業界のプレッシャーもあり、ニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)大統領の強力なプッシュの下で進んだが、ファイル共有の実態を探った上での解決策とは思えない(サルコジ大統領の夫人は、ミュージシャンのカーラ・ブルーニ(Carla Bruni)だ)。違法ファイル共有を食い止められないと思っている人は多いし、本当に違法行為を行った人が処分の対象となるのか、公正なプロセスを確立できるのかについても、詰めるべき部分は多そうだ。以前も指摘したが、来客が自宅のインターネットを使って違法ダウンロードした場合、どうなるのか。無線LANを共有する「FON」のような自由な動きにも影響がでるかもしれない。
だが、DADVSI法にはじまり、違法ダウンロードの取り締まりにあたってフランスが行き着いた策は、各国のレコード業界が自国でプッシュしているもので、他の国に広まる可能性は多いにありそうだ。欧州では、同様の法案は英国で11月にも審議されることになっている。英国ではピーター・マンデルソン(Peter Mandelson)英国首席大臣・ビジネス・イノベーション・技能大臣が推進、英国レコード産業協会(BPI)らが支持しているが、最大手ISPのBTは反対を表明している。その理由として、フィルタリングにはじまりISP側の負担は大きく、結果として料金値上げの可能性もある、と述べている。
当のミュージシャン側も支持派と反対派に分かれている。ラジオヘッド(Radiohead)やビリー・ブラッグ(Billy Bragg)らが参加するデジタル音楽権利団体Featured Artists’ Coalition(FAC)は、「ファイル共有ユーザーは実際は音楽を購入している」として反対している。一方、インターネットが生んだミュージシャン、リリー・アレン(Lily Allen)は声高に支持を表明している。
このところ、欧州ではデジタル音楽とインターネット経由での違法共有について、さまざまな動きがある。変わるべきは音楽業界側という指摘はあちこちから聞かれ、FACのような団体、スウェーデンSpotifyのようなサービスも生まれている。また、著作権法の根本的な見直しを求める動きもある。6月の欧州議会選挙でスウェーデンで議席を獲得した海賊党はその急進派で、現在、ドイツ、英国などに広まっている。オランダ政府は今年、スウェーデンThe Pirate Bay(TPB)遮断を認め、フランスではHadopiが成立したが、フィンランド政府は10月中旬、インターネットを国民の権利とする方針を発表した。
欧州におけるデジタル音楽とファイル共有にとって、この1、2年はひとつの節目となりそうだ。
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