【コラム】

どこでもサイエンス

6 いますぐ使える「月」の知識11連発(後編)

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9月といえば「中秋の名月」。マクドナルドは「月見バーガー」を販売し、テレビの天気コーナーでは、ひとくさり月の紹介があります。何かと話題になる月、常識レベルからマニアックなものまで、いますぐ使える月の知識をまとめておきましょー。今回は昨日に続く後編として、残り6つの知識を紹介します。

6. 2013年までに月におりた人類は12人、月面観光したのはのべ27人

史上初の宇宙飛行士は1961年の旧ソ連のユーリ・ガガーリンさんです。そして、月まで最初に旅行したのは、それからたった7年後の1968年、アメリカの3人の宇宙飛行士、フランク・ボーマンさん、ジム・ラヴェルさん、ウィリアム・アンダースさんです。3人は月を10周して地球にもどってきました。いわば、初の月面観光者ですね。彼らが乗っていたのがアポロ8号です。そして翌年1969年には月面に2人の宇宙飛行士が着陸し、月を歩きました。ニール・アームストロングさんと、バズ・オルドリンさんです。人気まんが「宇宙兄弟」にも登場するのでご存じでしょう。彼らが乗っていたのはアポロ11号でした。

月の観光をしたのは、このアポロ8号からアポロ17号に至る9機の宇宙船の3人×9機の27人(アポロ9号は地球の周囲で着陸シミュレーションを行ったので月に行っていない)です。また着陸は11号から17号の6機(13号は失敗して着陸できずに地球に帰還した)の2人×6機の12人です。この中には、月を2回観光した人が3人ふくまれていますが、2度着陸した人はいません。

7. 人類は「月の石」を400kgほど持ち帰った。

1969年から72年にかけて、月に降りたった12人は、全員が地球に無事帰還しました。そして月の石をおみやげとして持ち帰りました。このほかにも旧ソ連の無人月探査機が、月の石を持ち帰っています。あわせて400kg。これが、地球にある月の石です。

1970年にはこの月の石が、大阪で開かれた万国博覧会のアメリカ館と旧ソ連館の目玉展示となり、長蛇の列をつくったそうです。

8. 日本でも「月の石」は見られる。アメリカでは触れるし、小学校への貸出も

現在、月の石のうち一部は、日本国内でも東京・上野にある国立科学博物館に常設展示され、いつでも見ることができます。これらはアメリカから寄贈されたものです。このほかにも研究向けに多数の月の石が日本に貸し出されてきました。

また、本場アメリカにいくと、地方の科学博物館に行っても、月の石を見ることができます。また、ワシントンD.Cのスミソニアン航空宇宙博物館では、触っちゃえるのです。若い世代には「だから?」かもしれませんが、60歳以上の方には「じぇじぇじぇ」な話でございます。

さらに、アメリカでは小学校などが月の石を借りられる仕組みがあります。授業などに使ってね、ということですね。鍵をかけて保管などもちろんなセキュリティもあるんですが、さすがアメリカだなぁという感じですね。LMDP(K-12)という企画で、K-12は日本でいう高校生以下という意味です。

9. 世界最高の月のデータは日本が持っている

月の探査はアメリカと旧ソ連の猛烈な競争によって、40~50年前に行われた後、しばらくほったらかしになりました。再開されたのは、1990年に、日本の「ひてん・はごろも」という月周回衛星が皮切りになっています。その後、2007年に、小型バスほどもある日本の大型探査機「かぐや」が月をめぐりながら、その詳細なデータをとっています。かぐやにはNHKのハイビジョンカメラまで搭載されており、世界最高画質の月画像は、日本が持っているのです。月全体の詳細な地図も、このときはじめて作成されました。それまでは、火星の地図の方が詳細なくらいだったのですから、月がどれだけ無視されていたかわかりますね。

そのほかヨーロッパ、中国、インドも相前後して月探査機を送りつけています。イギリス、ドイツなどのほか、自力でロケットを打ち上げていない韓国まで月探査計画があります。

10. 月旅行の募集まではじまっている

さらに、最近は民間の月旅行の募集まではじまっています。米スペースアドベンチャーでは2017年までに計画をすすめたいとしています。すでに、映画アバターの監督、ジェームス・キャメロン氏が切符を手に入れているという話もありますが、この手の話ははっきりしないことが多いですねー。お値段はなんと120億円だそうです。バブルの日本なら洒落で出す企業があったかもしれませんね。

この月旅行の前提として、民間による月探査ロケットの開発も行われ、あのGoogleが賞金まで出してコンテストをしています(Google Lunar XPRIZE)。国際宇宙ステーションにはすでに民間の宇宙船ドラゴンによる補給が行われているくらいですし、1957年に初の人工衛星、1959年に月探査という流れを考えると、無理ではないかもしれませんが、さてどうなりますか? 賞金の有効期限は2014年となっています。

