【コラム】

どこでもサイエンス

68 火星をざっくり知っておきましょー

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2016年は、火星にちょっと注目が集まりそうです。火星探査映画「オデッセイ(現代Martian)」の公開や、5月末の2年ぶりの火星接近~夏休みが観察しやすいこと。火星探査機の打ち上げなど話題がいろいろあるからでございます。

火星は、ときどき思い出したように、話題になります。ちょっと前には、地球にもどれない「片道切符」の民間の火星探査計画に応募者殺到なんてのがありました。火星の大接近だからどうの、なんてのもありましたなあ。で、そのたびに、ワーっと情報がでて、そんでしばらく忘れられるのが火星でございます。今回は、この火星について、これくらい知っておけば、いろいろ楽しめるよーってな話のまとめでございます。

1. 火星は、地球と同じく太陽をめぐる惑星である

基本なので押さえておきます。地球の外をまわっていて、太陽からの距離は平均2.3億km。地球の1.5億kmの5割増しってところですな。で、ほかにも、いろいろ違いがあるんですね。

まず、火星は小さい星で、地球の半分の大きさでございます。面積は4分の1、体積は8分の1となりますな。大きさはNASAの比較図がわかりやすいですねー。面積は小さいのですが、海がなくて全部陸地なので、陸地の面積でいうと、地球と同じくらいになります。ちなみに、陸地が全然ない惑星というのもあって、木星、土星、天王星、海王星がそうですな。水星、金星は火星と同じく、すべてが陸地です。いや、海がある星の方が特殊で、太陽をめぐる惑星では地球だけですな。

地球と火星の大きさの比較 (画像提供:NASA)

2. 火星の1日はだいたい24時間、1年は687日=1.88(地球)年、季節がある

これは、偶然なんですが、火星の一日は24時間です。正確には、24時間37分です。毎日同じ時刻に火星を観察すると、次にまったく同じように火星が見えるのは39日後ってことになります。逆に、今日と明日ではほとんど変わりがありません。また、火星にも地球と同じように地軸の傾きがあって、25度傾いています。この傾きのおかげで、火星には夏や冬があります。夏になると北極や南極の氷が縮小します。

火星の1年、つまり太陽をめぐる周期は地球の1.88年です。で、地球よりのんびりまわっているので、2年2ヶ月に1回、内側の高速レーンを走る地球に追い越されます。その時が火星と地球がサイドバイサイド「接近」するときです。

3. 火星と地球は2年2カ月に1度接近する。その前後は目立つ。距離はそのときによって倍近く違う

火星と地球は、平均して2.3億km離れていますが、接近のときはぐっと近づきます。一番近い6000万km弱から、1億km強まで、接近の度合いが変わります。2016年は5月末に最接近しますが、7500万kmと中程度の接近です。業界では「中接近」といっておりますな。ちなみに次の2018年は6000万km切りで、業界では「大接近」と言うならわしになっています。なんとも業界用語な感じですな。

ちなみに、この大接近のときは、火星はとびきり明るく見えます。その明るさは、マイナス3等級で、都会でもとっても目立ちます。ちなみに、東京や大阪などの都心で楽に見えるのが1等級。明るいなと思うのがマイナス1等級ですから、マイナス3等級は、なんだあの星は? ってな感じです。今年の中接近でもマイナス2等級で、十分よくみえますねー。

ちなみに、接近以外の時期、まあ前後数カ月以外は、火星は1等級程度です。明るいのですが、すごいってほどにはならない感じですな。これが、火星が「ときどき」話題になる原因ともいえますな。たまにめちゃくちゃよく見えるというね。さて、次は、ちょっと趣を変えたネタでございます。

4. 火星には月が2つある。でもちっちゃい

火星にはフォボスとダイモスという2つの月があります。大きさは、20kmと15km程度です。東京23区より一回り小さいって感じです。地球の月は、直径が3000kmもありますので、まあ本当に小さいですな。あまりの小ささに「火星人の人工天体じゃないか」なんて話もあったのですが、写真を撮影したら、間違いなく天然の天体でございました。

