デジタルハリウッド講師が、業界の動向や最新事情について解説していく本コラム。 第1回目となる今回は、CGデザイナーとして映画『DEATH NOTE デスノート the Last name』(2006)や日本テレビ『鉄腕DASH』、ゲーム『デッド・オア・アライブ』など多くの作品に携わってきた小倉イサク講師が「CG・VFXが可能にする仕事」について紹介していきます。
皆さん、こんにちは。デジタルハリウッド専任講師の小倉イサクと申します。
全3回に渡り、このコラムを担当する事になりました。よろしくお願いします。
さて、今回のテーマは「CG・VFXが可能にする仕事」です。現在、様々な映像に使用されるようになったCGを、"仕事"という視点から解説していきましょう。
「CG」と「VFX」の違い
まず「CG」と「VFX」の違いについて説明しておきましょう。CGとは「Computer Graphics」の略語で、雑誌の表紙やCDジャケットのグラフィックデザインなども含まれますが、一般的には、ビルの爆破や映画『スターウォーズ』シリーズに登場するような架空の物体や人物といった「3DCGを使った特殊な映像」を"CG"と捉えられているようです。これは昨今の映画において、CGによる派手な効果を目にする機会が増えたことが大きな要因といえるでしょう。一方、VFXとは「Visual Effects」の略で、直訳すると視覚効果という意味です。実はこれも、コンピューター上でCGを用いて作成した特殊な効果映像という意味なのです。
つまり、まとめるとCGもVFXも"コンピューターを使って映像をつくる"、という意味では同じなのです。しかし便宜上、CGは映画『ウォーリー』(2008)や『シュレック』シリーズ、そして『ファイナルファンタジー』シリーズをはじめとするゲームのムービーなど「3DCGを使ったアニメーション」を意味し、VFXは「3DCGを使って特殊な映像を作成し、実写映像と合成する(映画『スターウォーズ』シリーズや『ハリーポッター』シリーズなど)こと」とされています。また、以前映画などでよく使われていたSFXという言葉がありますが、これは「Special Effect」の略語で、実際に本物の車同士をクラッシュさせたり、爆発させたり、ミニチュアを撮影したりすることで表現できる特殊な効果です。なので、これはCGを使った映像表現とは異なります。
CGやVFXの技術を身に付けることで、可能になること
さて、ここからは本題である「CG・VFXが可能にする仕事」についてです。CGを用いて制作する必要があるのは、主にゲームと映画と思われがちですが、そんなことはありません。テレビ番組をはじめ、ゲーム、映画、DVDなど、今、皆さんが見ているありとあらゆる映像に、CG・VFXが使用されています。つまり、CGやVFX技術を身に付ければ、様々な演出効果を作り出すことが可能になるということです。例えば、テレビドラマでの「ボールが飛んでくる」や「ナイフが腕に突き刺さる」、テレビアニメで「主人公の周囲をぐるりとカメラが回り込む」、「日本上空から主人公に超ズームインする」といった演出にもCG・VFX技術が用いられています。TVCMの「車が走るシーン」などでも、実写ではなくCGで制作した方が"見栄えが良い"と判断した場合はCGで制作しています。さらに、音楽紹介のためのプロモーションビデオでは、アーティストの演奏に加え、"カッコイイ演出"をする為に、CGを用いた様々な効果で演出を施していきます。そのほか、娯楽のひとつであるパチンコの映像にもCGが多用されており、現代の映像業界では、CGやVFXが必要不可欠なものになってきたことが分かるでしょう。
それ以外にも、日々のニュース番組において、取り上げる事件や事故を説明する際にCGを使い、実際の様子を分かりやすく解説しています。また、あまり人目には触れませんが、医学会ではCG映像を使って細胞の働きや臓器の仕組みを説明したりしています。
これで、「CG・VFXが可能にする仕事」がどんなものか、もうお分かりいただけましたでしょうか? 皆さんもCG・VFXの技術を取得すれば、映画をはじめ、ゲーム、アニメ、テレビ、音楽業界などに就職するチャンスが大きく広がります。もし、こういった仕事に興味があれば、CG・VFXの世界のドアを叩いてみてくださいね。
次回はCG・VFX業界の求人動向について紹介していきます。