11. スーパームーン、ブルームーン、立待月、月をめぐる言葉あれこれ

中秋の名月というのは、中秋(旧暦8月、いまの9月ごろ)15夜にみえる満月ごろの月のことをいいます。秋分の日の前後になる、この時期の満月は、太陽がほぼ真東からのぼるのに対応して、やはり真東からのぼります。京都・名古屋・札幌などの東西にきっちり道ができている街では、道の向こうに満月がのぼってくることになります。平安京の人たちもこれを楽しんだのでしょうかね。もともとは収穫祭なんだそうですけどねー(だから米でつくったお団子をたべる)。

そのほかにも、日本語には月にかんする言葉がすごく多いのですけど、最近は欧米な言葉もつかわれますね。ブルームーンは、1カ月の間に2回満月がある場合の2度目で「めったにない」という意味で使われます。なんといっても、満月と満月は29~30日、毎月ちょっとずつ満月の日付はずれるのですが、2回となると、なかなかタイミングがないのですね。次のブルームーンは2015年7月31日、その次は2018年1月31日、3月31日です。なお、Wikipediaを見ると、ブルームーンについてへぇーなことが書いてあるのですが、これは検索してのお楽しみにしましょう。

スーパームーンは、1年のうち最大の大きさに見える満月をいいます。これは、月が地球をめぐるさい、36万~40万kmの間で地球に近づいたり遠ざかったりするために起こるもので、最大で平均より1割ばかり(たった1割かって? その通りです)月が大きく見えるというものです。どういうわけか占いの世界で使われたものをNASAがことさら逆宣伝したので、有名になってしまいました。まあ、実際1割でも月が大きく見えるのですから、スーパーは言い過ぎでも、そんなこともあるんだなあと思っていいんじゃないでしょうかね。

月について、いろいろ調べようとするときに使えるのは、まず丸善から出版されている「理科年表」があげられます。また、月の研究者である会津大学の寺薗准教授が執筆しているWebサイト「月探査情報ステーション」や、NASAのMoon Fact Sheetが基本的な数値をキチンと書いています。

数字だけみると無味乾燥なのですが、あれこれ夢想すると楽しい…かもしれません。時刻表マニアの楽しみ(よくわかるクチです)のような気もいたしますが。

9月19日には中秋の名月です。晴れてる地域の人は、ぜひ空を見上げて月を見てみてください (出所:仙台市天文台。2009年10月3日に撮影された中秋の名月)