火星の"月"「フォボス」 (画像提供:NASA)

5. 火星に人類は行ったことがない

こういうと「え? そうなん?」という方が少なからずいるのです。映画でしょっちゅう登場するので、とっくの昔に到着しているような気分になってしまいますが、火星に人類は行ったことはございません。といいますか、ほかの天体に人類が最後にいったのは、1972年に月に行ったアポロ17号の乗組員です。40年以上も前なんですね。じゃあ、若田さんとか油井さんとかの宇宙飛行士はというと、地球上空500km程度の宇宙ステーション程度なのですね。もちろん宇宙に行くのは大変なのでございますが、距離だけ見たら、東京から大阪に行くのと変わらんわけです。月は38万km。火星は近いときでも6000万kmの彼方にあります。また、動いているので一直線にはいけず、火星に行くには1億km以上の旅行が必要です。1~2年の旅行で、補給ができないので、3日で行ける月とは難易度が格段に違うのでございますね。火星の有人飛行の計画は、現れては消えのくり返しです。民間でやるというのもありますが、どれもいつになることやらですね。

6. インドも探査成功。ものすごく沢山の情報が得られている

火星には、いままで、米・露・インド(!)・ヨーロッパの探査機が到達。日本もチャレンジしたのですが失敗しています。これまでに、ものすごく沢山の情報が得られています。インドのは2014年に火星に到達したマンガルヤーンという探査機ですな。で、探査データですが、最近の米国のマーズ・リコネセンス・オービター(火星偵察軌道衛星)の写真なんか、もうスゴイです。リアルというか、なんというか、ホントですか? って感じ。ヨーロッパ・ロシアもエクソマーズをこの春打ち上げ予定。ますます情報満載なんでございますな。だから、なんか「もう人間が行っているような」気分になっちゃうんですけどね。

ところで、映画オデッセイ(Martian)ですが、日本と米国のアオリ文句の違いがちょっとおもしろいですね。日本では「70億人が、彼の還りを待っている。」。米国では「Bring Him Home=彼を帰還させる」。待つか、行動か、同じ映画なのに違うんですな。

