The Pirate Bay - レコード業界とファイル共有サイトの終わりなき抗争の結末は?

BitTorrentファイル共有サイトThe Pirate Bay(スウェーデン)が揺れている。今年4月に創業者4人に有罪判決が下りた後、6月30日には、ネットカフェ/ゲームセンターを運営するスウェーデンGlobal Gaming Factory X(GGF)による買収が発表された。荒波の中で舵取りを続けてきた海賊(Pirate)船、停泊地を見つけたことになるのだろうか?

Pirate Bayは、BitTorrentを利用するtorrentファイルの共有サービス。音楽、動画、ソフトウェア、ゲームなどのカテゴリがあり、ユーザーは検索機能を使ってtorrentファイルを探し出し、ダウンロードできる。

Pirate Bayは2003年、スウェーデンの反著作権団体Piratbyranにより設立、その後、別組織として運用されている。この経緯からわかるように、Pirate Bayは「インターネット上のファイル共有は、個人の自由やプライバシーが関わる権利である」といった思想を掲げている。ユニークユーザーは月間2,200万人、1日100万人ともいわれており、ファイル共有サイトとしては世界最大規模。Webサイトアクセス件数でもトップ100位に入るという人気ぶりだ。

かつてNapsterを閉鎖に追い込んだレコード業界団体がPirate Bayを見過ごすはずはない。レコード業界が熱心にISPに働きかけた結果、英国、デンマーク、イタリアなどいくつかの国のISPがPirate Bayへのアクセスを遮断した。

これまで訴訟の脅威をやり過ごしてきたPirate Bayだが、2009年2月、とうとう著作権侵害を支援しているとしてスウェーデンで起訴された。4月中旬に降りた判決で、判事は4人の創業者に有罪を言い渡した。4人には、懲役1年、罰金として3,000万スウェーデンクローネの支払いが科せられた。これに対し、創業者4人は裁判やり直しを求めたが、6月に拒否された。現在、4人は控訴手続きに入っている。

Pirate Bay提訴の背後で大きな役割を果たした国際レコード産業連盟(IFPI)は先に、Pirate Bayが与えた損害として、2001 - 2007年、ファイル共有の利用が増加する一方でCD販売が38%も減少したこと、「無料で音楽が手に入らなければ、購入した」と消費者が回答していることなどを挙げていた。また、Pirate Bayは広告により莫大な収益を上げており、サイトの目的はPirate Bayがいうところのユーザーの権利ではなく、営利であると批判していた。

Pirate Bayは創業者4人の有罪判決後も運営を続けており、GGFによる買収発表の直前には、最新プロジェクトとして、動画ストリーミングサイト「The Video Bay」を開始することを発表していた。

今回の売却について、Pirate Bay側は、得た金額を利用して、言論の自由、情報の自由、インターネットのオープン性が関係するプロジェクトへの資金とすることなどを発表している。

だがPirate Bayユーザーは売却発表後、所有者が代わることを懸念し、ユーザー登録削除に走り始めた。Pirate Bay側はユーザーの要求に応じてアカウントを削除するインタフェースを提供しながらも、個人情報は安全であり心配は不要であると説明している。Twitterでは、Pirate Bayに対する非難が噴出しているようで、Pirate Bay側も「これまで5年間戦ってきたのに感謝の言葉すらないのか」「フェアじゃない」とこぼしているようだ。

さてPirate Bayを買収するGGFは買収後、知名度や人気をテコに、合法ビジネスに転じるという計画を示唆している。「サイト経由でダウンロードされたコンテンツに対して、コンテンツプロバイダ、著作権所有者が報酬を得られるようなモデルを導入したい」とGGFのCEO、Hans Pandeya氏はコメントしている。だが、これには懐疑論が絶えない。ファイル共有を違法どころか、当たり前と思っている10代の若者は多く、合法ビジネスとして生まれ変わった後にユーザーをひきつけられなかったNapsterの例があるからだ。

Napster、Kazaa、そしてPirate Bayと、訴訟によりファイル共有をつぶそうとするレコード業界の動きは、結局のところ成功していない。ここにきて、レコード業界側からも反省論が出始めている。英国のレコード業界団体BPIのトップ、Geoff Taylor氏は6月、BBCの特集で「われわれはNapsterを受け入れるべきだった」とするコメントを残している。Napster登場から10年、音楽業界が得たもの/失ったものを考えると、「一個人として、インターネット時代の音楽という観点から持続性のあるモデルを早期に見出せなかったことを後悔している」とTaylor氏は述べている。

実際のところ、エンタテインメントに費やす予算はファイル共有の前と後では変わっておらず、ファイル共有によりCDを買わなくなった分、コンサートに足を運ぶ人が増えていると指摘する人も出ている。今後レコード業界が果たす役割は縮小する、どうやらこの方向性は必然といえそうだ。