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。

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インデックス

連載目次
第109回 世の中を変えた発明、なんでしょう。
第108回 ハイテク素材と赤い炭
第107回 8月7日(月)深夜・月食を見よう!
第106回 2017年の宇宙、どうでしょう? - 下半期・その2
第105回 2017年の宇宙、どうでしょう? - 下半期・その1
第104回 予言者? ジュール・ヴェルヌ
第103回 幻の毎日新聞プラネタリウム館 - 東日(毎日)天文館
第102回 地球は、どう、動いてる?
第101回 アインシュタインの方位磁石 - サイエンスな人の一品
第100回 アストロバイオロジーって、何それ、オイシイの?
第99回 太陽はスゴイ? - 成績発表会
第98回 実験装置、見たい?
第97回 地図と星は仲がいい
第96回 山が変える惑星の模様
第95回 ほとんどの星は爆発しない
第94回 それも「バラ科」ですか……!?
第93回 2017年の宇宙、どうでしょう? - 上半期編その2
第92回 2017年の宇宙、どうでしょう? - 上半期編その1
第91回 流れ星を見つけるコツ
第90回 コピー機の発明について、調べてみたよ
第89回 いにしえの中国やインドの宇宙
第88回 「火星の呪い」が発動
第87回 来年のノーベル賞予想ごっこ
第86回 天文学研究のため、レンジは使わないでください
第85回 カフェでリア充、科学者ハレー
第84回 お月見の日は、どう決まる?
第83回 たまご、熱すると固まるナゾ
第82回 8月12日のペルセウス座流星群と黒い彗星
第81回 絶滅のサイエンスとリョコウバトとウナギ
第80回 ジュノー探査機、木星到着
第79回 「ニホニウム」で知ったかぶりをするための知識5連発
第78回 2016年の「宇宙どうでしょう?」 (下半期)
第77回 増やせばワカルDNA - 「PCR」のお話
第76回 宇宙人を探すなんて、できるの?
第75回 海がない国 スイスで生まれた深海潜水艇
第74回 とりあえず春は、北斗七星。
第73回 くらべてワカル!? 宇宙の世界
第72回 さくらが春に咲くのは、寒さを越えるプログラムがあるから
第71回 ひさしぶりの日食のお知らせ - 日本は2016年3月9日午前11時前後
第70回 「重力波」つかまえました
第69回 春のこよみのサイエンス
第68回 火星をざっくり知っておきましょー
第67回 冬はハワイが近い!? - ジェットストリーム
第66回 2016年の「宇宙、どうでしょう?」(上半期)
第65回 年間最多の流れ星が見える! 12月14日夜はふたご座流星群
第64回 毒についてチョット調べてみました
第63回 凧とかみなり、フランクリン
第62回 はやぶさ2も見られるの?? 人工衛星を見るはなし
第61回 ノーベル賞をゲットしたニュートリノ探知装置
第60回 科学者が、虹遊びをすると…
第59回 日本人は、元素の名づけ親になれるか!?
第58回 数字のケントーをつける話=フェルミ問題
第57回 「星の名決定」総選挙に参加できるぞ!
第56回 夏休み、おてがるサイエンス
第55回 冥王星に接近しました
第54回 硬い冷たいダイヤだよ
第53回 2015年の「宇宙、どうでしょう?」(下半期)
第52回 潜水艦を発明した愛すべきおっさん
第51回 冥王星まめちしき10連発(ビフォー編)
第50回 ジュラ紀とかエディアカラとか、実はローカルな地名ばかりの地球の歴史年代
第49回 夜空の神2共演 - 金星と木星が接近するぞ!
第48回 キャンディをかむと光るのは本当か?
第47回 2015年4月4日夜9時。むこう3年ない皆既月食をみのがすな!!
第46回 浦島太郎とか双子とかとカーナビなサイエンス
第45回 100万年かけて、あったかいーの
第44回 電話より先に発明されたファックス
第43回 世界の「宇宙窓」から
第42回 圧力鍋は、できそこないのエンジン!?
第41回 2015年の「宇宙、どうでしょう?」(上半期)
第40回 12月13~14日は、年に一番流れ星が多い時期
第39回 はやぶさ2、打ち上げそして旅の友
第38回 これだけ知っとこ、小惑星探査機「はやぶさ2」
第37回 誘導ミサイルとポップコーン
第36回 地球上の生物は推定870万種。実はその9割が発見されていない
第35回 祝・日本のお家芸・青色LEDがノーベル賞
第34回 2014年10月8日夜8時。ゼッコーの皆既月食をみのがすな!
第33回 シロウトにチャンス到来・惑星の名前をつけられるぞ!
第32回 スゴイぜ! 彗星探査機「ロゼッタ」
第31回 天才&変人キャベンディッシュ
第30回 渡り鳥が作るV字型編隊の謎
第29回 やってはいけない!サイエンス
第28回 フロッピーの栄枯盛衰
第27回 2014年の宇宙、どうでしょう? - 下半期編その2
第26回 2014年の宇宙、どうでしょう? - 下半期編その1
第25回 100円で作れるちょっぴりキケンな科学オモチャ「アストロ・ブラスター」
第24回 5月24日土曜夕方に本当にでるのか!? - 「きりん座流星群」
第23回 いま、サイエンスで一番アツイ? - タンパク質ギョーカイをのぞく
第22回 英国科学雑誌のQ&Aコーナー - そんなに熱くなるなんて…
第21回 2年2カ月に1度のチャンス! - 火星ただいま接近中
第20回 科学なパーソナリティ列伝
第19回 今年が寒いのは太陽のせい? - 実は暗い太陽の未来
第18回 日本に降る雨は「だいたい雪」、だそうです
第17回 どこでもサイエンス-チョコレートは惚れ薬?
第16回 江戸時代からある「クローン」
第15回 2014年の宇宙、どうでしょう? - 上半期編
第14回 謎実験 - ニュートンビーズ
第13回 12月14日はふたご座流星群の日! - サクッとわかる観察ポイント
第12回 新月が出たぞという意味の「カレンダエ」からはじまった「カレンダー」
第11回 気持ちよく歌えるエコーのおはなし
第10回 ノーベル賞を楽しむネタ知識あれこれ(後編)
第9回 ノーベル賞を楽しむネタ知識あれこれ(前編)
第8回 ただいま接近中 ‐ アイソン彗星
第7回 信号ひとつは70ワット - 交通信号機にまつわる科学のはなし
第6回 いますぐ使える「月」の知識11連発(後編)
第5回 いますぐ使える「月」の知識11連発(前編)
第4回 飲める「リトマス試験紙」
第3回 カンタン工作 - 百均虫めがねで「カメラ箱」を作ろう
第2回 8月12日と13日の夜はペルセウス座流星群を観察しよう
第1回 教科書を覗いてみよう - 小学校3年生の理科より「明かりをつけよう」

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