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。

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インデックス

連載目次
第91回 流れ星を見つけるコツ
第90回 コピー機の発明について、調べてみたよ
第89回 いにしえの中国やインドの宇宙
第88回 「火星の呪い」が発動
第87回 来年のノーベル賞予想ごっこ
第86回 天文学研究のため、レンジは使わないでください
第85回 カフェでリア充、科学者ハレー
第84回 お月見の日は、どう決まる?
第83回 たまご、熱すると固まるナゾ
第82回 8月12日のペルセウス座流星群と黒い彗星
第81回 絶滅のサイエンスとリョコウバトとウナギ
第80回 ジュノー探査機、木星到着
第79回 「ニホニウム」で知ったかぶりをするための知識5連発
第78回 2016年の「宇宙どうでしょう?」 (下半期)
第77回 増やせばワカルDNA - 「PCR」のお話
第76回 宇宙人を探すなんて、できるの?
第75回 海がない国 スイスで生まれた深海潜水艇
第74回 とりあえず春は、北斗七星。
第73回 くらべてワカル!? 宇宙の世界
第72回 さくらが春に咲くのは、寒さを越えるプログラムがあるから
第71回 ひさしぶりの日食のお知らせ - 日本は2016年3月9日午前11時前後
第70回 「重力波」つかまえました
第69回 春のこよみのサイエンス
第68回 火星をざっくり知っておきましょー
第67回 冬はハワイが近い!? - ジェットストリーム
第66回 2016年の「宇宙、どうでしょう?」(上半期)
第65回 年間最多の流れ星が見える! 12月14日夜はふたご座流星群
第64回 毒についてチョット調べてみました
第63回 凧とかみなり、フランクリン
第62回 はやぶさ2も見られるの?? 人工衛星を見るはなし
第61回 ノーベル賞をゲットしたニュートリノ探知装置
第60回 科学者が、虹遊びをすると…
第59回 日本人は、元素の名づけ親になれるか!?
第58回 数字のケントーをつける話=フェルミ問題
第57回 「星の名決定」総選挙に参加できるぞ!
第56回 夏休み、おてがるサイエンス
第55回 冥王星に接近しました
第54回 硬い冷たいダイヤだよ
第53回 2015年の「宇宙、どうでしょう?」(下半期)
第52回 潜水艦を発明した愛すべきおっさん
第51回 冥王星まめちしき10連発(ビフォー編)
第50回 ジュラ紀とかエディアカラとか、実はローカルな地名ばかりの地球の歴史年代
第49回 夜空の神2共演 - 金星と木星が接近するぞ!
第48回 キャンディをかむと光るのは本当か?
第47回 2015年4月4日夜9時。むこう3年ない皆既月食をみのがすな!!
第46回 浦島太郎とか双子とかとカーナビなサイエンス
第45回 100万年かけて、あったかいーの
第44回 電話より先に発明されたファックス
第43回 世界の「宇宙窓」から
第42回 圧力鍋は、できそこないのエンジン!?
第41回 2015年の「宇宙、どうでしょう?」(上半期)
第40回 12月13~14日は、年に一番流れ星が多い時期
第39回 はやぶさ2、打ち上げそして旅の友
第38回 これだけ知っとこ、小惑星探査機「はやぶさ2」
第37回 誘導ミサイルとポップコーン
第36回 地球上の生物は推定870万種。実はその9割が発見されていない
第35回 祝・日本のお家芸・青色LEDがノーベル賞
第34回 2014年10月8日夜8時。ゼッコーの皆既月食をみのがすな!
第33回 シロウトにチャンス到来・惑星の名前をつけられるぞ!
第32回 スゴイぜ! 彗星探査機「ロゼッタ」
第31回 天才&変人キャベンディッシュ
第30回 渡り鳥が作るV字型編隊の謎
第29回 やってはいけない!サイエンス
第28回 フロッピーの栄枯盛衰
第27回 2014年の宇宙、どうでしょう? - 下半期編その2
第26回 2014年の宇宙、どうでしょう? - 下半期編その1
第25回 100円で作れるちょっぴりキケンな科学オモチャ「アストロ・ブラスター」
第24回 5月24日土曜夕方に本当にでるのか!? - 「きりん座流星群」
第23回 いま、サイエンスで一番アツイ? - タンパク質ギョーカイをのぞく
第22回 英国科学雑誌のQ&Aコーナー - そんなに熱くなるなんて…
第21回 2年2カ月に1度のチャンス! - 火星ただいま接近中
第20回 科学なパーソナリティ列伝
第19回 今年が寒いのは太陽のせい? - 実は暗い太陽の未来
第18回 日本に降る雨は「だいたい雪」、だそうです
第17回 どこでもサイエンス-チョコレートは惚れ薬?
第16回 江戸時代からある「クローン」
第15回 2014年の宇宙、どうでしょう? - 上半期編
第14回 謎実験 - ニュートンビーズ
第13回 12月14日はふたご座流星群の日! - サクッとわかる観察ポイント
第12回 新月が出たぞという意味の「カレンダエ」からはじまった「カレンダー」
第11回 気持ちよく歌えるエコーのおはなし
第10回 ノーベル賞を楽しむネタ知識あれこれ(後編)
第9回 ノーベル賞を楽しむネタ知識あれこれ(前編)
第8回 ただいま接近中 ‐ アイソン彗星
第7回 信号ひとつは70ワット - 交通信号機にまつわる科学のはなし
第6回 いますぐ使える「月」の知識11連発(後編)
第5回 いますぐ使える「月」の知識11連発(前編)
第4回 飲める「リトマス試験紙」
第3回 カンタン工作 - 百均虫めがねで「カメラ箱」を作ろう
第2回 8月12日と13日の夜はペルセウス座流星群を観察しよう
第1回 教科書を覗いてみよう - 小学校3年生の理科より「明かりをつけよう」

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